暴力的犯罪を抑止しない懲役刑
懲役刑と暴力的犯罪の抑止に関する研究(Harding et al., 2019)が公表されました。刑事上の有罪判決後に収監を行なう一般的な動機は、懲役刑が将来の暴力的犯罪を抑止するだろう、という考えにあります。理論上、未来の暴力的犯罪の抑止は、犯罪行動の機会を奪ったり、更正の機会を提供したり、将来の犯罪への関与を阻止したりすることで達成されるとされています。しかし、そうした目的を達成するための収監の有効性、とくに収監にかかる高い社会的・財政的コストに関しては活発に議論されてきました。
この研究は、アメリカ合衆国ミシガン州において、実刑判決を受けた個人と保護観察の判決を受けた個人の暴力的犯罪の発生率を比較した。この研究は、収監か保護観察のどちらかの判決になる可能性のある犯罪の被告人を判事に無作為に割り当てた、10万以上の重罪判決のデータを分析しました。その結果、収監期間の行動制限の影響を考慮すると、懲役刑に服することが、判決後5年間の暴力的犯罪による再逮捕あるいは起訴の可能性をわずかに減少させることと相関している、と見いだされました。しかし、この研究は、保護観察の判決を受けた個人と比べると、収監判決を受けたことが、釈放後の暴力的犯罪による逮捕や起訴に大きく影響しなかったことも見いだしています。懲役刑は、収監中は犯罪の発生を防ぐことができるものの、釈放後の将来の犯罪には影響しない可能性が高い、とこの研究は結論づけています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
懲役刑は暴力的犯罪を抑止しない
実刑判決は将来の暴力的犯罪の発生率をそれほど低下させないことを明らかにした論文が、今週掲載される。
刑事上の有罪判決後に収監を行う一般的な動機は、懲役刑が将来の暴力的犯罪を抑止するだろうという考えにある。理論上、未来の暴力的犯罪の抑止は、犯罪行動の機会を奪ったり、更正の機会を提供したり、将来の犯罪への関与を阻止したりすることで達成されるとされる。しかし、そうした目的を達成するための収監の有効性、特に収監にかかる高い社会的・財政的コストに関しては活発な議論が行われてきた。
今回David Hardingたちの研究グループは、米国ミシガン州において、実刑判決を受けた個人と保護観察の判決を受けた個人の暴力的犯罪の発生率を比較した。著者たちは、収監か保護観察のどちらかの判決になる可能性のある犯罪の被告人を判事に無作為に割り当てた、10万以上の重罪判決のデータを分析した。その結果、収監期間の行動制限の影響を考慮すると、懲役刑に服することが、判決後5年間の暴力的犯罪による再逮捕あるいは起訴の可能性をわずかに減少させることと相関しているのが見いだされた。しかし、Hardingたちは、保護観察の判決を受けた個人と比べると、収監判決を受けたことが、釈放後の暴力的犯罪による逮捕や起訴に大きく影響しなかったことも見いだしている。
懲役刑は、収監中は犯罪の発生を防ぐことができるが、釈放後の将来の犯罪には影響しない可能性が高いと、Hardingたちは結論付けている。
参考文献:
Harding DJ. et al.(2018): A natural experiment study of the effects of imprisonment on violence in the community. Nature Human Behaviour, 3, 7, 671–677.
https://doi.org/10.1038/s41562-019-0604-8
この研究は、アメリカ合衆国ミシガン州において、実刑判決を受けた個人と保護観察の判決を受けた個人の暴力的犯罪の発生率を比較した。この研究は、収監か保護観察のどちらかの判決になる可能性のある犯罪の被告人を判事に無作為に割り当てた、10万以上の重罪判決のデータを分析しました。その結果、収監期間の行動制限の影響を考慮すると、懲役刑に服することが、判決後5年間の暴力的犯罪による再逮捕あるいは起訴の可能性をわずかに減少させることと相関している、と見いだされました。しかし、この研究は、保護観察の判決を受けた個人と比べると、収監判決を受けたことが、釈放後の暴力的犯罪による逮捕や起訴に大きく影響しなかったことも見いだしています。懲役刑は、収監中は犯罪の発生を防ぐことができるものの、釈放後の将来の犯罪には影響しない可能性が高い、とこの研究は結論づけています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
懲役刑は暴力的犯罪を抑止しない
実刑判決は将来の暴力的犯罪の発生率をそれほど低下させないことを明らかにした論文が、今週掲載される。
刑事上の有罪判決後に収監を行う一般的な動機は、懲役刑が将来の暴力的犯罪を抑止するだろうという考えにある。理論上、未来の暴力的犯罪の抑止は、犯罪行動の機会を奪ったり、更正の機会を提供したり、将来の犯罪への関与を阻止したりすることで達成されるとされる。しかし、そうした目的を達成するための収監の有効性、特に収監にかかる高い社会的・財政的コストに関しては活発な議論が行われてきた。
今回David Hardingたちの研究グループは、米国ミシガン州において、実刑判決を受けた個人と保護観察の判決を受けた個人の暴力的犯罪の発生率を比較した。著者たちは、収監か保護観察のどちらかの判決になる可能性のある犯罪の被告人を判事に無作為に割り当てた、10万以上の重罪判決のデータを分析した。その結果、収監期間の行動制限の影響を考慮すると、懲役刑に服することが、判決後5年間の暴力的犯罪による再逮捕あるいは起訴の可能性をわずかに減少させることと相関しているのが見いだされた。しかし、Hardingたちは、保護観察の判決を受けた個人と比べると、収監判決を受けたことが、釈放後の暴力的犯罪による逮捕や起訴に大きく影響しなかったことも見いだしている。
懲役刑は、収監中は犯罪の発生を防ぐことができるが、釈放後の将来の犯罪には影響しない可能性が高いと、Hardingたちは結論付けている。
参考文献:
Harding DJ. et al.(2018): A natural experiment study of the effects of imprisonment on violence in the community. Nature Human Behaviour, 3, 7, 671–677.
https://doi.org/10.1038/s41562-019-0604-8
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