ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』10話~14話

 ファミリー劇場でHDリマスター版『太陽にほえろ!』の再放送が1話から始まりましたので、まだ当ブログで取り上げていなかった話の感想を掲載していきます。


10話「ハマッ子刑事の心意気」9
 山さんとゴリさんは横浜に行き、強烈な個性の若手刑事と共に捜査に当たります。この若手刑事を演じるのは沖雅也氏なのですが、後のスコッチ刑事とは別人です。この頃はまだ始まったばかりで、5年くらいは当初のレギュラーメンバーで続ける予定だった、とどこかで読んだ記憶があるので、もちろん今回のゲストの沖雅也氏はテスト出演ではありません。本作において後のレギュラーが別人役で出演した事例としては、テスト出演を除けば、他に久美ちゃんとトシさんがありますが、今回とは異なりいずれも犯人役です。話の方は、当初の敵対的関係から最後の信頼関係へと至る過程が描かれ、王道的です。何よりも、沖雅也氏演じる若手刑事のキャラが立っていて、楽しめました。改めて、沖雅也氏が若くして亡くなったのは残念だと思ったものです。


11話「愛すればこそ」8
 この後4年近くたびたび登場することになる山さんの妻が、初めて登場します。山さんの設定が初期の時点でどの程度固まっていたのか、知りませんが、妻が心臓の持病持ちで、愛妻家であることは初期から変わりません。山さんは、出所してきた男性を尾行します。男性はかつて、妻の浮気相手を刺し、妻も殺そうとしました。山さんは、男の様子を不審に思い、妻が病院に運ばれて危険な手術を受けるような状態にも関わらず、尾行を続けます。話の方はかなり忘れており、太地喜和子氏がゲストで出演していたことも覚えていなかったくらいですが、マカロニが山さんの妻に想いを寄せるような描写があったことは鮮明に記憶に残っていました。出所した夫とその夫に狙われる妻、刑事であることを優先する山さんとその妻という、二組の夫婦(山さん夫婦とちがってもう一組は法的には離婚していますが)を対比的に描きつつ、夫婦の在り様という普遍的な話題を扱っており、大人向けの話になっていると思います。若者向けの青春ものといった感じで始まった本作ですが、こうした話も取り入れていったことが、長寿ドラマとなった一因でしょうか。


12話「彼は立派な刑事だった」7
 暴力団の組長候補だった幹部が殺されます。ボスに偶然助けられたチンピラの、不動産屋が怪しいとのタレコミを受けて一係は不動産屋を捜査しますが、証拠は出てきません。一係は、警察内部に情報をもらした人物がいるのではないか、と疑います。その人物とは、捜査二係の係長でした。この係長を演じたのは平田昭彦氏で、後に長く七曲署の署長を演じることになります。久美ちゃんやトシさんと同じく、犯罪者で別人役を演じていながら、後に(セミ)レギュラーになったわけです。話の方は、ボスとチンピラの偶然の出会いが上手く取り入られ、まずまず面白くなっていました。


13話「殺したいあいつ」9
 シンコのパトロールに付き合っていたマカロニは、意識が朦朧としていた女性を保護し、女性はめし屋の宗吉で働くことになります。女性の夫と名乗る男性が現れ、謎めいた展開になっていて、まずまず面白い話でした。もっとも、今回の主題は謎解きではなく、若手刑事としてのマカロニの苦悩で、若者の焦燥・迷走・暴走を描いた普遍的な話になっています。このマカロニの苦悩と宗吉の過去を絡めて話が展開し、なかなか工夫されていると思います。かつて、犯人を追っていて本気で殺そうとしてしまった宗吉は、刑事を辞めます。マカロニが自分のようにならずにすんだことで、宗吉は心から安堵します。この宗吉の過去は、この後、宗吉の出番が減ったことでほとんど活かされず、残念でした。ただ、ジーパン殉職回ではこの設定が重要な役割を果たしており、それだけでも宗吉の過去の設定には大きな意味があったかな、とも思います。


14話「そして拳銃に弾をこめた」6
 拳銃に弾丸を込めないというゴリさんの設定が初めて本格的に描かれましたが、これはさすがに無理のある設定だなあ、と初視聴時には思ったものです。この設定は後にも何度か描かれましたが、もう忘れられているのではないか、と思うような描写も後に度々あったと記憶しています。ゴリさんが拳銃の名手で短気という設定と関連しているわけですが、率直に言って、この設定は失敗だったかな、と思います。話の方は、ゴリさんと殺された女性との親密なところも描かれ、ほろ苦い話になっています。最初期のゴリさんは、マカロニ・殿下とともに若手組といった感じの位置づけでしたから、後に本作の定番となる若手刑事の悲恋ものとしての性格もあるように思います。

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