ニコチン受容体遺伝子と大麻の乱用との関係
ニコチン受容体遺伝子と大麻の乱用との関係についての研究(Demontis et al., 2019)が公表されました。大麻は世界中で最も頻繁に使用されている違法な精神活性物質で、使用者のおよそ10人に1人が依存状態になります。大麻使用障害(CUD)は、他の種類の嗜癖と同様に、高頻度の有害な使用によって発症し、対人関係や楽しい活動への関与が減り、薬物を摂取しないと渇望や離脱症状が起きます。合法化により大麻製品が入手しやすくなるにつれて、大麻使用障害の罹患率も上昇すると予想されています。
この研究は、デンマークの全国規模のコホートを用いて、大麻使用障害患者2000人以上のゲノムと対照被験者5万人近くのゲノムを解析し、比較的高頻度の遺伝的多様体と大麻使用障害の関連を特定しました。その結果、大麻使用障害は、脳で神経伝達物質アセチルコリンの受容体をコードする、ニコチン様アセチルコリン受容体α2 (CHRNA2)遺伝子の発現を制御する遺伝的多様体と関連している、と明らかになりました。次にこの研究は、アイスランドの遺伝学研究のコホートに含まれる大麻使用障害患者5500人と対照被験者30万人以上の遺伝的解析を行ない、上記の解析結果を再現しました。また、大麻使用障害患者において、認知能力の低下に関連する遺伝的多様体の全体的な多さが、大麻使用障害リスクの増加と関連していることも明らかになりました。
この研究はこうした知見について、大麻使用障害と特定の遺伝子を結び付けた初めての大規模研究だと結論づけています。こうした遺伝的差異が大麻使用障害の発症に寄与する生物学的機構を解明し、この情報を治療法の改善に用いる方法を突き止めるためには、さらなる研究が必要と指摘されています。なお、別の遺伝子(SLC6A11)ですが、現代人(Homo sapiens)において、ニコチン依存症の危険性を高める、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来と推測される多様体も確認されています(関連記事)。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
ニコチン受容体遺伝子が大麻の乱用と関係していた
このほど行われたゲノム規模関連解析研究で、大麻使用障害(CUD)の遺伝的マーカーが突き止められたことを報告する論文が、今週掲載される。このマーカーは、ニコチンに結合する脳受容体の量的制御にも関係すると考えられている。
大麻は世界中で最も頻繁に使用されている違法な精神活性物質で、使用者のおよそ10人に1人が依存状態になる。CUDは、他の種類の嗜癖と同様に、高頻度の有害な使用によって発症し、対人関係や楽しい活動への関与が減り、薬物を摂取しないと渇望や離脱症状が起こる。合法化によって大麻製品が入手しやすくなるにつれて、CUDの罹患率も上昇すると予想されている。
今回、Ditte Demontisたちの研究グループは、デンマークの全国規模のコホートを用いて、CUD患者2000人以上のゲノムと対照被験者5万人近くのゲノムを解析し、比較的高頻度の遺伝的バリアントとCUDの関連を特定した。その結果、CUDは、脳で神経伝達物質アセチルコリンの受容体をコードするCHRNA2遺伝子の発現を制御する遺伝的バリアントと関連していることが明らかになった。次にDemontisたちは、アイスランドの遺伝学研究のコホートに含まれるCUD患者5500人と対照被験者30万人以上の遺伝的解析を行って、上記の解析結果を再現した。また、CUD患者において、認知能力の低下に関連する遺伝的バリアントが全体的に多いことがCUDリスクの増加と関連していることも明らかになった。
Demontisたちは、今回の研究について、CUDと特定の遺伝子を結び付けた初めての大規模研究だと結論付けている。こうした遺伝的差異がCUDの発症に寄与する生物学的機構を解明し、この情報を治療法の改善に用いる方法を突き止めるためには、さらなる研究が必要とされる。
参考文献:
Demontis D. et al.(2019): Genome-wide association study implicates CHRNA2 in cannabis use disorder. Nature Neuroscience, 22, 7, 1066–1074.
https://doi.org/10.1038/s41593-019-0416-1
この研究は、デンマークの全国規模のコホートを用いて、大麻使用障害患者2000人以上のゲノムと対照被験者5万人近くのゲノムを解析し、比較的高頻度の遺伝的多様体と大麻使用障害の関連を特定しました。その結果、大麻使用障害は、脳で神経伝達物質アセチルコリンの受容体をコードする、ニコチン様アセチルコリン受容体α2 (CHRNA2)遺伝子の発現を制御する遺伝的多様体と関連している、と明らかになりました。次にこの研究は、アイスランドの遺伝学研究のコホートに含まれる大麻使用障害患者5500人と対照被験者30万人以上の遺伝的解析を行ない、上記の解析結果を再現しました。また、大麻使用障害患者において、認知能力の低下に関連する遺伝的多様体の全体的な多さが、大麻使用障害リスクの増加と関連していることも明らかになりました。
この研究はこうした知見について、大麻使用障害と特定の遺伝子を結び付けた初めての大規模研究だと結論づけています。こうした遺伝的差異が大麻使用障害の発症に寄与する生物学的機構を解明し、この情報を治療法の改善に用いる方法を突き止めるためには、さらなる研究が必要と指摘されています。なお、別の遺伝子(SLC6A11)ですが、現代人(Homo sapiens)において、ニコチン依存症の危険性を高める、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)由来と推測される多様体も確認されています(関連記事)。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
ニコチン受容体遺伝子が大麻の乱用と関係していた
このほど行われたゲノム規模関連解析研究で、大麻使用障害(CUD)の遺伝的マーカーが突き止められたことを報告する論文が、今週掲載される。このマーカーは、ニコチンに結合する脳受容体の量的制御にも関係すると考えられている。
大麻は世界中で最も頻繁に使用されている違法な精神活性物質で、使用者のおよそ10人に1人が依存状態になる。CUDは、他の種類の嗜癖と同様に、高頻度の有害な使用によって発症し、対人関係や楽しい活動への関与が減り、薬物を摂取しないと渇望や離脱症状が起こる。合法化によって大麻製品が入手しやすくなるにつれて、CUDの罹患率も上昇すると予想されている。
今回、Ditte Demontisたちの研究グループは、デンマークの全国規模のコホートを用いて、CUD患者2000人以上のゲノムと対照被験者5万人近くのゲノムを解析し、比較的高頻度の遺伝的バリアントとCUDの関連を特定した。その結果、CUDは、脳で神経伝達物質アセチルコリンの受容体をコードするCHRNA2遺伝子の発現を制御する遺伝的バリアントと関連していることが明らかになった。次にDemontisたちは、アイスランドの遺伝学研究のコホートに含まれるCUD患者5500人と対照被験者30万人以上の遺伝的解析を行って、上記の解析結果を再現した。また、CUD患者において、認知能力の低下に関連する遺伝的バリアントが全体的に多いことがCUDリスクの増加と関連していることも明らかになった。
Demontisたちは、今回の研究について、CUDと特定の遺伝子を結び付けた初めての大規模研究だと結論付けている。こうした遺伝的差異がCUDの発症に寄与する生物学的機構を解明し、この情報を治療法の改善に用いる方法を突き止めるためには、さらなる研究が必要とされる。
参考文献:
Demontis D. et al.(2019): Genome-wide association study implicates CHRNA2 in cannabis use disorder. Nature Neuroscience, 22, 7, 1066–1074.
https://doi.org/10.1038/s41593-019-0416-1
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