石井公成『東アジア仏教史』
岩波新書(赤版)の一冊として、岩波書店より2019年2月に刊行されました。率直に言って、本書は新書としてはかなり密度の濃い一冊になっており、一読しただけでは、概略を把握することも困難でした。もちろん、これは私に仏教史の知見が著しく欠けているためで、仏教史の教科書として、今後再読していかねばならないな、と痛感しています。本書は、1章を割いて「インド」の初期仏教について解説していますが、基本的には「中国」を中心に漢字仏教を対象としています。以前当ブログにて、チベットやモンゴルの仏教がほぼ取り上げられていないことを批判する見解を紹介しましたが(関連記事)、著者の専門の問題もあるでしょうし、対象を漢字仏教に限定したことに問題があるとは、とくに思いませんでした。
本書を読んで改めて思ったのは、宗教・思想は習合するものであり、相互に影響を及ぼす、ということです。漢字仏教においては、経典の翻訳(漢訳)のさいに、儒教など漢字文化圏の影響を強く受け、変容していきました。さらに本書は、漢字文化圏において重視されてきた経典には、「中国」で作成されたものがひじょうに多い、と指摘します。本書はこれを、「経典に擬えて作成された文献」という意味で、「擬経」と読んでいます。本書は、「中国」を主要な対象地域としつつ、その「周辺地域」である「ベトナム」・「朝鮮」・「日本」も取り上げていますが、「擬経」に見られるように、儒教など漢字文化圏在来の概念の影響を考えれば、これら「東アジア」地域の漢字仏教を他地域の仏教と区別することには妥当性がある、と思います。もっとも、だからといって仏教が「中国化」した、と単純に言えるわけではなく、儒教や道教が仏教から強い影響を受けたことも、そもそも道教は仏教の影響を強く受けつつ、教団として形成されていったことも指摘されています。
また本書は、仏教史の流れを西方から東方への一方向としてのみ把握するのではなく、「西域諸国」を経て「中国」に伝わった漢字仏教が、逆に「西域諸国」へと影響を及ぼした事例や、アジア南東部へと仏教を伝えた「スリランカ」が、逆に11世紀には「ミャンマー」から僧侶を招いて仏教復興を図った事例や、わずかではあるものの、前近代において「日本」仏教が「朝鮮」や「中国」に影響を及ぼした事例も指摘しています。分量は少ないものの、本書は近代も取り上げており、「西洋」の近代的な学問・思潮に、漢字文化圏に限らず広く仏教圏が影響を受けた、と指摘しています。
本書を読んで改めて思ったのは、宗教・思想は習合するものであり、相互に影響を及ぼす、ということです。漢字仏教においては、経典の翻訳(漢訳)のさいに、儒教など漢字文化圏の影響を強く受け、変容していきました。さらに本書は、漢字文化圏において重視されてきた経典には、「中国」で作成されたものがひじょうに多い、と指摘します。本書はこれを、「経典に擬えて作成された文献」という意味で、「擬経」と読んでいます。本書は、「中国」を主要な対象地域としつつ、その「周辺地域」である「ベトナム」・「朝鮮」・「日本」も取り上げていますが、「擬経」に見られるように、儒教など漢字文化圏在来の概念の影響を考えれば、これら「東アジア」地域の漢字仏教を他地域の仏教と区別することには妥当性がある、と思います。もっとも、だからといって仏教が「中国化」した、と単純に言えるわけではなく、儒教や道教が仏教から強い影響を受けたことも、そもそも道教は仏教の影響を強く受けつつ、教団として形成されていったことも指摘されています。
また本書は、仏教史の流れを西方から東方への一方向としてのみ把握するのではなく、「西域諸国」を経て「中国」に伝わった漢字仏教が、逆に「西域諸国」へと影響を及ぼした事例や、アジア南東部へと仏教を伝えた「スリランカ」が、逆に11世紀には「ミャンマー」から僧侶を招いて仏教復興を図った事例や、わずかではあるものの、前近代において「日本」仏教が「朝鮮」や「中国」に影響を及ぼした事例も指摘しています。分量は少ないものの、本書は近代も取り上げており、「西洋」の近代的な学問・思潮に、漢字文化圏に限らず広く仏教圏が影響を受けた、と指摘しています。
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