雌に偏った胚致死

 雌に偏った胚致死に関する研究(McNairn et al., 2019)が公表されました。ゲノム不安定性がチェックポイント活性化・老化・炎症を誘導すると知られていますが、哺乳類の発生においてゲノム不安定性がどのような影響を及ぼすのか、まだよく明らかになっていません。この研究は、DNA複製に必要なヘリカーゼの変異が、雄よりも雌で胚致死を引き起こす傾向がある、と明らかにしました。この影響は、雌のX染色体不活性化過程や雄がY染色体を持つこととは関連がなく、テストステロンの追加投与により救済できる、と分かりました。テストステロンは抗炎症応答を引き起こすようで、複製に関わる遺伝子の複数の変異体でイブプロフェンを投与することにより、その影響を模倣できました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


分子生物学:ゲノム不安定性により引き起こされる炎症による雌に偏った胚致死

分子生物学:雌の胚は複製によるストレスと炎症に影響を受けやすい

 ゲノム不安定性が、チェックポイント活性化、老化、炎症を誘導することは知られているが、哺乳類の発生においてゲノム不安定性がどのような影響を及ぼすかはまだ調べられていない。今回J Schimentiたちは、DNA複製に必要なヘリカーゼの変異が、雄よりも雌で胚致死を引き起こす傾向があることを見いだしている。この影響は、雌のX染色体不活性化過程や雄がY染色体を持つこととは関連がなく、テストステロンの追加投与により救済できることが分かった。テストステロンは抗炎症応答を引き起こすらしく、複製に関わる遺伝子の複数の変異体でイブプロフェンを投与することによりその影響を模倣できた。



参考文献:
McNairn AJ. et al.(2019): Female-biased embryonic death from inflammation induced by genomic instability. Nature, 567, 7746, 105–108.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-0936-6

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