農場の室内塵の微生物と都会の子供の喘息減少

 農場の室内塵の微生物と都会の子供の喘息減少に関する研究(Kirjavainen et al., 2019)が公表されました。喘息の発症は都会化に関連があるとされており、それは室内塵(ハウスダスト)から重要な微生物種が失われたことと関係しているかもしれません。こうした種はまだ農場には存在していますが、農場の細菌が都会環境中に存在した場合に、喘息の罹患率の減少に結びつくのか、これまで不明でした。

 この研究は、合計395人の子どもが住んでいるフィンランドの田舎と郊外の家について室内塵の微生物相を調べ、農場の家に関連する独特な微生物の個体数パターンを特定しました。さらにこの研究は、ドイツの子供1031人のコホートでもこのような知見を得て、農場ではないものの、フィンランドの農場の家とよく似た屋内微生物相を持つ家に住む子供は、喘息の発症リスクが減少する、と明らかにしました。

 この調査研究は、個々の微生物種が喘息を直接防ぐ働きをしていると決定的に示しているわけではないものの、環境由来の細菌が喘息の発症に役割を果たしている、とさらに裏づけるものです。この研究は、家庭内微生物相の構成の測定が、郊外や都会の家に住む子供たちの喘息発症の相対リスクの評価や監視に役立つ可能性がある、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


農場の家の室内塵の微生物が都会の子どもの喘息減少に結び付く

 農場のような家の室内塵(ハウスダスト)のマイクロバイオームへの曝露が、都会環境に住む子どもたちの喘息発症の減少に関係している可能性があることを報告する論文が、今週掲載される。

 喘息の発症は都会化に関連があるとされており、それには室内塵から重要な微生物種が失われたことが関係している可能性がある。こうした種はまだ農場には存在している。しかし、農場の細菌が都会環境中に存在した場合に、喘息の罹患率の減少に結び付くかは、これまで不明だった。

 Pirkka Kirjavainenたちは、フィンランドの田舎と郊外の家(計395人の子どもが住んでいる)について室内塵の微生物相を調べ、農場の家に関連する独特な微生物の個体数パターンを特定した。さらに、Kirjavainenたちは、ドイツの子ども1031人のコホートでもこのような知見を得て、農場ではないがフィンランドの農場の家とよく似た屋内微生物相を持つ家に住む子どもは、喘息の発症リスクが減少することを明らかにした。

 この調査研究は、個々の微生物種が喘息を直接防ぐ働きをしていると決定的に示しているわけではないが、環境由来の細菌が喘息の発症に役割を果たしていることをさらに裏付けるものである。Kirjavainenたちは、家庭内微生物相の構成の測定が、郊外や都会の家に住む子どもたちの喘息発症の相対リスクの評価や監視に役立つ可能性があると述べている。



参考文献:
Kirjavainen PV. et al.(2019): Farm-like indoor microbiota in non-farm homes protects children from asthma development. Nature Medicine, 25, 7, 1089–1095.
https://doi.org/10.1038/s41591-019-0469-4

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