恐竜から始まった色付き卵
現生鳥類の色付き卵の起源に関する研究(Wiemann et al., 2018)が報道されました。現生の卵生有羊膜類(鳥類・爬虫類・卵生哺乳類)のうち、色付き卵を産むのは鳥類だけで、たとえば現生ワニ類は無地で白い卵を産みます。有色卵は鳥類の新機軸だと長年考えられてきましたが、最近の研究では、鳥類の色付き卵に用いられているプロトポルフィリン(赤褐色)とビリベルジン(青緑色)の色素と同じものが、特定の恐竜の卵殻化石において同定されました。しかし、鳥類が卵の着色法を祖先の恐竜から受け継いだのか、卵殻の着色法を独立して進化させたのかは明らかになっていません。
この研究は、恐竜の全ての主要分類群の代表例が含まれる一連の卵殻化石をラマン分光法により分析し、鳥類の卵に色をもたらす2種類の色素の証拠を探しました。その結果、全てのマニラプトル類(羽毛恐竜であることが多い小型の二足歩行恐竜)の卵殻に保存されていた色素の痕跡が発見され、さらにその精密なマップの作製によって、点状や斑状のパターンがあり、卵の色模様の多様性は現生鳥類のそれに匹敵する、と明らかになりました。この研究は、これらの色素が現生鳥類の卵の色素と同じように恐竜の卵に沈着していた、と特定しました。
これに対して、鳥類の近縁種の中では遠い関係にある鳥盤類(トリケラトプスなど)と竜脚類(ディプロドクスなど)の卵殻には色素沈着が見られず、これらの恐竜の卵は卵殻が化石化する過程で退色したわけではなく、もともと無地だったと確認されました。以上の知見を考え合わせると、色付き卵は、鳥に似た獣脚類においてたった一度の進化で生じ、これらの色素が現代まで続いている、と示唆されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【進化】色付き卵は恐竜から始まった
色付き卵はたった一度の進化によって生じたものであり、現生鳥類の卵殻の色素沈着法は、その祖先の恐竜の時にすでに成立していたことを報告する論文が、今週掲載される。
現生有羊膜類(鳥類、爬虫類、卵生哺乳類)のうち、色付き卵を産むのは鳥類だけである。最近の研究で、鳥類の色付き卵に用いられている赤褐色と青緑色の色素と同じものが、特定の恐竜の卵殻化石において同定された。しかし、鳥類が卵の着色法を祖先の恐竜から受け継いだのか、卵殻の着色法を独立して進化させたのかは明らかになっていない。
今回、Jasmina Wiemannたちの研究グループはこの問題に取り組むため、恐竜の全ての主要分類群の代表例が含まれる一連の卵殻化石をラマン分光法を用いて分析し、色素沈着の証拠を探した。その結果、全てのマニラプトル類(小型の二足歩行恐竜で、羽毛恐竜であることが多い)の卵殻に保存されていた色素の痕跡が発見され、さらにその精密なマップの作製によって点状や斑状のパターンがあることが判明した。Wiemannたちは、これらの色素が現生鳥類の卵の色素と同じように恐竜の卵に沈着していたことを特定している。
これに対して、鳥類の近縁種の中では遠い関係にある鳥盤類(トリケラトプスなど)と竜脚類(ディプロドクスなど)の卵殻には色素沈着が見られず、これらの恐竜の卵は卵殻が化石化する過程で退色したわけではなく、もともと無地だったことが確認された。以上の知見を考え合わせると、色付き卵は、鳥に似た獣脚類においてたった一度の進化で生じ、これらの色素が現代まで続いていることが示唆される。
古生物学:恐竜の卵の色は単一の進化的起源を持つ
古生物学:恐竜の卵の色と模様
マニラプトル類恐竜(羽毛をまとっていることの多い小型の二足歩行恐竜類で、鳥類を含む)の多くは、斑点模様のある卵を産んでいた。一方、鳥類との類縁関係がより遠い恐竜類(竜脚類や鳥盤類など)では卵にこうした模様の形成は認められず、また、現生ワニ類の卵は無地で白い。一部の恐竜の卵には色があったことを示したこれまでの研究結果を基に、今回J Wiemannたちは対象とする種数および解析技術の幅を広げ、卵殻の断片をラマン分光法によりマッピングすることで、鳥類の卵に色をもたらす2種類の色素であるプロトポルフィリン(赤褐色)とビリベルジン(青緑色)の分解生成物の存在を示している。現生の全ての卵生四肢類のうち、有色卵を産むのは鳥類のみである。この研究によって、卵の着色の起源がはるか昔にさかのぼることが明らかになった。今回用いられた技術は、化石証拠から恐竜の生活習性に関してさらに多くの情報を引き出す上で、極めて有用である可能性がある。
鮮やかな色と斑点模様を有するクロウタドリの卵。今回、有色卵を産むという鳥類の特徴が、祖先である非鳥類型恐竜から受け継いだものであることが示された。
参考文献:
Wiemann J, Yang TR, and Norell MA.(2018): Dinosaur egg colour had a single evolutionary origin. Nature, 563, 7732, 555–558.
https://doi.org/10.1038/s41586-018-0646-5
この研究は、恐竜の全ての主要分類群の代表例が含まれる一連の卵殻化石をラマン分光法により分析し、鳥類の卵に色をもたらす2種類の色素の証拠を探しました。その結果、全てのマニラプトル類(羽毛恐竜であることが多い小型の二足歩行恐竜)の卵殻に保存されていた色素の痕跡が発見され、さらにその精密なマップの作製によって、点状や斑状のパターンがあり、卵の色模様の多様性は現生鳥類のそれに匹敵する、と明らかになりました。この研究は、これらの色素が現生鳥類の卵の色素と同じように恐竜の卵に沈着していた、と特定しました。
これに対して、鳥類の近縁種の中では遠い関係にある鳥盤類(トリケラトプスなど)と竜脚類(ディプロドクスなど)の卵殻には色素沈着が見られず、これらの恐竜の卵は卵殻が化石化する過程で退色したわけではなく、もともと無地だったと確認されました。以上の知見を考え合わせると、色付き卵は、鳥に似た獣脚類においてたった一度の進化で生じ、これらの色素が現代まで続いている、と示唆されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【進化】色付き卵は恐竜から始まった
色付き卵はたった一度の進化によって生じたものであり、現生鳥類の卵殻の色素沈着法は、その祖先の恐竜の時にすでに成立していたことを報告する論文が、今週掲載される。
現生有羊膜類(鳥類、爬虫類、卵生哺乳類)のうち、色付き卵を産むのは鳥類だけである。最近の研究で、鳥類の色付き卵に用いられている赤褐色と青緑色の色素と同じものが、特定の恐竜の卵殻化石において同定された。しかし、鳥類が卵の着色法を祖先の恐竜から受け継いだのか、卵殻の着色法を独立して進化させたのかは明らかになっていない。
今回、Jasmina Wiemannたちの研究グループはこの問題に取り組むため、恐竜の全ての主要分類群の代表例が含まれる一連の卵殻化石をラマン分光法を用いて分析し、色素沈着の証拠を探した。その結果、全てのマニラプトル類(小型の二足歩行恐竜で、羽毛恐竜であることが多い)の卵殻に保存されていた色素の痕跡が発見され、さらにその精密なマップの作製によって点状や斑状のパターンがあることが判明した。Wiemannたちは、これらの色素が現生鳥類の卵の色素と同じように恐竜の卵に沈着していたことを特定している。
これに対して、鳥類の近縁種の中では遠い関係にある鳥盤類(トリケラトプスなど)と竜脚類(ディプロドクスなど)の卵殻には色素沈着が見られず、これらの恐竜の卵は卵殻が化石化する過程で退色したわけではなく、もともと無地だったことが確認された。以上の知見を考え合わせると、色付き卵は、鳥に似た獣脚類においてたった一度の進化で生じ、これらの色素が現代まで続いていることが示唆される。
古生物学:恐竜の卵の色は単一の進化的起源を持つ
古生物学:恐竜の卵の色と模様
マニラプトル類恐竜(羽毛をまとっていることの多い小型の二足歩行恐竜類で、鳥類を含む)の多くは、斑点模様のある卵を産んでいた。一方、鳥類との類縁関係がより遠い恐竜類(竜脚類や鳥盤類など)では卵にこうした模様の形成は認められず、また、現生ワニ類の卵は無地で白い。一部の恐竜の卵には色があったことを示したこれまでの研究結果を基に、今回J Wiemannたちは対象とする種数および解析技術の幅を広げ、卵殻の断片をラマン分光法によりマッピングすることで、鳥類の卵に色をもたらす2種類の色素であるプロトポルフィリン(赤褐色)とビリベルジン(青緑色)の分解生成物の存在を示している。現生の全ての卵生四肢類のうち、有色卵を産むのは鳥類のみである。この研究によって、卵の着色の起源がはるか昔にさかのぼることが明らかになった。今回用いられた技術は、化石証拠から恐竜の生活習性に関してさらに多くの情報を引き出す上で、極めて有用である可能性がある。
鮮やかな色と斑点模様を有するクロウタドリの卵。今回、有色卵を産むという鳥類の特徴が、祖先である非鳥類型恐竜から受け継いだものであることが示された。
参考文献:
Wiemann J, Yang TR, and Norell MA.(2018): Dinosaur egg colour had a single evolutionary origin. Nature, 563, 7732, 555–558.
https://doi.org/10.1038/s41586-018-0646-5
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