宮内淳『「あの世」が教えてくれた人生の歩き方 本当の自分を生きるために』
2019年2月にサンマーク出版より刊行されました。本書の主題は、人間の生死の理由と人生の意味だと思います。その答えの手がかりは、今は著者の亡き母親から得られたそうです。著者は母親に、もし亡くなってあの世があったら教えてほしい、と頼んでいたそうです。母親が亡くなった後、探していたものや忘れ物が思いがけない場所で見つかったり、著者にメッセージが降りてきたりするようになり、「あの世」と「この世」の仕組みや人生の意味が明確に分かるようになったそうです。「あの世」は愛のエネルギーでできており、それを供給するのは「この世」を生きている我々だ、と本書は説明します。こうした精神世界ものの本は珍しくありませんが、生前の母親に「あの世」があったら教えてほしいと頼んでいた、という話は、この分野に疎い私には新鮮でした(詳しい人にはそうではないかもしれませんが)。著者の生い立ちにもかなりの分量が割かれていますが、著者は愛媛県のかなり裕福な地主の家に生まれたものの、父親が借金の連帯保証人になって肩代わりした借金を返せなくなり、遠い親戚を頼って大阪に引っ越したそうです。著者の父親はその後、さきイカの製造機の設計に成功し、再び裕福な暮らしに戻ったものの、著者が中学2年生の時に肝臓がんで亡くなり、それからは母親と二人で暮らしたそうです。著者の母親への愛は、本書を読むと強く感じられます。
本書はなかなか読みやすいのですが、こうした「精神世界」の本はありふれているだけに、これまで著書のない著者に何か売りがないと、刊行されることもなかったと思います。著者の場合、ある時期にはかなり高い知名度の元俳優だったことが、売りになっているとは思います。率直に言って、私も含めて本書を購入した人の多くは、著者がレギュラー刑事として4年近く出演していた『太陽にほえろ!』の裏話を目的としているのだと思います。それは著書にとって不本意な読まれ方でしょうが、著者も出版社も、それは覚悟しているというか、むしろ強く意識しているのだと思います。「本題」と絡めてではありますが、本書に占める『太陽にほえろ!』関連の話はかなりの分量となります。
その『太陽にほえろ!』の裏話ですが、これまで知らなかった話も書かれており、収穫がありました。著者が『太陽にほえろ!』の新人刑事に抜擢された決め手は、身長の高さだったようです。確かに、ジーパン以降の歴代の新人刑事の条件として、一定以上の身長があったように思います。ボンのキャラについて、母性本能を刺激するような甘さを出して女性ファンを増やせ、と著者はプロデューサーに指示されていたそうです。今になってみると、この方針は当たりでしたし、著者もプロデューサーの要求によく応えていたように思います。ただ、ずっと「甘ちゃん」でいたわけではなく、後輩のロッキーが入ってきた時に、兄貴分―とイメチェンを図り、一人称を僕から俺に変えたそうです。また、こうしたイメチェンでは、髪型・服装も自分で考えていったそうです。ロッキー登場後も、ボンは俺だけではなく僕とも言っていたような気がするのですが、この点に関しては、時間を作れればDVDかファミリー劇場HDリマスター版で確認します。
ボンが出演していた期間は『太陽にほえろ!』の視聴率が最も高かった頃で、著者は警官から敬礼されたことが何度もあったそうで、検問でもスルーさせてもせったそうです。ボス役の石原裕次郎氏については、「語弊を恐れずにいわせてもらうと、スターは芝居がうまくなくてもかまいません」と述べられています。スターとはそういうもので、どの役でも**と言われても構わないというか、むしろそういう存在であるべきなのかもしれません。本書は、スターとはその場にいてくれるだけでよい、皆が仰ぎ見る存在で、よい芝居をして人々を感動させなければいけない俳優とは違う、と指摘しています。本書は石原裕次郎氏を、細かいことは気にしない太っ腹の豪快な人のように思われているかもしれないが、繊細で細やかに気を遣う真面目な人だった、と評しています。
石原氏が当初はテレビ出演に乗り気ではなかったことは、よく知られているように思います。しかし、著者がボンを演じていたころには、テレビドラマへの出演を誘ってくれたプロデューサーに感謝していたそうです。石原氏の考えが変わったのは、『太陽にほえろ!』が高視聴率番組となったこともあるのでしょうが、ゴリさん役の竜雷太氏に熱い想いをぶつけられたこともあるようです。ある晩、竜氏は石原氏の自宅に押し掛け、「裕次郎!出てこいっ!」と叫び、出てきた石原氏に、「俺はテレビに命をかけているんだ!裕次郎、おまえもテレビに命をかけろ!」と怒鳴ったそうです。石原氏は竜氏の迫力に感動し、これ以降、二人の間には特別な信頼関係が築かれた、という話を本書は紹介しています。ボンの殉職は、当時大きな話題を呼んだようです。受話器を握りしめて殉職したボンの指をボスが一本ずつ引き離す場面で、ボンの指だけが放送されたことに石原氏は不満だったようで、つらい上司の顔も一緒に映さないと意味がない、と言っていたそうです。当初はテレビドラマへの出演を不満に思っていた石原氏ですが、ボンの殉職の頃には全力投球してくれていたのだ、と本書は指摘します。
芸能界の話としては、著者が芸能界に入る契機となった文学座の試験に合格した経緯は、なかなか面白いものでした。著者は、本当は筆記試験では合格水準に達していなかったものの、受験生の中で最も身長が高かったため、合格したそうです。その他に、環境問題への取り組みなど、興味深い話もありました。私としては、『太陽にほえろ!』で石原裕次郎氏以外の出演者の話をもっと書いてもらいたかった、とも思うのですが、本書の主題からすると、あまりにも『太陽にほえろ!』の裏話に分量を割くわけにもいかなかったのでしょう。本書の内容について、眉を顰める人は少なくないでしょうし、「和」を大切にする日本文化、といった通俗的な日本文化論に否定的な人もいるでしょう。こうした本が刊行されること自体を嘆く人もいるかもしれませんが、人権を強く侵害するような内容ではなく、インチキ商品を買わせたり、詐欺的な投資を促したりするような内容でなければ、言論の自由はできる限り保障されるべきだろう、と思います。少なくとも本書は、そうした観点から強く批判されるような内容ではないと思います。まあ、『太陽にほえろ!』の裏話を読めたので、かなり評価が甘くなってしまったかもしれませんが。
本書はなかなか読みやすいのですが、こうした「精神世界」の本はありふれているだけに、これまで著書のない著者に何か売りがないと、刊行されることもなかったと思います。著者の場合、ある時期にはかなり高い知名度の元俳優だったことが、売りになっているとは思います。率直に言って、私も含めて本書を購入した人の多くは、著者がレギュラー刑事として4年近く出演していた『太陽にほえろ!』の裏話を目的としているのだと思います。それは著書にとって不本意な読まれ方でしょうが、著者も出版社も、それは覚悟しているというか、むしろ強く意識しているのだと思います。「本題」と絡めてではありますが、本書に占める『太陽にほえろ!』関連の話はかなりの分量となります。
その『太陽にほえろ!』の裏話ですが、これまで知らなかった話も書かれており、収穫がありました。著者が『太陽にほえろ!』の新人刑事に抜擢された決め手は、身長の高さだったようです。確かに、ジーパン以降の歴代の新人刑事の条件として、一定以上の身長があったように思います。ボンのキャラについて、母性本能を刺激するような甘さを出して女性ファンを増やせ、と著者はプロデューサーに指示されていたそうです。今になってみると、この方針は当たりでしたし、著者もプロデューサーの要求によく応えていたように思います。ただ、ずっと「甘ちゃん」でいたわけではなく、後輩のロッキーが入ってきた時に、兄貴分―とイメチェンを図り、一人称を僕から俺に変えたそうです。また、こうしたイメチェンでは、髪型・服装も自分で考えていったそうです。ロッキー登場後も、ボンは俺だけではなく僕とも言っていたような気がするのですが、この点に関しては、時間を作れればDVDかファミリー劇場HDリマスター版で確認します。
ボンが出演していた期間は『太陽にほえろ!』の視聴率が最も高かった頃で、著者は警官から敬礼されたことが何度もあったそうで、検問でもスルーさせてもせったそうです。ボス役の石原裕次郎氏については、「語弊を恐れずにいわせてもらうと、スターは芝居がうまくなくてもかまいません」と述べられています。スターとはそういうもので、どの役でも**と言われても構わないというか、むしろそういう存在であるべきなのかもしれません。本書は、スターとはその場にいてくれるだけでよい、皆が仰ぎ見る存在で、よい芝居をして人々を感動させなければいけない俳優とは違う、と指摘しています。本書は石原裕次郎氏を、細かいことは気にしない太っ腹の豪快な人のように思われているかもしれないが、繊細で細やかに気を遣う真面目な人だった、と評しています。
石原氏が当初はテレビ出演に乗り気ではなかったことは、よく知られているように思います。しかし、著者がボンを演じていたころには、テレビドラマへの出演を誘ってくれたプロデューサーに感謝していたそうです。石原氏の考えが変わったのは、『太陽にほえろ!』が高視聴率番組となったこともあるのでしょうが、ゴリさん役の竜雷太氏に熱い想いをぶつけられたこともあるようです。ある晩、竜氏は石原氏の自宅に押し掛け、「裕次郎!出てこいっ!」と叫び、出てきた石原氏に、「俺はテレビに命をかけているんだ!裕次郎、おまえもテレビに命をかけろ!」と怒鳴ったそうです。石原氏は竜氏の迫力に感動し、これ以降、二人の間には特別な信頼関係が築かれた、という話を本書は紹介しています。ボンの殉職は、当時大きな話題を呼んだようです。受話器を握りしめて殉職したボンの指をボスが一本ずつ引き離す場面で、ボンの指だけが放送されたことに石原氏は不満だったようで、つらい上司の顔も一緒に映さないと意味がない、と言っていたそうです。当初はテレビドラマへの出演を不満に思っていた石原氏ですが、ボンの殉職の頃には全力投球してくれていたのだ、と本書は指摘します。
芸能界の話としては、著者が芸能界に入る契機となった文学座の試験に合格した経緯は、なかなか面白いものでした。著者は、本当は筆記試験では合格水準に達していなかったものの、受験生の中で最も身長が高かったため、合格したそうです。その他に、環境問題への取り組みなど、興味深い話もありました。私としては、『太陽にほえろ!』で石原裕次郎氏以外の出演者の話をもっと書いてもらいたかった、とも思うのですが、本書の主題からすると、あまりにも『太陽にほえろ!』の裏話に分量を割くわけにもいかなかったのでしょう。本書の内容について、眉を顰める人は少なくないでしょうし、「和」を大切にする日本文化、といった通俗的な日本文化論に否定的な人もいるでしょう。こうした本が刊行されること自体を嘆く人もいるかもしれませんが、人権を強く侵害するような内容ではなく、インチキ商品を買わせたり、詐欺的な投資を促したりするような内容でなければ、言論の自由はできる限り保障されるべきだろう、と思います。少なくとも本書は、そうした観点から強く批判されるような内容ではないと思います。まあ、『太陽にほえろ!』の裏話を読めたので、かなり評価が甘くなってしまったかもしれませんが。
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