Menno Schilthuizen「都市が変える生物進化」

 『日経サイエンス』2018年12月号の特集「新・人類学 ヒトはなぜ人間になったのか」第3部「明日の姿」に掲載された解説です。本論文は、都市が進化の「圧力鍋」となっており、都市では素早く徹底的な適応が強いられる、と指摘しています。確かに、都市化も環境変化の一種であり、都市化が選択圧となることは、進化学において容易に予想されますが、それを実証することがやはり重要で、たいへん意義深いと思います。

 本論文は、都市環境における急速な進化の事例として、カタツムリ・クモ・タンポポなどを挙げています。たとえばカタツムリの殻は、都市におけるヒートアイランド現象への適応としても殻の色が薄くなっており、これは黒っぽい色の殻では熱エネルギーの吸収効率が高まってしまうからです。またブリッジスパイダーは夜行性ですが、街灯が餌となる昆虫を引き寄せるため、人工光を生まれつき好むようになりました。しかし一方で、ブリッジスパイダーは日光を依然として避けているそうです。このように、生物は都市に適応していっていますが、本論文は、「成功」事例の背後には絶滅事例がその10倍ほどあるのではないか、と指摘しています。


参考文献:
Schilthuizen M. (2018)、『日経サイエンス』編集部訳「都市が変える生物進化」『日経サイエンス』2018年12月号P82-87

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