パラントロプス属の分類
日本ではよく「頑丈型猿人」と呼ばれるパラントロプス属はアフリカでのみ確認されており、東部のエチオピクス(Paranthropus aethiopicus)とボイセイ(Paranthropus boisei)および南部のロブストス(Paranthropus robustus)の3種に分類されています。エチオピクスは270万~230万年前頃、ボイセイは230万~140万年前頃、ロブストスは180万~100万年前頃に存在し、身長は110~140cm、脳容量は500ml程度と推定されています(Lewin.,2002,P123)。近年では、ロブストスの絶滅年代が60万年前頃までくだる可能性を指摘した研究もあります(関連記事)。パラントロプス属による石器の使用はまだ確認されていません。
これら3種のパラントロプス属については、アファレンシス(Australopithecus afarensis)やアフリカヌス(Australopithecus africanus)などと同じくアウストラロピテクス属とする見解も提示されており、分類をめぐって見解が一致しているとは言えない状況です。さらに、エチオピクスからボイセイとロブストスが派生したとの見解が一般的には有力ですが、アフリカ南部のアウストラロピテクス・アフリカヌス→ロブストスの系統と、アフリカ東部のアウストラロピテクス・アファレンシス→エチオピクス→ボイセイの系統に分かれる、との見解もあります(諏訪.,2006)。つまり、一般的にパラントロプス属と分類されている3種は単系統群を形成しないかもしれない、というわけです。もしそうならば、少なくとも、これら3種を包含したパラントロプス属という分類群は成立しません。
この問題については、以前当ブログ(関連記事)で取り上げた『アニマル・コネクション 人間を進化させたもの』(Shipman.,2013)にて、訳者の河合信和氏が論じています(P308~309)。河合氏は、一般的には同じくパラントロプス属と分類されている、アフリカ東部のボイセイと南部のロブストスの道具使用が大きく異なることを重視しています。ロブストスは、おそらくシロアリを捕食するために骨器を用いていましたが、ボイセイの方は骨器を使った形跡がまったくありません。これは単なる文化受容の差ではなく、両者の系統が異なっているからではないか、と河合氏は指摘します。つまり、ボイセイとロブストスのよく似た形態は収斂進化の結果だろう、というわけです。私も近年ではこの見解に傾いているのですが、この問題の解決には、既知の化石の再検証も重要ですが、何よりも新たな化石の発見が必要となるでしょう。
参考文献:
Lewin R.著(2002)、保志宏訳『ここまでわかった人類の起源と進化』(てらぺいあ、原書の刊行は1999年)
Shipman P.著(2013)、河合信和訳『アニマル・コネクション 人間を進化させたもの』(同成社、原書の刊行は2011年)
諏訪元(2006)「化石からみた人類の進化」『シリーズ進化学5 ヒトの進化』(岩波書店)
これら3種のパラントロプス属については、アファレンシス(Australopithecus afarensis)やアフリカヌス(Australopithecus africanus)などと同じくアウストラロピテクス属とする見解も提示されており、分類をめぐって見解が一致しているとは言えない状況です。さらに、エチオピクスからボイセイとロブストスが派生したとの見解が一般的には有力ですが、アフリカ南部のアウストラロピテクス・アフリカヌス→ロブストスの系統と、アフリカ東部のアウストラロピテクス・アファレンシス→エチオピクス→ボイセイの系統に分かれる、との見解もあります(諏訪.,2006)。つまり、一般的にパラントロプス属と分類されている3種は単系統群を形成しないかもしれない、というわけです。もしそうならば、少なくとも、これら3種を包含したパラントロプス属という分類群は成立しません。
この問題については、以前当ブログ(関連記事)で取り上げた『アニマル・コネクション 人間を進化させたもの』(Shipman.,2013)にて、訳者の河合信和氏が論じています(P308~309)。河合氏は、一般的には同じくパラントロプス属と分類されている、アフリカ東部のボイセイと南部のロブストスの道具使用が大きく異なることを重視しています。ロブストスは、おそらくシロアリを捕食するために骨器を用いていましたが、ボイセイの方は骨器を使った形跡がまったくありません。これは単なる文化受容の差ではなく、両者の系統が異なっているからではないか、と河合氏は指摘します。つまり、ボイセイとロブストスのよく似た形態は収斂進化の結果だろう、というわけです。私も近年ではこの見解に傾いているのですが、この問題の解決には、既知の化石の再検証も重要ですが、何よりも新たな化石の発見が必要となるでしょう。
参考文献:
Lewin R.著(2002)、保志宏訳『ここまでわかった人類の起源と進化』(てらぺいあ、原書の刊行は1999年)
Shipman P.著(2013)、河合信和訳『アニマル・コネクション 人間を進化させたもの』(同成社、原書の刊行は2011年)
諏訪元(2006)「化石からみた人類の進化」『シリーズ進化学5 ヒトの進化』(岩波書店)
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