日本人にはネアンデルタール人のY染色体遺伝子が少し残っています
ネアンデルタール人についてTwitterで検索していたら、表題のような呟きを発見しました。ツリーになっているので、先頭の呟きのみリンクを張ります。
ヨーロッパのホモ・サピエンスはネアンデルタール人を絶滅させたが、日本ではネアンデルタール人と共生していたと言うことがY染色体DNA解析で判明しています
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は交配していた事が解っており、DNAも採取されています
そして判明した事は、ヨーロッパの白人にはネアンデルタール人のY染色体遺伝子が含まれていない
つまり絶滅させた
しかし日本人にはネアンデルタール人のY染色体遺伝子が少し残っています
つまり緩やかに混血して共生していたのです
日本人が争いを好まない原因かも知れません
以前当ブログで、世界で最もネアンデルタール人に近いのは日本人との誤解を取り上げましたが(関連記事)、その時は、Y染色体の観点からネアンデルタール人と日本人の近縁性を主張するような見解を知らなかったので、言及しませんでした。こうした認識の出所はよく分かりませんでしたが、次のように主張するアカウントが存在するので、その人が言い出したのかもしれません。まずは、
ネアンデルタール人の遺伝子を最も遺すのはY-C次いでY-D、日本人が一番ネアンデルタール人に近い。ネアンデルタール人って本当の原日本人じゃないの?多少頭の形や骨格が現代型ホモサピエンスと異なるのは、進化に連れて変わったんじゃないの?
との呟きです。次に、
近年、最新遺伝子系統樹の根本、基底にネアンデルタール人を置く動きが色濃くなって来ましたが、最初っから「それはY-CとY-D(の祖先)だよ!」って言えばいいものを、ネアンデルタールだとかデニソワだとかクロマニヨンだとか往生際が悪い。
との呟きです。しかし、ネアンデルタール人のY染色体DNAは、現代人のY染色体DNAの変異内に収まらず、現時点では、ネアンデルタール人のY染色体を継承している現代人は確認されていませんし、今後も、そうした現代人が発見される可能性は限りなく皆無に近いでしょう。ネアンデルタール人のY染色体DNAは、イベリア半島北部のエルシドロン(El Sidrón)遺跡(関連記事)と、ベルギーのスピ(Spy)遺跡およびロシアのコーカサス地域のメズマイスカヤ(Mezmaiskaya)遺跡(関連記事)で確認されています。エルシドロン遺跡のネアンデルタール人に関する論文(Mendez et al., 2016)の図3は以下のようになっています。
スピ遺跡とメズマイスカヤ遺跡のネアンデルタール人に関する論文(Hajdinjak et al., 2018)の図2は以下のようになっています。
いずれも、ネアンデルタール人のY染色体DNAが現代人のY染色体DNAの変異内に収まらないことをよく示しています。現代人のY染色体DNAハプログループのCとDはいずれも現代人、さらには非アフリカ系現代人の変異内に収まっており、ネアンデルタール人から継承されているわけではありません。また、Y染色体DNAハプログループCおよびDの人々が、他のハプログループの人々よりもネアンデルタール人の遺伝的影響を強く受けていることを示す、まともな研究もないと思います。インターネットの普及により、多くの人々が容易に情報を発信できるようになり、予想もしなかったようなガセネタが拡散される可能性は、以前より高くなったように思います。私も、上記のようなガセネタに引っかからないよう、日頃から情報収集および確認を怠らないようにしたいものです。
参考文献:
Hajdinjak M. et al.(2018): Reconstructing the genetic history of late Neanderthals. Nature, 555, 7698, 652–656.
http://dx.doi.org/10.1038/nature26151
Mendez FL, Poznik GD, Castellano S, and Bustamante CD.(2016): The Divergence of Neandertal and Modern Human Y Chromosomes. The American Journal of Human Genetics, 98, 4, 728-734.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27058445
ヨーロッパのホモ・サピエンスはネアンデルタール人を絶滅させたが、日本ではネアンデルタール人と共生していたと言うことがY染色体DNA解析で判明しています
ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は交配していた事が解っており、DNAも採取されています
そして判明した事は、ヨーロッパの白人にはネアンデルタール人のY染色体遺伝子が含まれていない
つまり絶滅させた
しかし日本人にはネアンデルタール人のY染色体遺伝子が少し残っています
つまり緩やかに混血して共生していたのです
日本人が争いを好まない原因かも知れません
以前当ブログで、世界で最もネアンデルタール人に近いのは日本人との誤解を取り上げましたが(関連記事)、その時は、Y染色体の観点からネアンデルタール人と日本人の近縁性を主張するような見解を知らなかったので、言及しませんでした。こうした認識の出所はよく分かりませんでしたが、次のように主張するアカウントが存在するので、その人が言い出したのかもしれません。まずは、
ネアンデルタール人の遺伝子を最も遺すのはY-C次いでY-D、日本人が一番ネアンデルタール人に近い。ネアンデルタール人って本当の原日本人じゃないの?多少頭の形や骨格が現代型ホモサピエンスと異なるのは、進化に連れて変わったんじゃないの?
との呟きです。次に、
近年、最新遺伝子系統樹の根本、基底にネアンデルタール人を置く動きが色濃くなって来ましたが、最初っから「それはY-CとY-D(の祖先)だよ!」って言えばいいものを、ネアンデルタールだとかデニソワだとかクロマニヨンだとか往生際が悪い。
との呟きです。しかし、ネアンデルタール人のY染色体DNAは、現代人のY染色体DNAの変異内に収まらず、現時点では、ネアンデルタール人のY染色体を継承している現代人は確認されていませんし、今後も、そうした現代人が発見される可能性は限りなく皆無に近いでしょう。ネアンデルタール人のY染色体DNAは、イベリア半島北部のエルシドロン(El Sidrón)遺跡(関連記事)と、ベルギーのスピ(Spy)遺跡およびロシアのコーカサス地域のメズマイスカヤ(Mezmaiskaya)遺跡(関連記事)で確認されています。エルシドロン遺跡のネアンデルタール人に関する論文(Mendez et al., 2016)の図3は以下のようになっています。
スピ遺跡とメズマイスカヤ遺跡のネアンデルタール人に関する論文(Hajdinjak et al., 2018)の図2は以下のようになっています。
いずれも、ネアンデルタール人のY染色体DNAが現代人のY染色体DNAの変異内に収まらないことをよく示しています。現代人のY染色体DNAハプログループのCとDはいずれも現代人、さらには非アフリカ系現代人の変異内に収まっており、ネアンデルタール人から継承されているわけではありません。また、Y染色体DNAハプログループCおよびDの人々が、他のハプログループの人々よりもネアンデルタール人の遺伝的影響を強く受けていることを示す、まともな研究もないと思います。インターネットの普及により、多くの人々が容易に情報を発信できるようになり、予想もしなかったようなガセネタが拡散される可能性は、以前より高くなったように思います。私も、上記のようなガセネタに引っかからないよう、日頃から情報収集および確認を怠らないようにしたいものです。
参考文献:
Hajdinjak M. et al.(2018): Reconstructing the genetic history of late Neanderthals. Nature, 555, 7698, 652–656.
http://dx.doi.org/10.1038/nature26151
Mendez FL, Poznik GD, Castellano S, and Bustamante CD.(2016): The Divergence of Neandertal and Modern Human Y Chromosomes. The American Journal of Human Genetics, 98, 4, 728-734.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27058445
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