角のない雄ジカはオオカミに狙われやすい
雄のアメリカアカシカの角の機能に関する研究(Metz et al., 2018)が公表されました。雄のアメリカアカシカは、交尾期間が過ぎた後2~3ヶ月で角を落とします。新しい角はすぐに成長し始め、次の交尾期に競合相手の雄に対する武器として使えるようになります。大きな角は競合相手に対する優位性につながり、交尾の機会を増やせるので、早く角を落とせば次の交尾期までにより大きな角を生やすことができるにも関わらず、雄ジカが角を落とすタイミングはさまざまです。
この研究は、アメリカ合衆国イエローストーン国立公園で雄のアカシカを13年にわたって観察し、角を早く落とすことに未知のコストがあるのか、調べました。その結果、雄ジカの群れは、角のない個体が1頭でもいるとオオカミの襲撃を10倍受けやすくなる、と明らかになりました。オオカミが狙いやすいのは圧倒的に角のない個体の方であるため、アカシカ個体群内の角のない個体は健康状態が良いにもかかわらず、落命するリスクが高くなっていました。
この知見から、角は、配偶者を巡る競争で武器として使われる他に、捕食者に対する抑止という第二の機能を果たしている、と示唆されます。しかし、角を生え替わらせる必要性により、この二つの機能の間にトレードオフが生じ、これがアカシカの進化に影響を与えた、と考えられます。こうしたトレードオフの問題は、進化史において一般的と言え、雄のアメリカアカシカの角もその一例というわけです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
落角期はシカにとって死活問題
角のない雄ジカがオオカミに狙われやすいことを明らかにした論文が、今週掲載される。このことはシカにとって問題となる。早く角を落としたシカは、再び角が生えると次の交尾の可能性が高まる一方で、捕食者に対する防御力を失っているのである。
雄のアメリカアカシカ(北米のシカの1種)は、交尾期間が過ぎた後2~3カ月で角を落とす。新しい角はすぐに成長し始め、次の交尾期にライバルの雄に対する武器として使えるようになる。早く角を落とせば次の交尾期までにより大きな角を生やすことができるにもかかわらず、雄ジカが角を落とすタイミングはさまざまである。大きな角はライバルに対する優位性につながり、交尾の機会を増やせるのに、である。
Matthew Metzたちは、米国イエローストーン国立公園で雄のアカシカを13年にわたって観察し、角を早く落とすことに未知のコストがあるのかを調べた。その結果、雄ジカの群れは、角のない個体が1頭でもいるとオオカミの襲撃を10倍受けやすくなることが明らかになった。オオカミが狙うのは断然、角のない個体であるため、アカシカ個体群内の角のない個体は健康状態が良いにもかかわらず、落命するリスクが高くなっていた。
この知見から、角は、配偶者を巡る競争で武器として使われる他に、捕食者に対する抑止という第2の機能を果たしていることが示唆された。しかし、角を生え替わらせる必要性によってこの2つの機能の間にトレードオフが生じ、これがアカシカの進化に影響を与えたと考えられる。
参考文献:
Metz MC. et al.(2018): Predation shapes the evolutionary traits of cervid weapons. Nature Ecology & Evolution, 2, 1619–1625.
https://doi.org/10.1038/s41559-018-0657-5
この研究は、アメリカ合衆国イエローストーン国立公園で雄のアカシカを13年にわたって観察し、角を早く落とすことに未知のコストがあるのか、調べました。その結果、雄ジカの群れは、角のない個体が1頭でもいるとオオカミの襲撃を10倍受けやすくなる、と明らかになりました。オオカミが狙いやすいのは圧倒的に角のない個体の方であるため、アカシカ個体群内の角のない個体は健康状態が良いにもかかわらず、落命するリスクが高くなっていました。
この知見から、角は、配偶者を巡る競争で武器として使われる他に、捕食者に対する抑止という第二の機能を果たしている、と示唆されます。しかし、角を生え替わらせる必要性により、この二つの機能の間にトレードオフが生じ、これがアカシカの進化に影響を与えた、と考えられます。こうしたトレードオフの問題は、進化史において一般的と言え、雄のアメリカアカシカの角もその一例というわけです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
落角期はシカにとって死活問題
角のない雄ジカがオオカミに狙われやすいことを明らかにした論文が、今週掲載される。このことはシカにとって問題となる。早く角を落としたシカは、再び角が生えると次の交尾の可能性が高まる一方で、捕食者に対する防御力を失っているのである。
雄のアメリカアカシカ(北米のシカの1種)は、交尾期間が過ぎた後2~3カ月で角を落とす。新しい角はすぐに成長し始め、次の交尾期にライバルの雄に対する武器として使えるようになる。早く角を落とせば次の交尾期までにより大きな角を生やすことができるにもかかわらず、雄ジカが角を落とすタイミングはさまざまである。大きな角はライバルに対する優位性につながり、交尾の機会を増やせるのに、である。
Matthew Metzたちは、米国イエローストーン国立公園で雄のアカシカを13年にわたって観察し、角を早く落とすことに未知のコストがあるのかを調べた。その結果、雄ジカの群れは、角のない個体が1頭でもいるとオオカミの襲撃を10倍受けやすくなることが明らかになった。オオカミが狙うのは断然、角のない個体であるため、アカシカ個体群内の角のない個体は健康状態が良いにもかかわらず、落命するリスクが高くなっていた。
この知見から、角は、配偶者を巡る競争で武器として使われる他に、捕食者に対する抑止という第2の機能を果たしていることが示唆された。しかし、角を生え替わらせる必要性によってこの2つの機能の間にトレードオフが生じ、これがアカシカの進化に影響を与えたと考えられる。
参考文献:
Metz MC. et al.(2018): Predation shapes the evolutionary traits of cervid weapons. Nature Ecology & Evolution, 2, 1619–1625.
https://doi.org/10.1038/s41559-018-0657-5
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