進化否定論者は「まともな人間」ではないのか
以前、私のTwitter上での発言を引用して、
人間は猿から進化したことを否定する人間がいまだにいるとは驚いた。人間というか正確を期すならヒト科だが、むろん進化した元の種も猿というか正確を期すなら霊長目に属することは周知の事実。
と発言した人がいました。過疎アカウントにしては珍しい通知なので、進化否定論者は珍しくないので別に驚くようなことではなく、(進化否定論の根強い)アメリカ合衆国の事情は日本でもよく知られていると思います、と調査(Miller et al., 2006)を引用して返信したところ、
エホバの証人とかファンダメンタリストのことは存じてますが、アレはまともな人間だとは思っておりませんので。
と返信がありました。そこで私は、ムスリムの間でも進化否定論が多いと日本でもよく言われているように思いますし、(引用した調査では)じっさい(ムスリムが圧倒的に主流の)トルコ共和国ではアメリカ合衆国よりもさらに進化否定論の割合が高いわけですが、と返信しました。「まともな人間」ではないと主張したのはエホバの証人やファンダメンタリストであってムスリムではない、との言い逃れは可能だ、との意見もあるかもしれません。しかし、進化否定論者の存在に驚いてみせて、進化否定論者はアメリカ合衆国では珍しくないとの指摘にたいして、アメリカ合衆国における進化否定論者の代表的存在というか、その割合がきわめて高そうなエホバの証人やファンダメンタリストを挙げて、「まともな人間だとは思っておりません」とまで言ったわけですから、上記引用文の発言主は進化否定論者を「まともな人間」とは思っていない、と判断するのが妥当なところでしょう。
これは、近年のリベラリズムも含む近代以降のヨーロッパ的価値観とイスラム教的価値観との共存といった大問題(関連記事)にもつながっていると思うのですが、私の現在の見識・能力ではとても的確な解決策を提示できません(将来もまず間違いなく無理でしょうが)。そもそも、私も進化否定論を受け入れるつもりはまったくありませんが、進化否定論自体は、基本的に「まともな人間」ではないことの指標にはなり得ない、と考えています。進化否定論は直接的に人権を否定するわけではない、と私は考えているからです。エホバの証人やファンダメンタリストの世界観・価値観に問題があるとは思いますが(反中絶など)、それを言えば、イスラム教をはじめとして「(近代以降のヨーロッパ的価値観からは)問題のある」信仰・思想の人はおそらく多数いるわけで、そうした人々も対等で「まともな」相手と認めて、説得や共存を図るのが、思想・信仰の違いにより多くの人々が殺されてきた歴史を知る現代人の取るべき態度ではないか、と思います。
なお、進化学への攻撃に関して近年では、「宗教右派」からだけではなく、「左派」からの攻撃もある、と指摘されています(関連記事)。「宗教右派」による進化学攻撃に関しては、広範な支持とそれに裏づけされた資金力や政治力といった問題があり、とても軽視できません。一方、「左派」からの進化学攻撃に関しては、アカデミズムの世界に確たる基盤を築いていることから、「宗教右派」とは違った意味で困難な問題であるとは思います。まあ「左派」に言わせれば、進化学の「一部」はIDW(Intellectual Dark Web)として差別の温床になっており、それを的確に批判しているだけなのだ、ということなのかもしれませんが(関連記事)。
参考文献:
Miller JD, Parker D, and Pope M.(2006): Public Acceptance of Evolution. Science, 313, 5788, 765-766.
https://doi.org/10.1126/science.1126746
人間は猿から進化したことを否定する人間がいまだにいるとは驚いた。人間というか正確を期すならヒト科だが、むろん進化した元の種も猿というか正確を期すなら霊長目に属することは周知の事実。
と発言した人がいました。過疎アカウントにしては珍しい通知なので、進化否定論者は珍しくないので別に驚くようなことではなく、(進化否定論の根強い)アメリカ合衆国の事情は日本でもよく知られていると思います、と調査(Miller et al., 2006)を引用して返信したところ、
エホバの証人とかファンダメンタリストのことは存じてますが、アレはまともな人間だとは思っておりませんので。
と返信がありました。そこで私は、ムスリムの間でも進化否定論が多いと日本でもよく言われているように思いますし、(引用した調査では)じっさい(ムスリムが圧倒的に主流の)トルコ共和国ではアメリカ合衆国よりもさらに進化否定論の割合が高いわけですが、と返信しました。「まともな人間」ではないと主張したのはエホバの証人やファンダメンタリストであってムスリムではない、との言い逃れは可能だ、との意見もあるかもしれません。しかし、進化否定論者の存在に驚いてみせて、進化否定論者はアメリカ合衆国では珍しくないとの指摘にたいして、アメリカ合衆国における進化否定論者の代表的存在というか、その割合がきわめて高そうなエホバの証人やファンダメンタリストを挙げて、「まともな人間だとは思っておりません」とまで言ったわけですから、上記引用文の発言主は進化否定論者を「まともな人間」とは思っていない、と判断するのが妥当なところでしょう。
これは、近年のリベラリズムも含む近代以降のヨーロッパ的価値観とイスラム教的価値観との共存といった大問題(関連記事)にもつながっていると思うのですが、私の現在の見識・能力ではとても的確な解決策を提示できません(将来もまず間違いなく無理でしょうが)。そもそも、私も進化否定論を受け入れるつもりはまったくありませんが、進化否定論自体は、基本的に「まともな人間」ではないことの指標にはなり得ない、と考えています。進化否定論は直接的に人権を否定するわけではない、と私は考えているからです。エホバの証人やファンダメンタリストの世界観・価値観に問題があるとは思いますが(反中絶など)、それを言えば、イスラム教をはじめとして「(近代以降のヨーロッパ的価値観からは)問題のある」信仰・思想の人はおそらく多数いるわけで、そうした人々も対等で「まともな」相手と認めて、説得や共存を図るのが、思想・信仰の違いにより多くの人々が殺されてきた歴史を知る現代人の取るべき態度ではないか、と思います。
なお、進化学への攻撃に関して近年では、「宗教右派」からだけではなく、「左派」からの攻撃もある、と指摘されています(関連記事)。「宗教右派」による進化学攻撃に関しては、広範な支持とそれに裏づけされた資金力や政治力といった問題があり、とても軽視できません。一方、「左派」からの進化学攻撃に関しては、アカデミズムの世界に確たる基盤を築いていることから、「宗教右派」とは違った意味で困難な問題であるとは思います。まあ「左派」に言わせれば、進化学の「一部」はIDW(Intellectual Dark Web)として差別の温床になっており、それを的確に批判しているだけなのだ、ということなのかもしれませんが(関連記事)。
参考文献:
Miller JD, Parker D, and Pope M.(2006): Public Acceptance of Evolution. Science, 313, 5788, 765-766.
https://doi.org/10.1126/science.1126746
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