ラッコが用いた石の摩耗痕(追記有)
ラッコが用いた石の摩耗痕に関する研究(Haslam et al., 2019)が公表されました。ラッコは石を道具として使い、イガイのような獲物をこじ開けることが知られている唯一の海洋哺乳類で、海中や胸部に乗せた岩石あるいは海面ぎりぎりの高さにある巨礫に獲物を叩きつけているところが観察されています。しかし、この行動が局所環境に及ぼす物理的影響については、よく分かっていません。
この研究は、アメリカ合衆国カリフォルニア州中部にあるエルクホーン・スラウという感潮河口域で、ラッコが岩石を使って獲物をこじ開けている様子を10年間にわたり観察しました。この研究は、エルクホーン・スラウ感潮河口域にある421個の岩石を調べ、そのうちの77個に独特な摩耗パターンがある、と発見しました。これらはラッコが獲物をこじ開けるさいに用いた岩石と判断して矛盾がない、と明らかになりました。
また、この区域内では捨てられたイガイの殻が多数見つかり、その破損パターンが捕食者であるラッコの行為と矛盾しないことも明らかになりました。この研究は、これらの破損パターンにより、ラッコが岩石を使ってこじ開けたイガイとヒトや他の動物が壊したイガイを区別できました。岩石や貝殻に残された独特な損傷は明確な行動上の特徴を表しており、これらを用いることで過去のラッコの採餌域を特定できる、とこの研究は指摘しています。また、これらの知見は、動物界全体でも珍しく、海洋動物においては極めてまれな石の台の使用の進化を解明するさいに役立つかもしれない、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【動物学】ラッコは自身の考古学的記録を残している
ラッコが殻の硬い獲物をこじ開けるために用いる岩石には独特な摩耗パターンが残っていることを報告する論文が、今週掲載される。このパターンは、考古学的手法を用いて識別できるので、すでに絶滅した個体群の生息域を追跡する上で役立つ可能性がある。
ラッコは、石を道具として使って、イガイのような獲物をこじ開けることが知られている唯一の海洋哺乳類で、海中や胸部に乗せた岩石、あるいは海面ぎりぎりの高さにある巨礫に獲物を叩きつけているところが観察されている。しかし、この行動が局所環境に及ぼす物理的影響については、よく分かっていない。
Jessica Fujii、Natalie Uominiたちの研究グループは、米国カリフォルニア州中部にあるエルクホーン・スラウという感潮河口域で、ラッコが岩石を使って獲物をこじ開けている様子を10年間にわたり観察した。著者たちは、この区域にある421個の岩石を調べて、そのうちの77個に独特な摩耗パターンがあることを発見し、これらはラッコが獲物をこじ開ける際に用いた岩石と判断して矛盾がないことを明らかにした。また、この区域内では捨てられたイガイの殻が多数見つかり、その破損パターンが捕食者であるラッコの行為と矛盾しないことも明らかにした。著者たちは、これらの破損パターンによって、ラッコが岩石を使ってこじ開けたイガイとヒトや他の動物が壊したイガイを区別できた。著者たちは、岩石や貝殻に残された独特な損傷は、明確な行動上の特徴を表していて、これらを用いることで過去のラッコの採餌域を特定できる、という考えを示している。また、今回の知見は、動物界全体でも珍しく、海洋動物においては極めてまれな石の台の使用の進化を解明する際に役立つかもしれない。
参考文献:
Haslam M. et al.(2019): Wild sea otter mussel pounding leaves archaeological traces. Scientific Reports, 9, 4417.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-39902-y
追記(2019年4月3日)
ナショナルジオグラフィックでも報道されました。
この研究は、アメリカ合衆国カリフォルニア州中部にあるエルクホーン・スラウという感潮河口域で、ラッコが岩石を使って獲物をこじ開けている様子を10年間にわたり観察しました。この研究は、エルクホーン・スラウ感潮河口域にある421個の岩石を調べ、そのうちの77個に独特な摩耗パターンがある、と発見しました。これらはラッコが獲物をこじ開けるさいに用いた岩石と判断して矛盾がない、と明らかになりました。
また、この区域内では捨てられたイガイの殻が多数見つかり、その破損パターンが捕食者であるラッコの行為と矛盾しないことも明らかになりました。この研究は、これらの破損パターンにより、ラッコが岩石を使ってこじ開けたイガイとヒトや他の動物が壊したイガイを区別できました。岩石や貝殻に残された独特な損傷は明確な行動上の特徴を表しており、これらを用いることで過去のラッコの採餌域を特定できる、とこの研究は指摘しています。また、これらの知見は、動物界全体でも珍しく、海洋動物においては極めてまれな石の台の使用の進化を解明するさいに役立つかもしれない、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
【動物学】ラッコは自身の考古学的記録を残している
ラッコが殻の硬い獲物をこじ開けるために用いる岩石には独特な摩耗パターンが残っていることを報告する論文が、今週掲載される。このパターンは、考古学的手法を用いて識別できるので、すでに絶滅した個体群の生息域を追跡する上で役立つ可能性がある。
ラッコは、石を道具として使って、イガイのような獲物をこじ開けることが知られている唯一の海洋哺乳類で、海中や胸部に乗せた岩石、あるいは海面ぎりぎりの高さにある巨礫に獲物を叩きつけているところが観察されている。しかし、この行動が局所環境に及ぼす物理的影響については、よく分かっていない。
Jessica Fujii、Natalie Uominiたちの研究グループは、米国カリフォルニア州中部にあるエルクホーン・スラウという感潮河口域で、ラッコが岩石を使って獲物をこじ開けている様子を10年間にわたり観察した。著者たちは、この区域にある421個の岩石を調べて、そのうちの77個に独特な摩耗パターンがあることを発見し、これらはラッコが獲物をこじ開ける際に用いた岩石と判断して矛盾がないことを明らかにした。また、この区域内では捨てられたイガイの殻が多数見つかり、その破損パターンが捕食者であるラッコの行為と矛盾しないことも明らかにした。著者たちは、これらの破損パターンによって、ラッコが岩石を使ってこじ開けたイガイとヒトや他の動物が壊したイガイを区別できた。著者たちは、岩石や貝殻に残された独特な損傷は、明確な行動上の特徴を表していて、これらを用いることで過去のラッコの採餌域を特定できる、という考えを示している。また、今回の知見は、動物界全体でも珍しく、海洋動物においては極めてまれな石の台の使用の進化を解明する際に役立つかもしれない。
参考文献:
Haslam M. et al.(2019): Wild sea otter mussel pounding leaves archaeological traces. Scientific Reports, 9, 4417.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-39902-y
追記(2019年4月3日)
ナショナルジオグラフィックでも報道されました。
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