ハリスホークの獲物追跡

 ハリスホーク(Parabuteo unicinctus)の獲物追跡に関する研究(Brighton, and Taylor., 2019)が公表されました。先行研究から、ハヤブサは「比例航法」と呼ばれる自動追尾ミサイルと同じ誘導則を用いて、獲物を迎撃すると明らかになっています。しかし、比例航法では、機動性の高い獲物に狙いを定めた時に、タカなどの他の鳥類種が頻繁に行き来する雑然とした生息域を飛行する実行可能な経路が得られません。この研究は、飼育下繁殖された5羽のハリスホーク(モモアカノスリ)が、不規則ですばやく飛行する人工標的を追跡するさいの飛行50回の軌跡を高速度カメラで撮影したうえで、その飛行をモデル化し、ハリスホークの攻撃軌跡との一致度が最も高い数学的誘導則を突き止めました。

 その結果、ハリスホークが混合誘導則を用いている、と明らかになりました。すなわち、追跡飛行における方向転換が、視線の変化率、およびハリスホークの攻撃方向と標的に対する視線の間の角度(偏差角)に関するフィードバックによって決まる、というわけです。この研究は、こえした混合則が応答速度を向上させ、追跡におけるオーバーシュート(追跡していた獲物より前に飛び出してしまうこと)のリスクを低減させ、獲物の不規則で機動的な飛行に惑わされないようにしている、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【動物学】ハリスホークの狩猟に用いられる混合誘導システム

 タカ科のハリスホーク(モモアカノスリ)が獲物を追跡する際に飛行を誘導するために用いられ、獲物の不規則で機動的な飛行に惑わされないようにするフィードバックシステムが、数学的な混合誘導則に基づいていることを明らかにした論文が、今週掲載される。

 先行研究から、ハヤブサは自動追尾ミサイルと同じ誘導則(いわゆる「比例航法」)を用いて獲物を迎撃することが明らかになっている。しかし、比例航法では、機動性の高い獲物に狙いを定めた時に、タカなどの他の鳥類種が頻繁に行き来する雑然とした生息域を飛行する実行可能な経路が得られない。

 今回、Graham TaylorとCaroline Brightonは、飼育下繁殖された5羽のハリスホークが不規則ですばやく飛行する人工標的を追跡する際の飛行50回の軌跡を高速度カメラで撮影した上で、その飛行をモデル化して、ハリスホークの攻撃軌跡との一致度が最も高い数学的誘導則を突き止めた。その結果、ハリスホークが混合誘導則を用いていることが判明した。すなわち、追跡飛行における方向転換が、視線の変化率、およびハリスホークの攻撃方向と標的に対する視線の間の角度(偏差角)に関するフィードバックによって決まることが分かった。著者たちは、この混合則が応答速度を向上させ、追跡におけるオーバーシュート(追跡していた獲物より前に飛び出してしまうこと)のリスクを低減させていると主張している。



参考文献:
Brighton CH, and Taylor GK.(2019): Hawks steer attacks using a guidance system tuned for close pursuit of erratically manoeuvring targets. Nature Communications, 10, 2462.
https://doi.org/10.1038/s41467-019-10454-z

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