コウモリのように飛んだ小型恐竜(追記有)
コウモリのように飛んだ小型恐竜に関する研究(Wang et al., 2019)が公表されました。スカンソリオプテリクス類は小型恐竜(体重約200g)の分類群で、前肢と指がひじょうに長く、樹上生活する羽毛恐竜として復元されるのが一般的です。しかし、2015年に発見されたスカンソリオプテリクス類恐竜イー(Yi qi) は、これとは異なっていました。イーには、尖筆状突起(styliform element)に支えられた、コウモリの翼に似た膜状翼があったと考えられます。この種の膜状翼は、恐竜以外の飛行能力を有する脊椎動物の系統(コウモリ類や翼竜類など)が持っていたものの、獣脚類恐竜も有していたことはこれまで知られていませんでした。
この研究は、新たなスカンソリオプテリクス類(Ambopteryx longibrachium)について、これがイーと同じような膜状翼と尖筆状突起を有していたと説明しています。しかし、このスカンソリオプテリクス類にはイーと異なる特徴がいくつかあり、たとえば、前肢骨の幅が広く、短い尾の末端で椎骨が融合しており、ひじょうに長い前肢は後肢より長い、といったものです。この研究は、スカンソリオプテリクス類と鳥類の系統が分岐し、異なる経路で飛行能力を備えるに至ったものの、その分岐が近づいた頃に翼構造に著しい変化が生じたことを明らかにしました。またこの研究は、スカンソリオプテリクス類に備わっていた膜状翼と長い前肢は、短期間で終わった飛行実験を示すもので、その後、羽毛の生えた翼が優勢になった可能性がひじょうに高い、という見解を提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【化石】コウモリのように飛んだ小型恐竜の化石証拠
コウモリのような翼を持つスカンソリオプテリクス類恐竜の新種の化石が中国遼寧省で発見されたことを報告する論文が、今週掲載される。この化石標本は、約1億6300万年前のものと年代測定され、鳥類に近縁の恐竜類が飛行し始める直前の時期にいろいろな翼構造を試していたことを示唆する証拠となる。
スカンソリオプテリクス類は、小型恐竜(体重約200グラム)の分類群で、前肢と指が非常に長く、樹上生活する羽毛恐竜として復元されるのが一般的だ。しかし、最近発見されたスカンソリオプテリクス類恐竜のYi qi は、これとは異なっていた。イー(Yi qi)には、尖筆状突起(styliform element)に支えられた、コウモリの翼に似た膜状翼があったと考えられるのだ。この種の膜状翼は、恐竜以外の飛行能力を有する脊椎動物の系統(コウモリ類や翼竜類など)が持っていたが、獣脚類恐竜も有していたことはこれまで知られていなかった。
今回、Min Wangたちの研究グループは、Ambopteryx longibrachiumと名付けたスカンソリオプテリクス類について、これがイーと同じような膜状翼と尖筆状突起を有していたと説明している。しかし、Ambopteryxにはイーと異なる特徴がいくつかあり、例えば、Ambopteryxは前肢骨の幅が広く、短い尾の末端で椎骨が融合しており、非常に長い前肢は後肢より長い。
Wangたちは、スカンソリオプテリクス類と鳥類の系統が分岐し、異なる経路で飛行能力を備えるに至ったが、その分岐が近づいた頃に翼構造に著しい変化が生じたことを明らかにした。また著者たちは、スカンソリオプテリクス類に備わっていた膜状翼と長い前肢は、短期間で終わった飛行実験を示すものであり、その後、羽毛の生えた翼が優勢になった可能性が非常に高いという考えを示している。
古生物学:ジュラ紀の新たなスカンソリオプテリクス類と獣脚類恐竜における皮膜状の翼の消滅
Cover Story:皮膜の翼:Ambopteryxのコウモリの翼に似た皮膜によって見直される恐竜の飛行の進化
表紙は、新たに発見された恐竜Ambopteryx longibrachiumの想像図である。今回M Wangたちは、約1億6300万年前の後期ジュラ紀にさかのぼるAmbopteryxの化石について報告している。Ambopteryxは、長い手指を持つ樹上性の小型羽毛恐竜として描かれることの多い、スカンソリオプテリクス類の恐竜である。しかし、Ambopteryxは他のスカンソリオプテリクス類とは異なり、羽毛と、尖筆状突起(styliform element)と呼ばれる副骨によって支持されるコウモリに似た皮膜状の翼の両方の証拠を有している。皮膜状の翼は、2015年に発見されたイー(Yi qi)で最初に認められ、かなりの物議を醸して以来、今回が2例目となる。Ambopteryx の発見は、イーが例外ではなかったことを示しており、スカンソリオプテリクス類が、羽毛に加えて一般的にコウモリのような翼も有していた可能性を提起している。
参考文献:
Wang M. et al.(2019): A new Jurassic scansoriopterygid and the loss of membranous wings in theropod dinosaurs. Nature, 569, 7755, 256–259.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1137-z
追記(2019年5月11日)
ナショナルジオグラフィックで報道されました。
この研究は、新たなスカンソリオプテリクス類(Ambopteryx longibrachium)について、これがイーと同じような膜状翼と尖筆状突起を有していたと説明しています。しかし、このスカンソリオプテリクス類にはイーと異なる特徴がいくつかあり、たとえば、前肢骨の幅が広く、短い尾の末端で椎骨が融合しており、ひじょうに長い前肢は後肢より長い、といったものです。この研究は、スカンソリオプテリクス類と鳥類の系統が分岐し、異なる経路で飛行能力を備えるに至ったものの、その分岐が近づいた頃に翼構造に著しい変化が生じたことを明らかにしました。またこの研究は、スカンソリオプテリクス類に備わっていた膜状翼と長い前肢は、短期間で終わった飛行実験を示すもので、その後、羽毛の生えた翼が優勢になった可能性がひじょうに高い、という見解を提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【化石】コウモリのように飛んだ小型恐竜の化石証拠
コウモリのような翼を持つスカンソリオプテリクス類恐竜の新種の化石が中国遼寧省で発見されたことを報告する論文が、今週掲載される。この化石標本は、約1億6300万年前のものと年代測定され、鳥類に近縁の恐竜類が飛行し始める直前の時期にいろいろな翼構造を試していたことを示唆する証拠となる。
スカンソリオプテリクス類は、小型恐竜(体重約200グラム)の分類群で、前肢と指が非常に長く、樹上生活する羽毛恐竜として復元されるのが一般的だ。しかし、最近発見されたスカンソリオプテリクス類恐竜のYi qi は、これとは異なっていた。イー(Yi qi)には、尖筆状突起(styliform element)に支えられた、コウモリの翼に似た膜状翼があったと考えられるのだ。この種の膜状翼は、恐竜以外の飛行能力を有する脊椎動物の系統(コウモリ類や翼竜類など)が持っていたが、獣脚類恐竜も有していたことはこれまで知られていなかった。
今回、Min Wangたちの研究グループは、Ambopteryx longibrachiumと名付けたスカンソリオプテリクス類について、これがイーと同じような膜状翼と尖筆状突起を有していたと説明している。しかし、Ambopteryxにはイーと異なる特徴がいくつかあり、例えば、Ambopteryxは前肢骨の幅が広く、短い尾の末端で椎骨が融合しており、非常に長い前肢は後肢より長い。
Wangたちは、スカンソリオプテリクス類と鳥類の系統が分岐し、異なる経路で飛行能力を備えるに至ったが、その分岐が近づいた頃に翼構造に著しい変化が生じたことを明らかにした。また著者たちは、スカンソリオプテリクス類に備わっていた膜状翼と長い前肢は、短期間で終わった飛行実験を示すものであり、その後、羽毛の生えた翼が優勢になった可能性が非常に高いという考えを示している。
古生物学:ジュラ紀の新たなスカンソリオプテリクス類と獣脚類恐竜における皮膜状の翼の消滅
Cover Story:皮膜の翼:Ambopteryxのコウモリの翼に似た皮膜によって見直される恐竜の飛行の進化
表紙は、新たに発見された恐竜Ambopteryx longibrachiumの想像図である。今回M Wangたちは、約1億6300万年前の後期ジュラ紀にさかのぼるAmbopteryxの化石について報告している。Ambopteryxは、長い手指を持つ樹上性の小型羽毛恐竜として描かれることの多い、スカンソリオプテリクス類の恐竜である。しかし、Ambopteryxは他のスカンソリオプテリクス類とは異なり、羽毛と、尖筆状突起(styliform element)と呼ばれる副骨によって支持されるコウモリに似た皮膜状の翼の両方の証拠を有している。皮膜状の翼は、2015年に発見されたイー(Yi qi)で最初に認められ、かなりの物議を醸して以来、今回が2例目となる。Ambopteryx の発見は、イーが例外ではなかったことを示しており、スカンソリオプテリクス類が、羽毛に加えて一般的にコウモリのような翼も有していた可能性を提起している。
参考文献:
Wang M. et al.(2019): A new Jurassic scansoriopterygid and the loss of membranous wings in theropod dinosaurs. Nature, 569, 7755, 256–259.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1137-z
追記(2019年5月11日)
ナショナルジオグラフィックで報道されました。
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