ピンタゾウガメの巨体と長寿の遺伝的基盤
ピンタゾウガメ(Chelonoidis abingdonii)の巨体と長寿の遺伝的基盤に関する研究(Quesada et al., 2019)が公表されました。「孤独なジョージ(Lonesome George)」と呼ばれたピンタゾウガメは2012年に死亡し、これによりガラパゴス諸島のピンタゾウガメは絶滅した、と考えられています。この研究は、「孤独なジョージ」とアルダブラゾウガメ(Aldabrachelys gigantea)1頭のゲノムを解析しました。アルダブラゾウガメは、インド洋に生息する唯一のゾウガメ種です。両者のゲノムを近縁種と比較した結果、代謝調節と免疫応答に関係する遺伝子ファミリーの正の選択、および増加を示す証拠が見いだされました。この研究は、これらの遺伝子ファミリーがゾウガメの巨体と長寿に関係している可能性がある、と示唆しています。
寿命が長い生物は理論的に癌のリスクが高くなります。この研究は、カメの腫瘍抑制遺伝子が他の脊椎動物よりも多くなっていることに加えて、過剰発現が癌の一因になると知られている2つの遺伝子の、ゾウガメ特異的な変化を明らかにしました。こうした知見はゾウガメ特異的な癌の機序を示している可能性があるものの、カメでは腫瘍が極めてまれであるため、このようなゲノムの特徴が腫瘍の発生と関係しているかを明らかにするには、さらに研究を進める必要があります。この研究は、これらのデータがゾウガメ生物学の理解を進展させる一助になるとともに、ガラパゴス諸島の他のゾウガメを保護する活動に役立つだろう、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
ロンサム・ジョージの巨体と長寿はゲノムのたまもの
「ロンサム(孤独な)・ジョージ」を含む2頭のゾウガメのゲノムから、その体のサイズと長寿に関する洞察が得られたことを報告する論文が、今週掲載される。
ロンサム・ジョージは、すでに絶滅したガラパゴス諸島のピンタゾウガメ(Chelonoidis abingdonii)を象徴する最後の個体であった。
今回Carlos Lopez-Otin、Adalgisa Cacconeたちの研究グループは、ロンサム・ジョージおよびアルダブラゾウガメ(Aldabrachelys gigantea)1頭のゲノム塩基配列を解読した。アルダブラゾウガメは、インド洋に生息する唯一のゾウガメ種である。両者のゲノムを近縁種と比較した結果、代謝調節と免疫応答に関係する遺伝子ファミリーの正の選択、および増加を示す証拠が見いだされた。研究グループは、これらの遺伝子ファミリーがゾウガメの巨体と長寿に関係している可能性があることを示唆している。
寿命が長い生物は理論的にがんのリスクが高くなる。研究グループは、カメの腫瘍抑制遺伝子が他の脊椎動物よりも多くなっていることに加え、過剰発現ががんの一因となることが知られている2つの遺伝子のゾウガメ特異的な変化を明らかにした。こうした知見はゾウガメ特異的ながんの機序を示している可能性があるが、カメでは腫瘍が極めてまれであるため、このようなゲノムの特徴が腫瘍の発生と関係しているかを明らかにするには、さらに研究を進める必要がある。
著者たちは、今回のデータがゾウガメ生物学の理解を進展させる一助になるとともに、ガラパゴス諸島の他のゾウガメを保護する活動に役立つだろう、としている。
参考文献:
Quesada V. et al.(2019): Giant tortoise genomes provide insights into longevity and age-related disease. Nature Ecology & Evolution, 3, 1, 87–95.
https://doi.org/10.1038/s41559-018-0733-x
寿命が長い生物は理論的に癌のリスクが高くなります。この研究は、カメの腫瘍抑制遺伝子が他の脊椎動物よりも多くなっていることに加えて、過剰発現が癌の一因になると知られている2つの遺伝子の、ゾウガメ特異的な変化を明らかにしました。こうした知見はゾウガメ特異的な癌の機序を示している可能性があるものの、カメでは腫瘍が極めてまれであるため、このようなゲノムの特徴が腫瘍の発生と関係しているかを明らかにするには、さらに研究を進める必要があります。この研究は、これらのデータがゾウガメ生物学の理解を進展させる一助になるとともに、ガラパゴス諸島の他のゾウガメを保護する活動に役立つだろう、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
ロンサム・ジョージの巨体と長寿はゲノムのたまもの
「ロンサム(孤独な)・ジョージ」を含む2頭のゾウガメのゲノムから、その体のサイズと長寿に関する洞察が得られたことを報告する論文が、今週掲載される。
ロンサム・ジョージは、すでに絶滅したガラパゴス諸島のピンタゾウガメ(Chelonoidis abingdonii)を象徴する最後の個体であった。
今回Carlos Lopez-Otin、Adalgisa Cacconeたちの研究グループは、ロンサム・ジョージおよびアルダブラゾウガメ(Aldabrachelys gigantea)1頭のゲノム塩基配列を解読した。アルダブラゾウガメは、インド洋に生息する唯一のゾウガメ種である。両者のゲノムを近縁種と比較した結果、代謝調節と免疫応答に関係する遺伝子ファミリーの正の選択、および増加を示す証拠が見いだされた。研究グループは、これらの遺伝子ファミリーがゾウガメの巨体と長寿に関係している可能性があることを示唆している。
寿命が長い生物は理論的にがんのリスクが高くなる。研究グループは、カメの腫瘍抑制遺伝子が他の脊椎動物よりも多くなっていることに加え、過剰発現ががんの一因となることが知られている2つの遺伝子のゾウガメ特異的な変化を明らかにした。こうした知見はゾウガメ特異的ながんの機序を示している可能性があるが、カメでは腫瘍が極めてまれであるため、このようなゲノムの特徴が腫瘍の発生と関係しているかを明らかにするには、さらに研究を進める必要がある。
著者たちは、今回のデータがゾウガメ生物学の理解を進展させる一助になるとともに、ガラパゴス諸島の他のゾウガメを保護する活動に役立つだろう、としている。
参考文献:
Quesada V. et al.(2019): Giant tortoise genomes provide insights into longevity and age-related disease. Nature Ecology & Evolution, 3, 1, 87–95.
https://doi.org/10.1038/s41559-018-0733-x
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