マウスの皮膚の若々しさと老化の基盤
マウスの皮膚の若々しさと老化の基盤に関する研究(Liu et al., 2019)が公表されました。老化した皮膚は、薄層化・脆弱性・創傷治癒の遅れの他、角化細胞やメラノサイトなどの皮膚細胞の「リザーバー」の減少によって特徴づけられます。幹細胞競合とは、特定の幹細胞の子孫のクローンが他のクローンに対して増殖優位性を獲得する現象で、組織の適応度の維持に関わっていると考えられています。この研究は、ヒトの皮膚と共通の特徴を数多く有し、同じように老化するマウスの尾部を対象として、幹細胞競合が皮膚の老化にどのような役割を果たすのか調べました。
その結果、幹細胞競合は、加齢によって発現が低下する特定のコラーゲンタンパク質(COL17A1)により推進される、と明らかになりました。またこの研究は、COL17A1の発現が幹細胞によって異なっており、COL17A1の発現レベルが高い幹細胞は、基底膜にしっかりとつなぎ留められ、基底膜に沿って対称に分裂し、近接するCOL17A1の発現レベルが低い幹細胞を排除することを見いだしました。こうした幹細胞間の競合は、皮膚の全体構造と完全性を維持する上で役立っています。しかし、COL17A1の発現レベルは、加齢とともに、酸化または紫外線への曝露などのストレスによって低下し、最終的に全ての幹細胞でCOL17A1の発現レベルが低下すると、皮膚が老化します。
またこの研究は、ヒト角化細胞において、COL17A1の発現を維持する2種類の化学物質(Y27632とアポシニン)を見いだしました。これらの薬物は、マウスの創傷治癒を促進しました。まとめると、今回の成果は、皮膚の恒常性と老化における幹細胞競合とCOL17A1の重要性を明らかにしており、皮膚再生とアンチエイジング薬に向けた重要な一歩となりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【老化】マウスの皮膚の若々しさと老化の基盤となる仕組み
特定のコラーゲンタンパク質(COL17A1)によって推進される幹細胞同士の競合は、マウスの皮膚を「若々しく」保つ上で非常に重要だが、年月の経過による皮膚の老化の原因にもなっていることを明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究では、新たなアンチエイジング介入への利用が期待される物質も同定された。
老化した皮膚は、菲薄化、脆弱性、創傷治癒の遅れの他、角化細胞やメラノサイトなどの皮膚細胞の「リザーバー」の減少によって特徴付けられる。幹細胞競合とは、特定の幹細胞の子孫のクローンが他のクローンに対して増殖優位性を獲得する現象で、組織の適応度の維持に関わっていると考えられている。
今回、東京医科歯科大学の西村栄美(にしむら・えみ)たちの研究グループは、ヒトの皮膚と共通の特徴を数多く有し、同じように老化するマウスの尾部を研究対象として、幹細胞競合が皮膚の老化にどのような役割を果たすかを調べた。その結果、幹細胞競合は、加齢によって発現が低下するコラーゲンタンパク質COL17A1によって推進されることが明らかになった。また西村たちは、COL17A1の発現が幹細胞によって異なっており、COL17A1の発現レベルが高い幹細胞は、基底膜にしっかりとつなぎ留められ、基底膜に沿って対称に分裂し、近接するCOL17A1の発現レベルが低い幹細胞を排除することを見いだした。こうした幹細胞間の競合は、皮膚の全体構造と完全性を維持する上で役立っている。しかし、COL17A1の発現レベルは、加齢とともに、酸化または紫外線への曝露などのストレスによって低下する。そして、最終的に全ての幹細胞でCOL17A1の発現レベルが低下すると、皮膚が老化する。
また西村たちは、ヒト角化細胞において、COL17A1の発現を維持する2種類の化学物質(Y27632とアポシニン)を見いだした。これらの薬物は、マウスの創傷治癒を促進した。まとめると、今回の成果は皮膚の恒常性と老化における幹細胞競合とCOL17A1の重要性を明らかにしており、皮膚再生とアンチエイジング薬に向けた重要な一歩となった。
加齢:幹細胞競合が皮膚の恒常性と老化をつかさどる
加齢:皮膚の老化
老化した皮膚は、薄層化、脆弱性、創傷治癒の遅延の他、角化細胞やメラノサイトなどの皮膚細胞のリザーバーの減少を特徴とする。西村栄美(東京医科歯科大学)たちは今回、特定の幹細胞の子孫クローンが他のクローンよりも増殖拡大する幹細胞競合と呼ばれる現象が、皮膚の正常な恒常性と若さの根底にあることを示している。この過程はコラーゲンタンパク質COL17A1によって駆動される。著者たちは、幹細胞間でCOL17A1の発現に差異があり、COL17A1高発現クローンは基底膜にしっかりと固定されて基底膜に沿って対称分裂を行い、隣接するCOL17A1低発現クローンを排除することを明らかにした。この細胞間の競合が、皮膚の全体的な構造と完全性の維持に役立っている。しかし、COL17A1の発現は、加齢とともに、また酸化や紫外線への曝露などのストレスによって低下し、これらが皮膚の老化を引き起こす。著者たちは、ヒトの角化細胞においてCOL17A1の発現を維持させる2つの化合物、Y27632とアポシニンを特定した。これらの薬剤はマウスにおいて創傷治癒を促進した。今回の結果は、皮膚の老化におけるCOL17A1を介する幹細胞競合の重要性を明らかにしており、皮膚の再生および抗加齢医学に向けた大きな一歩になる。
参考文献:
Liu N. et al.(2019): Stem cell competition orchestrates skin homeostasis and ageing. Nature, 568, 7752, 344–350.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1085-7
その結果、幹細胞競合は、加齢によって発現が低下する特定のコラーゲンタンパク質(COL17A1)により推進される、と明らかになりました。またこの研究は、COL17A1の発現が幹細胞によって異なっており、COL17A1の発現レベルが高い幹細胞は、基底膜にしっかりとつなぎ留められ、基底膜に沿って対称に分裂し、近接するCOL17A1の発現レベルが低い幹細胞を排除することを見いだしました。こうした幹細胞間の競合は、皮膚の全体構造と完全性を維持する上で役立っています。しかし、COL17A1の発現レベルは、加齢とともに、酸化または紫外線への曝露などのストレスによって低下し、最終的に全ての幹細胞でCOL17A1の発現レベルが低下すると、皮膚が老化します。
またこの研究は、ヒト角化細胞において、COL17A1の発現を維持する2種類の化学物質(Y27632とアポシニン)を見いだしました。これらの薬物は、マウスの創傷治癒を促進しました。まとめると、今回の成果は、皮膚の恒常性と老化における幹細胞競合とCOL17A1の重要性を明らかにしており、皮膚再生とアンチエイジング薬に向けた重要な一歩となりました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【老化】マウスの皮膚の若々しさと老化の基盤となる仕組み
特定のコラーゲンタンパク質(COL17A1)によって推進される幹細胞同士の競合は、マウスの皮膚を「若々しく」保つ上で非常に重要だが、年月の経過による皮膚の老化の原因にもなっていることを明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究では、新たなアンチエイジング介入への利用が期待される物質も同定された。
老化した皮膚は、菲薄化、脆弱性、創傷治癒の遅れの他、角化細胞やメラノサイトなどの皮膚細胞の「リザーバー」の減少によって特徴付けられる。幹細胞競合とは、特定の幹細胞の子孫のクローンが他のクローンに対して増殖優位性を獲得する現象で、組織の適応度の維持に関わっていると考えられている。
今回、東京医科歯科大学の西村栄美(にしむら・えみ)たちの研究グループは、ヒトの皮膚と共通の特徴を数多く有し、同じように老化するマウスの尾部を研究対象として、幹細胞競合が皮膚の老化にどのような役割を果たすかを調べた。その結果、幹細胞競合は、加齢によって発現が低下するコラーゲンタンパク質COL17A1によって推進されることが明らかになった。また西村たちは、COL17A1の発現が幹細胞によって異なっており、COL17A1の発現レベルが高い幹細胞は、基底膜にしっかりとつなぎ留められ、基底膜に沿って対称に分裂し、近接するCOL17A1の発現レベルが低い幹細胞を排除することを見いだした。こうした幹細胞間の競合は、皮膚の全体構造と完全性を維持する上で役立っている。しかし、COL17A1の発現レベルは、加齢とともに、酸化または紫外線への曝露などのストレスによって低下する。そして、最終的に全ての幹細胞でCOL17A1の発現レベルが低下すると、皮膚が老化する。
また西村たちは、ヒト角化細胞において、COL17A1の発現を維持する2種類の化学物質(Y27632とアポシニン)を見いだした。これらの薬物は、マウスの創傷治癒を促進した。まとめると、今回の成果は皮膚の恒常性と老化における幹細胞競合とCOL17A1の重要性を明らかにしており、皮膚再生とアンチエイジング薬に向けた重要な一歩となった。
加齢:幹細胞競合が皮膚の恒常性と老化をつかさどる
加齢:皮膚の老化
老化した皮膚は、薄層化、脆弱性、創傷治癒の遅延の他、角化細胞やメラノサイトなどの皮膚細胞のリザーバーの減少を特徴とする。西村栄美(東京医科歯科大学)たちは今回、特定の幹細胞の子孫クローンが他のクローンよりも増殖拡大する幹細胞競合と呼ばれる現象が、皮膚の正常な恒常性と若さの根底にあることを示している。この過程はコラーゲンタンパク質COL17A1によって駆動される。著者たちは、幹細胞間でCOL17A1の発現に差異があり、COL17A1高発現クローンは基底膜にしっかりと固定されて基底膜に沿って対称分裂を行い、隣接するCOL17A1低発現クローンを排除することを明らかにした。この細胞間の競合が、皮膚の全体的な構造と完全性の維持に役立っている。しかし、COL17A1の発現は、加齢とともに、また酸化や紫外線への曝露などのストレスによって低下し、これらが皮膚の老化を引き起こす。著者たちは、ヒトの角化細胞においてCOL17A1の発現を維持させる2つの化合物、Y27632とアポシニンを特定した。これらの薬剤はマウスにおいて創傷治癒を促進した。今回の結果は、皮膚の老化におけるCOL17A1を介する幹細胞競合の重要性を明らかにしており、皮膚の再生および抗加齢医学に向けた大きな一歩になる。
参考文献:
Liu N. et al.(2019): Stem cell competition orchestrates skin homeostasis and ageing. Nature, 568, 7752, 344–350.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1085-7
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