独裁者マドゥロを擁護する「21世紀の社会主義」の無責任
表題の記事を読みました。ベネズエラの政治情勢については、2013年にチャベス前大統領が亡くなった時と(関連記事)、その後の大統領選(関連記事)について当ブログで取り上げました。チャベス大統領の訃報を聞いた時は、後継の大統領は国内運営に苦労しそうだ、と予想しましたが、現実は私の予想をはるかに上回っていました。当ブログでは、もう6年近くベネズエラの政治情勢に関する記事を掲載していませんが、関心を失っていたわけではなく、新聞やネットなどでベネズエラ情勢には注目しており、『B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊』を取り上げたさいに、言及したことがあります(関連記事)。
それは、後期青銅器時代の東地中海地域~メソポタミア地域の「古代グローバル文明」の崩壊のような事態は、政策によっても起きるのではないか、と考えているからです。これに関しては、まだ議論の多そうな「古代グローバル文明」の崩壊よりも、ローマ帝国西方の崩壊(関連記事)の方が想起すべき事例かもしれません。数々の避けられ得る判断の誤りの結果、西ローマ帝国は滅亡した、との見解には説得力があると私は考えていますし、それは近年のベネズエラについてよく当てはまるのではないか、と思います。
もちろん、現代日本社会もとても他人事ではない、との危機感が根底にあります。政策の誤りによる秩序の崩壊は、多くの人々に大きな損害を与える可能性があります。現在のベネズエラのような状況まで行くと、手遅れとまでは言いませんが、引き返すのに多大な苦労と犠牲が伴う可能性は高いでしょう。現代日本社会においても、そうした事態に陥る前に、選挙などで「穏便に」軌道修正していきたいものです。秩序は重要なもので、安易に破壊してよいものではない、と私は考えています。もちろん、秩序が抑圧としても機能することは人間社会にとって普遍的なのでしょうが、だからといって、ある抑圧を課解消できないような秩序は崩壊してしまえばよい、といった言説はあまりにも無責任だと思います。それは、秩序の崩壊により「弱者」も含む多くの人々が苦しむ可能性をまったく考慮していないからです。その意味でも、ベネズエラの現状は現代日本社会にとっても大いに参考になるでしょう。
もっとも、政策の誤りとはいっても、現在のベネズエラの惨状は、単にマドゥロ大統領も継承した「チャベス路線」に全責任を負わせられるようなものではなく、ベネズエラ社会(に限らず、ラテンアメリカ世界に広く共通しているのでしょうが)の根深い問題に起因するものだと思います。その意味で、マドゥロ大統領が退陣して「チャベス路線」の政権が崩壊し、野党が政権を掌握したとしても、事態が急速に改善する可能性は低いでしょう。そうなると、また政権への不満が高まり、現在のような混乱した状況を経て「チャベス路線」の政権が成立する可能性もあります。その意味で、ベネズエラはもう泥沼にはまっているのかもしれませんが、ベネズエラの崩壊は世界経済に多大な悪影響を及ぼす可能性があるので、何とか立ち直ってもらいたいものです。
このような関心のため、私は近年のベネズエラ情勢には一定以上の関心を抱いてきました。そうした中で、表題の記事には考えさせられるところが多々ありました。筆者のブラッドワース氏は、「21世紀の社会主義」にロマンを抱き、その妄想を維持するために、ベネズエラが破滅への道を歩んでいることに見て見ぬふりをし、独裁者の横暴を黙認してきたヨーロッパやアメリカ合衆国の左派を批判していますが、尤もだと思います。「反米(もしくは帝国主義)」や「社会主義」を掲げている相手には視線が甘くなるのでは、冷戦期の言論状況から何を学んでいたのか、と批判されても仕方のないところでしょう。
もちろん、アメリカ合衆国など「反チャベス路線」勢力の「謀略」はあるにしても、ベネズエラの反政府デモ参加者や野党政治家たちを、主体性のないアメリカ資本の人質のように見なしているのは、根底にベネズエラ、さらにはベネズエラに限らず民衆への蔑視があるからだと思います。まあ、「左翼」には今でも「前衛主義」が根強い、ということなのかもしれません。民衆というか衆愚の一人にすぎない私も、「左翼」にとっては当然蔑視の対象なのでしょう。なお、ベネズエラの最近の政治情勢については、表題の記事とともに、以下に引用する日本語アカウントの指摘も参考になると思います。ツリーになっている呟きに関しては、先頭のみ引用します(引用1および引用2および引用3および引用4)。
外国のリベラルがアメリカを批判するためにマドゥロを支持するような、あるいは、そこまでなくても、ベネズエラを引き合いにアメリカを批判しているのを目にすると、ベネズエラ人は、速攻でそれがキューバやチャベス主義者のプロパガンダに乗せられていると「気づく」という話。
なぜなら、ベネズエラ国民はその手の話を毎日朝から晩まで、数十年間、テレビやラジオ、広告などあらゆるところで延々聞かされ続けてるから。カデナという全局同時放送があるときは、テレビをつけると全チャンネルがそういうプロパガンダ一色になる。
チャベス時代のベネズエラは、その手のプロパガンダの海外での流布にかなり多額のお金を実際に出していた。ヨーロッパの左派政党にも資金提供してきた。選挙のときは欧米の大手広告代理店にもお金を出していた。
ベネズエラ人はこうしたプロパガンダの受け手としては専門家であり、その言葉遣い、表現、表現内容にとても敏感だ。だから外国のナイーブなリベラルが、本人は無意識な左派っぽい発言でベネズエラを語るとき、その元が聞き慣れたマドゥロ政権のプロパガンダだとすぐにわかってしまう。
そういう人が「メディアの伝えない真実」とか言ってるのを聞くと、ほとんど哀れだし、鼻で笑いたくもなるけど、とりあえず、あなたはプロパガンダ繰り返してるだけだから、と一応は指摘します。
ベネズエラ人がどんな環境に生きてきたか、ベネズエラ人の生活と政治がいかに一体化してるか、想像つきにくいかもしれない。でも、ベネズエラ人はあなたよりベネズエラ政治に詳しいし、とても敏感なのだということは忘れないようにしたい。
今日のベネズエラの反マドゥロのデモは、大規模というのもあるけれど、ポイントは、いまだかつて反チャベス主義のデモなど起こったことのなかった、田舎の貧しい小さな町でもデモが起きている点。本当にベネズエラ全土で反対運動が起きている。
今マドゥロを支持している人は4%と言われていますが、これでベネズエラは分断されてるとか、マドゥロ派の言い分を五分五分みたいに捉えている人はアホでしょ。圧倒的多数が反対で、ごく少数しかマドゥロの言うことに正当性を見出してないの。
なにこの人たち。「ベネズエラの現政権を支持する日本のリベラル知識人」て、情報に真摯に向かい合うことをためた人たちでは。「ハイパーインフレーションは度重なる経済制裁が理由」の細かなデータってどこから持ってきたんでしょうね?
適当なデマをばらまく人たち。ちゃんと調査もせず、現地の情報を細かくきちんと追うわけでもなく、政府の発表する資料を読むわけでもなく、ただ自分たちのイデオロギーに沿ったことしか受け入れない、頭が死んだみたい人に、「民主主義」とか「リベラル」とか「知識人」の代表面されるの迷惑です
本当に、この「リベラル知識人」とか、この段階でマドゥロ支持とか、脳みそ腐ってるとしか思えない。どれほど大量の情報を遮断すれば、こんな結論になるの。
それは、後期青銅器時代の東地中海地域~メソポタミア地域の「古代グローバル文明」の崩壊のような事態は、政策によっても起きるのではないか、と考えているからです。これに関しては、まだ議論の多そうな「古代グローバル文明」の崩壊よりも、ローマ帝国西方の崩壊(関連記事)の方が想起すべき事例かもしれません。数々の避けられ得る判断の誤りの結果、西ローマ帝国は滅亡した、との見解には説得力があると私は考えていますし、それは近年のベネズエラについてよく当てはまるのではないか、と思います。
もちろん、現代日本社会もとても他人事ではない、との危機感が根底にあります。政策の誤りによる秩序の崩壊は、多くの人々に大きな損害を与える可能性があります。現在のベネズエラのような状況まで行くと、手遅れとまでは言いませんが、引き返すのに多大な苦労と犠牲が伴う可能性は高いでしょう。現代日本社会においても、そうした事態に陥る前に、選挙などで「穏便に」軌道修正していきたいものです。秩序は重要なもので、安易に破壊してよいものではない、と私は考えています。もちろん、秩序が抑圧としても機能することは人間社会にとって普遍的なのでしょうが、だからといって、ある抑圧を課解消できないような秩序は崩壊してしまえばよい、といった言説はあまりにも無責任だと思います。それは、秩序の崩壊により「弱者」も含む多くの人々が苦しむ可能性をまったく考慮していないからです。その意味でも、ベネズエラの現状は現代日本社会にとっても大いに参考になるでしょう。
もっとも、政策の誤りとはいっても、現在のベネズエラの惨状は、単にマドゥロ大統領も継承した「チャベス路線」に全責任を負わせられるようなものではなく、ベネズエラ社会(に限らず、ラテンアメリカ世界に広く共通しているのでしょうが)の根深い問題に起因するものだと思います。その意味で、マドゥロ大統領が退陣して「チャベス路線」の政権が崩壊し、野党が政権を掌握したとしても、事態が急速に改善する可能性は低いでしょう。そうなると、また政権への不満が高まり、現在のような混乱した状況を経て「チャベス路線」の政権が成立する可能性もあります。その意味で、ベネズエラはもう泥沼にはまっているのかもしれませんが、ベネズエラの崩壊は世界経済に多大な悪影響を及ぼす可能性があるので、何とか立ち直ってもらいたいものです。
このような関心のため、私は近年のベネズエラ情勢には一定以上の関心を抱いてきました。そうした中で、表題の記事には考えさせられるところが多々ありました。筆者のブラッドワース氏は、「21世紀の社会主義」にロマンを抱き、その妄想を維持するために、ベネズエラが破滅への道を歩んでいることに見て見ぬふりをし、独裁者の横暴を黙認してきたヨーロッパやアメリカ合衆国の左派を批判していますが、尤もだと思います。「反米(もしくは帝国主義)」や「社会主義」を掲げている相手には視線が甘くなるのでは、冷戦期の言論状況から何を学んでいたのか、と批判されても仕方のないところでしょう。
もちろん、アメリカ合衆国など「反チャベス路線」勢力の「謀略」はあるにしても、ベネズエラの反政府デモ参加者や野党政治家たちを、主体性のないアメリカ資本の人質のように見なしているのは、根底にベネズエラ、さらにはベネズエラに限らず民衆への蔑視があるからだと思います。まあ、「左翼」には今でも「前衛主義」が根強い、ということなのかもしれません。民衆というか衆愚の一人にすぎない私も、「左翼」にとっては当然蔑視の対象なのでしょう。なお、ベネズエラの最近の政治情勢については、表題の記事とともに、以下に引用する日本語アカウントの指摘も参考になると思います。ツリーになっている呟きに関しては、先頭のみ引用します(引用1および引用2および引用3および引用4)。
外国のリベラルがアメリカを批判するためにマドゥロを支持するような、あるいは、そこまでなくても、ベネズエラを引き合いにアメリカを批判しているのを目にすると、ベネズエラ人は、速攻でそれがキューバやチャベス主義者のプロパガンダに乗せられていると「気づく」という話。
なぜなら、ベネズエラ国民はその手の話を毎日朝から晩まで、数十年間、テレビやラジオ、広告などあらゆるところで延々聞かされ続けてるから。カデナという全局同時放送があるときは、テレビをつけると全チャンネルがそういうプロパガンダ一色になる。
チャベス時代のベネズエラは、その手のプロパガンダの海外での流布にかなり多額のお金を実際に出していた。ヨーロッパの左派政党にも資金提供してきた。選挙のときは欧米の大手広告代理店にもお金を出していた。
ベネズエラ人はこうしたプロパガンダの受け手としては専門家であり、その言葉遣い、表現、表現内容にとても敏感だ。だから外国のナイーブなリベラルが、本人は無意識な左派っぽい発言でベネズエラを語るとき、その元が聞き慣れたマドゥロ政権のプロパガンダだとすぐにわかってしまう。
そういう人が「メディアの伝えない真実」とか言ってるのを聞くと、ほとんど哀れだし、鼻で笑いたくもなるけど、とりあえず、あなたはプロパガンダ繰り返してるだけだから、と一応は指摘します。
ベネズエラ人がどんな環境に生きてきたか、ベネズエラ人の生活と政治がいかに一体化してるか、想像つきにくいかもしれない。でも、ベネズエラ人はあなたよりベネズエラ政治に詳しいし、とても敏感なのだということは忘れないようにしたい。
今日のベネズエラの反マドゥロのデモは、大規模というのもあるけれど、ポイントは、いまだかつて反チャベス主義のデモなど起こったことのなかった、田舎の貧しい小さな町でもデモが起きている点。本当にベネズエラ全土で反対運動が起きている。
今マドゥロを支持している人は4%と言われていますが、これでベネズエラは分断されてるとか、マドゥロ派の言い分を五分五分みたいに捉えている人はアホでしょ。圧倒的多数が反対で、ごく少数しかマドゥロの言うことに正当性を見出してないの。
なにこの人たち。「ベネズエラの現政権を支持する日本のリベラル知識人」て、情報に真摯に向かい合うことをためた人たちでは。「ハイパーインフレーションは度重なる経済制裁が理由」の細かなデータってどこから持ってきたんでしょうね?
適当なデマをばらまく人たち。ちゃんと調査もせず、現地の情報を細かくきちんと追うわけでもなく、政府の発表する資料を読むわけでもなく、ただ自分たちのイデオロギーに沿ったことしか受け入れない、頭が死んだみたい人に、「民主主義」とか「リベラル」とか「知識人」の代表面されるの迷惑です
本当に、この「リベラル知識人」とか、この段階でマドゥロ支持とか、脳みそ腐ってるとしか思えない。どれほど大量の情報を遮断すれば、こんな結論になるの。
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