線虫の神経系内の接続の全容
線虫の神経系内の接続の全容に関する研究(Cook et al., 2019)が公表されました。神経系の構成要素がどのように接続されているか知ることは、神経系が機能する仕組みの理解に不可欠です。線虫は神経科学研究の重要なモデル生物で、過去の研究では、線虫の雄のいろいろな部分に関するコネクトームと雌雄同体の神経系に関する記述がありました。この研究は、一連の電子顕微鏡写真を用いて、線虫の一種(Caenorhabditis elegans)の両方の性(雄と雌雄同体)の完全な配線図を示し、この分野の研究を前進させました。次にこの研究は、これらの配線図を以前に発表された顕微鏡写真と組み合わせ、雌雄同体の神経系における接続の再構成を含む、線虫全体のコネクトームを生成しました。
この研究の方法は、以前の研究で報告されたよりも多くの接続を同定でき、接続の物理的な大きさに基づいて、それぞれの接続の位置とその強度の間接的な尺度を示した。また、この研究は、接続の最大30%までが両性間に著しい強度差があると推測し、明らかになったコネクトームは、複数の個体の顕微鏡写真から構築されているため、コネクトームというコンセプトの作成と把握すべき点も指摘しています。この研究で得られた知見については、脳の機能が脳の構造からどのようにして生じたのか、理解しようとする試みが大きく一歩前進したことを示している、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【神経科学】線虫の神経系内の接続の全容が明らかになった
線虫の一種Caenorhabditis elegansの成虫の両方の性(雄と雌雄同体)の神経系における接続の全容を示すマップが今週発表される。この新知見は、これまでに発表された線虫の神経マップ(コネクトーム)の中で最も完全なものであり、雌雄の神経系を比較することができる。このマップは、線虫の行動を担う神経回路の解読に役立つかもしれない。
線虫は、神経科学研究の重要なモデル生物である。過去の研究論文には、線虫の雄のいろいろな部分に関するコネクトームと雌雄同体の神経系に関する記述があった。
今回、Scott Emmonsたちの研究グループは、一連の電子顕微鏡写真を用いて線虫の雄の頭部の回路をマッピングすることにより、この分野の研究を前進させた。次にEmmonsたちは、これらのマップを以前に発表された顕微鏡写真と組み合わせて、雌雄同体の神経系における接続の再構成を含む線虫全体のコネクトームを生成した。Emmonsたちの方法は、以前の研究で報告されたよりも多くの接続を同定でき、Emmonsたちは、接続の物理的な大きさに基づいて、それぞれの接続の位置とその強度の間接的な尺度を示した。また、Emmonsたちは、接続の最大30%までが両性間に著しい強度差があると考えられるとし、今回の研究におけるコネクトームは、複数の個体の顕微鏡写真から構築されているため、コネクトームというコンセプトの作成ととらえるべき点も指摘している。
同時掲載のDouglas Portman のNews & Views論文では、今回の研究で得られた知見は「脳の機能が脳の構造からどのようにして生じたのかを理解しようとする試みが大きく一歩前進したこと」を示していると述べられている。
神経科学:Caenorhabditis elegansの両方の性の個体全体のコネクトーム
Cover Story:ワームワイドウェブ:両方の性の C. elegansの神経系の完全なマッピング
神経系の構成要素がどのように接続されているか知ることは、神経系が機能する仕組みの理解に不可欠である。今回S Emmonsたちは、線虫の一種であるCaenorhabditis elegansの両方の性(雄と雌雄同体)の完全な配線図を示している。この神経地図、つまりコネクトームは、影響力の大きかった1986年の文献を更新するもので、新たな電子顕微鏡画像と以前出版された電子顕微鏡画像から作られ、感覚入力から末端器官への出力まで線虫の全ての接続を含んでいる。この地図によって、各シナプスの位置を決定して、それぞれの接続の強さの間接的測定を、構成シナプスの物理的なサイズに基づいて割り当てられるようになった。また、この地図によって雄と雌雄同体を直接比較することができるようになり、著者たちは雄と雌雄同体の間で接続の約30%が大きく異なっている可能性があると見積っている。これら2つのコネクトームは、線虫の行動に関与する神経回路の特定に役立つはずである。
参考文献:
Cook SJ. et al.(2019): Whole-animal connectomes of both Caenorhabditis elegans sexes. Nature, 571, 7763, 63–71.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1352-7
この研究の方法は、以前の研究で報告されたよりも多くの接続を同定でき、接続の物理的な大きさに基づいて、それぞれの接続の位置とその強度の間接的な尺度を示した。また、この研究は、接続の最大30%までが両性間に著しい強度差があると推測し、明らかになったコネクトームは、複数の個体の顕微鏡写真から構築されているため、コネクトームというコンセプトの作成と把握すべき点も指摘しています。この研究で得られた知見については、脳の機能が脳の構造からどのようにして生じたのか、理解しようとする試みが大きく一歩前進したことを示している、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【神経科学】線虫の神経系内の接続の全容が明らかになった
線虫の一種Caenorhabditis elegansの成虫の両方の性(雄と雌雄同体)の神経系における接続の全容を示すマップが今週発表される。この新知見は、これまでに発表された線虫の神経マップ(コネクトーム)の中で最も完全なものであり、雌雄の神経系を比較することができる。このマップは、線虫の行動を担う神経回路の解読に役立つかもしれない。
線虫は、神経科学研究の重要なモデル生物である。過去の研究論文には、線虫の雄のいろいろな部分に関するコネクトームと雌雄同体の神経系に関する記述があった。
今回、Scott Emmonsたちの研究グループは、一連の電子顕微鏡写真を用いて線虫の雄の頭部の回路をマッピングすることにより、この分野の研究を前進させた。次にEmmonsたちは、これらのマップを以前に発表された顕微鏡写真と組み合わせて、雌雄同体の神経系における接続の再構成を含む線虫全体のコネクトームを生成した。Emmonsたちの方法は、以前の研究で報告されたよりも多くの接続を同定でき、Emmonsたちは、接続の物理的な大きさに基づいて、それぞれの接続の位置とその強度の間接的な尺度を示した。また、Emmonsたちは、接続の最大30%までが両性間に著しい強度差があると考えられるとし、今回の研究におけるコネクトームは、複数の個体の顕微鏡写真から構築されているため、コネクトームというコンセプトの作成ととらえるべき点も指摘している。
同時掲載のDouglas Portman のNews & Views論文では、今回の研究で得られた知見は「脳の機能が脳の構造からどのようにして生じたのかを理解しようとする試みが大きく一歩前進したこと」を示していると述べられている。
神経科学:Caenorhabditis elegansの両方の性の個体全体のコネクトーム
Cover Story:ワームワイドウェブ:両方の性の C. elegansの神経系の完全なマッピング
神経系の構成要素がどのように接続されているか知ることは、神経系が機能する仕組みの理解に不可欠である。今回S Emmonsたちは、線虫の一種であるCaenorhabditis elegansの両方の性(雄と雌雄同体)の完全な配線図を示している。この神経地図、つまりコネクトームは、影響力の大きかった1986年の文献を更新するもので、新たな電子顕微鏡画像と以前出版された電子顕微鏡画像から作られ、感覚入力から末端器官への出力まで線虫の全ての接続を含んでいる。この地図によって、各シナプスの位置を決定して、それぞれの接続の強さの間接的測定を、構成シナプスの物理的なサイズに基づいて割り当てられるようになった。また、この地図によって雄と雌雄同体を直接比較することができるようになり、著者たちは雄と雌雄同体の間で接続の約30%が大きく異なっている可能性があると見積っている。これら2つのコネクトームは、線虫の行動に関与する神経回路の特定に役立つはずである。
参考文献:
Cook SJ. et al.(2019): Whole-animal connectomes of both Caenorhabditis elegans sexes. Nature, 571, 7763, 63–71.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1352-7
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