ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』57話~60話
57話「蒸発」8
家族を捨てて蒸発した男性が殺人事件の目撃者となり、狙われる話です。男性の妻は感じの良い人で、子供までいるのに蒸発した男性に、若いジーパンは疑問と不信感を抱きます。そんなジーパンに、自分も蒸発したいと思った時がある、と山さんは打ち明けます。複雑な生い立ちの山さんは、一歩間違えれば自分が犯罪者になっていた可能性も率直に認めているように(90話)、自分の弱さをはっきりと自覚しています。しかし、そうした自分の弱さを曝け出せるというのは、それだけ自信があることも意味しており、自分が刑事を続けて道を踏み外さずにいることに自負を抱いているのでしょう。ジーパンにとっては、山さんもそうですが、ボスや長さんも刑事としてだけではなく人生の師でもあるように思います。これは、この時期にはまだ若手としての性格を残していたゴリさんや殿下との大きな違いだと思います。
初期と後期の違いと言えば、初期の山さんの口の悪さがありますが、今回はボスに対してもぞんざいな感じの話し方で、まだ後期とは大きく異なるな、と思います。また、ボスが久美ちゃんに、捜査に関する話に口を挟みすぎる、と注意したことも注目されます。久美ちゃんは後の事務員とは異なり、捜査への興味を隠さず、積極的に話しかけていくところがあります。私は、歴代事務員で最もキャラが立っていたのは久美ちゃんだと思いますし、お気に入りなのですが、一部視聴者にはこうしたキャラが不評で、そのために後の事務員は控えめになったのかもしれません。まあ、久美ちゃんの次の事務員のチャコもなかなか積極的でしたから、久美ちゃんとチャコのキャラへの一部視聴者への反感?に配慮して、アッコとナーコのキャラは控えめになったのかもしれません。
すでに55話で予告されていましたが(関連記事)、今回から七曲署は西山署長体制となります。赴任回からジーパンが大暴れしてボスが説教されるなど、後の一係と西山署長の関係性はすでに定まっていたかのような感があります。この後10年近く七曲署は西山署長体制が続くわけで、本作では他の署長の存在感が薄くなってしまうくらい、強く視聴者の印象に残ったのではないか、と思います。嫌味で俗っぽく、責任を回避し、ボスに責任を押しつける傾向があるなど、悪役的なところのあった西山署長ですが、それでも可能な範囲で一係を庇おうとしたところもあり、かなりキャラが立っていたと思いますし、息子が登場した主演回に近い話もありました。今後は、西山署長と一係とのやり取りも楽しみの一つとなります。
58話「夜明けの青春」9
若者の挫折・不満・怒り・焦燥・軽率さを描いた話で、青春ドラマ的性格が強くなっており、本作初期は後期よりも青春ドラマ的性格が強かったと思います。ただ、主演はジーパンではなく山さんで、若者の暴走を大人が寄り添って理解し説得するという、本作の定番の一つになっています。冒頭で山さんが犯人の若い男性の説得に失敗し、自殺させてしまうのですが、山さんにしては珍しいくらいの大失敗だと思います。後年の山さんにはこうした大失敗が見られないだけに、この時点ではまだ、最初期の試行錯誤的なところが多分に残っている、と言えるかもしれません。この失敗を踏まえての、山さんの若い男女2人への説得は見ごたえがありました。ゴリさんの情報屋として登場するトクさんは、マカロニ殉職回(関連記事)に登場したゴリさんの情報屋と同一人物だと思います。この後の登場がなかったのは残念ですが、演者の上田忠好氏はこの後も何度か出演しており、好きな俳優だけに、出演回を楽しみにしています。冒頭の山さんの失敗でボスが署長に呼び出された時、ボスが山さんを気遣って、署長に説教された話はせず、子供の自慢話をされた、と語っていましたが、後に署長の子供が登場したこともありましたから、伏線にもなっています。
59話「生命の代償」8
会社の不正の責任を押し付けられ、家族への援助と引き換えに自殺を強要された男性の決断が描かれます。家族を盾に取られ、巨大な組織から圧力をかけられた一個人が家族を幸せにすべくどう対応するのか、という点で普遍的な話になっています。こうした普遍性もまた、本作を今でも楽しめる一因になっています。この男性が自殺しそうだったのを見た長さんは、男性をずっと追いかけ続けます。不正容疑で警視庁から取り調べを受けた男性はジーパンに一喝されて会社との対峙を決意し、会社側に命を狙われて危ういところを長さんとジーパンが救います。長さん主演作ですが、長さんと組んだジーパンとのダブル主演といった感じで、2人以外のレギュラーはほとんど登場しません。長さんとジーパンの世代差、父親視点の長さんと息子視点のジーパンとが対照的に描かれ、なかなか上手く構成されていると思います。この点でも普遍的な話になっており、なかなか楽しめました。
60話「新宿に朝は来るけれど」6
ジーパンと容疑者の若い女性との関係が主題となります。ジーパンが主演ということもありますし、女性だけではなくジーパンも含めて若者たちの悩みが描かれ、58話よりも青春ドラマ的性格が強くなっています。男性を殺した若い女性の意図が不明で、同じく若いジーパンが接触を続けていく中で女性の心理に近づいてくという構造は、王道的で安定感があります。若い女性を演じたのは桃井かおり氏で、このような意図を読みにくい不思議系の役によく合っていると思います。謎解き要素の点でもまずまず楽しめました。世の中に絶望し、未来を悲観したという事件の根本的動機には普遍的なところがあり、こうした普遍性も本作の魅力の一つになっていると思います。若手刑事の悲恋ものとしての性格もあり、これは本作の定番の一つです。今回、シンコが久々に登場しましたが、ジーパン編ではシンコの出演率が低いため、貴重だとさえ感じてしまいます。まあ、今回はあまり出番がありませんでしたが。
家族を捨てて蒸発した男性が殺人事件の目撃者となり、狙われる話です。男性の妻は感じの良い人で、子供までいるのに蒸発した男性に、若いジーパンは疑問と不信感を抱きます。そんなジーパンに、自分も蒸発したいと思った時がある、と山さんは打ち明けます。複雑な生い立ちの山さんは、一歩間違えれば自分が犯罪者になっていた可能性も率直に認めているように(90話)、自分の弱さをはっきりと自覚しています。しかし、そうした自分の弱さを曝け出せるというのは、それだけ自信があることも意味しており、自分が刑事を続けて道を踏み外さずにいることに自負を抱いているのでしょう。ジーパンにとっては、山さんもそうですが、ボスや長さんも刑事としてだけではなく人生の師でもあるように思います。これは、この時期にはまだ若手としての性格を残していたゴリさんや殿下との大きな違いだと思います。
初期と後期の違いと言えば、初期の山さんの口の悪さがありますが、今回はボスに対してもぞんざいな感じの話し方で、まだ後期とは大きく異なるな、と思います。また、ボスが久美ちゃんに、捜査に関する話に口を挟みすぎる、と注意したことも注目されます。久美ちゃんは後の事務員とは異なり、捜査への興味を隠さず、積極的に話しかけていくところがあります。私は、歴代事務員で最もキャラが立っていたのは久美ちゃんだと思いますし、お気に入りなのですが、一部視聴者にはこうしたキャラが不評で、そのために後の事務員は控えめになったのかもしれません。まあ、久美ちゃんの次の事務員のチャコもなかなか積極的でしたから、久美ちゃんとチャコのキャラへの一部視聴者への反感?に配慮して、アッコとナーコのキャラは控えめになったのかもしれません。
すでに55話で予告されていましたが(関連記事)、今回から七曲署は西山署長体制となります。赴任回からジーパンが大暴れしてボスが説教されるなど、後の一係と西山署長の関係性はすでに定まっていたかのような感があります。この後10年近く七曲署は西山署長体制が続くわけで、本作では他の署長の存在感が薄くなってしまうくらい、強く視聴者の印象に残ったのではないか、と思います。嫌味で俗っぽく、責任を回避し、ボスに責任を押しつける傾向があるなど、悪役的なところのあった西山署長ですが、それでも可能な範囲で一係を庇おうとしたところもあり、かなりキャラが立っていたと思いますし、息子が登場した主演回に近い話もありました。今後は、西山署長と一係とのやり取りも楽しみの一つとなります。
58話「夜明けの青春」9
若者の挫折・不満・怒り・焦燥・軽率さを描いた話で、青春ドラマ的性格が強くなっており、本作初期は後期よりも青春ドラマ的性格が強かったと思います。ただ、主演はジーパンではなく山さんで、若者の暴走を大人が寄り添って理解し説得するという、本作の定番の一つになっています。冒頭で山さんが犯人の若い男性の説得に失敗し、自殺させてしまうのですが、山さんにしては珍しいくらいの大失敗だと思います。後年の山さんにはこうした大失敗が見られないだけに、この時点ではまだ、最初期の試行錯誤的なところが多分に残っている、と言えるかもしれません。この失敗を踏まえての、山さんの若い男女2人への説得は見ごたえがありました。ゴリさんの情報屋として登場するトクさんは、マカロニ殉職回(関連記事)に登場したゴリさんの情報屋と同一人物だと思います。この後の登場がなかったのは残念ですが、演者の上田忠好氏はこの後も何度か出演しており、好きな俳優だけに、出演回を楽しみにしています。冒頭の山さんの失敗でボスが署長に呼び出された時、ボスが山さんを気遣って、署長に説教された話はせず、子供の自慢話をされた、と語っていましたが、後に署長の子供が登場したこともありましたから、伏線にもなっています。
59話「生命の代償」8
会社の不正の責任を押し付けられ、家族への援助と引き換えに自殺を強要された男性の決断が描かれます。家族を盾に取られ、巨大な組織から圧力をかけられた一個人が家族を幸せにすべくどう対応するのか、という点で普遍的な話になっています。こうした普遍性もまた、本作を今でも楽しめる一因になっています。この男性が自殺しそうだったのを見た長さんは、男性をずっと追いかけ続けます。不正容疑で警視庁から取り調べを受けた男性はジーパンに一喝されて会社との対峙を決意し、会社側に命を狙われて危ういところを長さんとジーパンが救います。長さん主演作ですが、長さんと組んだジーパンとのダブル主演といった感じで、2人以外のレギュラーはほとんど登場しません。長さんとジーパンの世代差、父親視点の長さんと息子視点のジーパンとが対照的に描かれ、なかなか上手く構成されていると思います。この点でも普遍的な話になっており、なかなか楽しめました。
60話「新宿に朝は来るけれど」6
ジーパンと容疑者の若い女性との関係が主題となります。ジーパンが主演ということもありますし、女性だけではなくジーパンも含めて若者たちの悩みが描かれ、58話よりも青春ドラマ的性格が強くなっています。男性を殺した若い女性の意図が不明で、同じく若いジーパンが接触を続けていく中で女性の心理に近づいてくという構造は、王道的で安定感があります。若い女性を演じたのは桃井かおり氏で、このような意図を読みにくい不思議系の役によく合っていると思います。謎解き要素の点でもまずまず楽しめました。世の中に絶望し、未来を悲観したという事件の根本的動機には普遍的なところがあり、こうした普遍性も本作の魅力の一つになっていると思います。若手刑事の悲恋ものとしての性格もあり、これは本作の定番の一つです。今回、シンコが久々に登場しましたが、ジーパン編ではシンコの出演率が低いため、貴重だとさえ感じてしまいます。まあ、今回はあまり出番がありませんでしたが。
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