よくもわるくも中国人はもともと「アジア」や「東アジア」といった語は好まない

 杉山正明氏関連の記事をまとめようとして、かつて当ブログで表題の一節を引用していた(関連記事)、と思い出しました。それと関連した調査をどこかで見かけた記憶があるのですが、今回見つけた論文(上ノ原.,2013)で引用されている調査がそうだったのか、はっきりとは思い出せませんでした。ただ、杉山氏の指摘を裏づける調査結果ではあると思います。本論文は、中華人民共和国・日本国・大韓民国・中華民国(台湾)というアジア東部4ヶ国を対象とした、国民意識と「東アジア人」意識の割合の調査が引用されています(かなり愛着とある程度愛着に区分されています)。調査自体は2008年とやや古いのですが、今でも参考にはなると思います。

 4ヶ国すべてで共通しているのは、国民意識よりも東アジア人意識の方がずっと低い、ということです。また、国民意識よりも東アジア人意識の方が、4ヶ国の差はずっと大きくなっています。国民意識は4ヶ国すべてで高く、中国(かなり愛着は48%、ある程度愛着は45%)と日本(かなり愛着は52%、ある程度愛着は44%)はかなり類似しています。韓国(かなり愛着は35%、ある程度愛着は53%)と台湾(かなり愛着は40%、ある程度愛着は48%)は日中よりもやや低いものの、それでも高水準になっています。一方、東アジア人意識の方は4ヶ国とも国民意識よりずっと低いのですが、日本(かなり愛着は4%、ある程度愛着は28%)と韓国(かなり愛着は4%、ある程度愛着は37%)は比較的高めなのにたいして、中国(かなり愛着は2%、ある程度愛着は8%)と台湾(かなり愛着は1%、ある程度愛着は10%)はかなり低くなっています。杉山氏は、「アジア」が好きなのは日本であって中国ではない、と指摘していますが、それは一定水準以上妥当なのかもしれません。以下、杉山氏関連の当ブログの記事です。


杉山正明『興亡の世界史09 モンゴル帝国と長いその後』
https://sicambre.seesaa.net/article/200803article_16.html

『興亡の世界史20 人類はどこへ行くのか』
https://sicambre.seesaa.net/article/200905article_7.html

杉山正明『ユーラシアの東西』
https://sicambre.seesaa.net/article/201104article_24.html

杉山正明氏の明・朱元璋にたいする評価
https://sicambre.seesaa.net/article/201106article_5.html

杉山正明『中国の歴史08 疾駆する草原の征服者』
https://sicambre.seesaa.net/article/201310article_29.html


参考文献:
上ノ原秀晃(2013)「東アジアにおけるトランスナショナル・アイデンティティ」『日本版総合的社会調査共同研究拠点研究論文集』[13]P93-104
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009561594

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