読み書き計算と関連する遺伝子

 読み書き計算と関連する遺伝子についての研究(Lee et al., 2018)が公表されました。この研究は、100万人以上の研究対象者の遺伝組成と学歴を調べました。このように大きなサンプルサイズの研究だったので、学校教育の修了年数に関連する遺伝的多様体が1200種以上同定され、座位の数は過去のさまざまな研究で見つかった数の10倍を超えました。また、この研究は、個々の対象者のテスト成績・数学能力の自己申告・最終的に修了した数学のクラスのレベルを調べ、これらの関連形質について数百の遺伝的関連を見つけました。

 これらの調査により教育との関連が示唆された遺伝子は、出生前と出生後の脳内での発現レベルが高く、神経伝達物質の分泌とシナプス可塑性において役割を担っています。この関連する遺伝的座位の大規模なデータセットは、遺伝子と環境が相互作用して認知表現型に影響を及ぼす過程に関する今後の研究で役立つことが予想されます。こうした能力への選択圧という進化史的観点からの研究の進展も期待されます。また、「能力」と遺伝子との関連は次第に明らかになりつつありますが、それがもたらす問題は大きなものになるのではないか、とも懸念されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


読み書き計算ができることの遺伝的性質

 100万人以上を対象とした研究で、教育に関連する多数の遺伝的バリアントが新たに同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。これらのバリアントを含む遺伝子の候補は、脳の発達とニューロン間情報伝達において役割を担っている。

 今回、Daniel Benjaminたちの研究グループは、100万人以上の研究対象者の遺伝組成と学歴を調べた。このように大きなサンプルサイズの研究であったため、学校教育の修了年数に関連する遺伝的バリアントが1200種以上同定された。座位の数は、過去のさまざまな研究で見つかった数の10倍を超えた。また、Benjaminたちは、個々の対象者のテスト成績、数学能力の自己申告、および最終的に修了した数学のクラスのレベルを調べ、これらの関連形質について数百の遺伝的関連を見つけた。

 今回、教育との関連が示唆された遺伝子は、出生前と出生後の脳内での発現レベルが高く、神経伝達物質の分泌とシナプス可塑性において役割を担っている。この関連する遺伝的座位の大規模なデータセットは、遺伝子と環境が相互作用して認知表現型に影響を及ぼす過程に関する今後の研究で役立つことが予想される。



参考文献:
Lee JJ. et al.(2018): Gene discovery and polygenic prediction from a genome-wide association study of educational attainment in 1.1 million individuals. Nature Genetics, 50, 8, 1112–1121.
https://doi.org/10.1038/s41588-018-0147-3

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