キンカチョウの色覚
キンカチョウの色覚に関する研究(Caves et al., 2018)が公表されました。動物は、多くの状況において、個体間で連続的に変化するシグナルを用いて互いを評価します。こうしたシグナルは概して、シグナル発信者の質の差異を反映しています。シグナル受信者は、シグナルの連続的な変化を連続的に知覚して応答する、と多くの場合は考えられています。一方で、弁別や分類、またはその両方には限界があるため、シグナルの知覚および応答は非連続的である可能性もあります。弁別とは、2つの刺激を区別する能力のことで、たとえば、色相中の互いに似通った色を見分けられるかどうかなどのことです。分類は、類似性に基づいて刺激が分類されるかどうかに関連し、たとえば、色相中の質的に類似した複数の色を、区別が可能であっても似た色と特定することなどを意味します。範疇知覚(カテゴリー知覚)とは、連続的に変化する刺激を分類する機構で、受け手の知覚系において、それぞれの刺激を一定数のカテゴリーに分類処理する機構で、同じカテゴリー内における違うもの同士を判別するのではなく、範疇の境界に照らして弁別に関する特定の予測を行ないます。
この研究は、キンカチョウ(Taeniopygia guttata)を対象に、色覚について検証しました。雄のキンカチョウの嘴の色は、薄い橙色から暗赤色まで幅があります。雌のキンカチョウは、橙色よりも赤色の嘴の雄を交配相手として好み、赤い嘴は細胞性免疫の多様性と正の相関を示しています。しかし、雌がこのような色の多様性を連続的に知覚しているのか、それともカテゴリカル知覚を示しているのかは、まだ明確になっていません。そこでこの研究は、雌のキンカチョウを対象に、食物報酬プロトコルを用いて、オレンジ色から赤色の色スペクトルにわたる8刺激をカテゴリー化し、判別する試験を実施しました。まず、紙製の円板を作り、単色で塗りつぶしたものと半分ずつ別の色で塗りつぶしたものを作製します。雌のキンカチョウは、1色塗りの円板と2色塗りの円板を混在させておいたところで、最初に2色塗りの円板だけをひっくり返すように訓練し、色の組み合わせとは関係なく、1色塗りと2色塗りを認知できるようにしました。
実験結果から、雌のキンカチョウは1つの色カテゴリー内の異なるものを同一のものとは知覚しないものの、判別能力はカテゴリーの境界を越えたもので最も急激に上昇することが示唆されました。また、この研究は、こうしたカテゴリー化は、色刺激の輝度だけでは説明できず、鳥類の光受容器の感度の結果として生じた可能性はひじょうに低いことを明らかにしています。雌のキンカチョウは雄の嘴の色を、赤色とオレンジ色というわずか2つのカテゴリーで知覚している、というわけです。この知見は、鳥類のカテゴリカル色知覚を初めて実証したもので、鳥類の色知覚、より一般的にはシグナルの進化に関する理解を深めます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【動物学】雌のキンカチョウは赤からオレンジまでの色の違いをどのように知覚するのか
雌のキンカチョウは雄のくちばしの色を、赤色とオレンジ色というわずか2つのカテゴリーで知覚していることを報告する論文が、今週掲載される。この研究知見は、鳥類のカテゴリカル色知覚を初めて実証したものであり、鳥類の色知覚、より一般的にはシグナルの進化に関する我々の理解を深めている。
カテゴリカル知覚とは、連続的に変化する刺激の受け手の知覚系において、それぞれの刺激を一定数のカテゴリーに分類処理する機構で、同じカテゴリー内における違うもの同士を判別するのではなく、知覚境界を挟んで反対に位置する違うもの同士を判別する。雄のキンカチョウのくちばしの色は、薄いオレンジ色から暗赤色まで幅がある。雌のキンカチョウは、オレンジ色よりも赤色のくちばしを持つ雄を交配相手として好み、赤いくちばしは細胞性免疫の多様性と正の相関を示している。しかし、雌が、このような色の多様性を連続的に知覚しているのか、カテゴリカル知覚を示しているのかは明確になっていない。
今回、Stephen Nowickiたちの研究グループは、雌のキンカチョウを対象として、食物報酬プロトコルを用いて、オレンジ色から赤色の色スペクトルにわたる8つの刺激をカテゴリー化し、判別する試験を実施した。Nowickiたちは、紙製の円板を作り、単色で塗りつぶしたものと半分ずつ別の色で塗りつぶしたものを作製した。雌のキンカチョウは、1色塗りの円板と2色塗りの円板を混在させておいたところで、最初に2色塗りの円板だけをひっくり返すように訓練し、色の組み合わせとは関係なく、1色塗りと2色塗りを認知できるようにした。実験結果から、雌のキンカチョウは1つの色カテゴリー内の異なるものを同一のものとは知覚しないが、判別能力はカテゴリーの境界を越えたもので最も急激に上昇することが示唆された。また、Nowickiたちは、このカテゴリー化は、色刺激の輝度だけでは説明できないこと、これらのカテゴリーが鳥類の光受容器の感度の結果として生じた可能性は非常に低いことを明らかにしている。
視覚:鳴禽類の一種における色シグナルの範疇知覚
視覚:色は見る者次第
範疇知覚(カテゴリー知覚)とは、刺激の受信者の知覚系が連続的に変化する刺激を異なる範疇に分類する機構のことで、範疇境界の異なる側に位置する色同士は弁別するが、同じ範疇内のものは弁別しない。今回S Nowickiたちは、キンカチョウ(Taeniopygia guttata)の雌が、雄のくちばしの色(雄の質の評価シグナルのよく研究された例)を、連続的知覚ではなく範疇知覚の様式で知覚していることを示唆する証拠を示している。自然界で見られるくちばしの色の差異に対応した色刺激を用いた実験から、雌が雄のくちばしの色をわずか2つの範疇に知覚的に分類することが示された。さらに、この分類が刺激の明るさだけによるものではないこと、そしてこれらの範疇が鳥類の光受容器の波長識別機能の結果としては生じていないことも明らかになった。著者たちが述べているように、これが評価シグナルの範疇知覚に関する最初の実証例であるとすれば、重要である可能性がある。
参考文献:
Caves EM. et al.(2018): Categorical perception of colour signals in a songbird. Nature, 560, 7718, 365–367.
https://doi.org/10.1038/s41586-018-0377-7
この研究は、キンカチョウ(Taeniopygia guttata)を対象に、色覚について検証しました。雄のキンカチョウの嘴の色は、薄い橙色から暗赤色まで幅があります。雌のキンカチョウは、橙色よりも赤色の嘴の雄を交配相手として好み、赤い嘴は細胞性免疫の多様性と正の相関を示しています。しかし、雌がこのような色の多様性を連続的に知覚しているのか、それともカテゴリカル知覚を示しているのかは、まだ明確になっていません。そこでこの研究は、雌のキンカチョウを対象に、食物報酬プロトコルを用いて、オレンジ色から赤色の色スペクトルにわたる8刺激をカテゴリー化し、判別する試験を実施しました。まず、紙製の円板を作り、単色で塗りつぶしたものと半分ずつ別の色で塗りつぶしたものを作製します。雌のキンカチョウは、1色塗りの円板と2色塗りの円板を混在させておいたところで、最初に2色塗りの円板だけをひっくり返すように訓練し、色の組み合わせとは関係なく、1色塗りと2色塗りを認知できるようにしました。
実験結果から、雌のキンカチョウは1つの色カテゴリー内の異なるものを同一のものとは知覚しないものの、判別能力はカテゴリーの境界を越えたもので最も急激に上昇することが示唆されました。また、この研究は、こうしたカテゴリー化は、色刺激の輝度だけでは説明できず、鳥類の光受容器の感度の結果として生じた可能性はひじょうに低いことを明らかにしています。雌のキンカチョウは雄の嘴の色を、赤色とオレンジ色というわずか2つのカテゴリーで知覚している、というわけです。この知見は、鳥類のカテゴリカル色知覚を初めて実証したもので、鳥類の色知覚、より一般的にはシグナルの進化に関する理解を深めます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【動物学】雌のキンカチョウは赤からオレンジまでの色の違いをどのように知覚するのか
雌のキンカチョウは雄のくちばしの色を、赤色とオレンジ色というわずか2つのカテゴリーで知覚していることを報告する論文が、今週掲載される。この研究知見は、鳥類のカテゴリカル色知覚を初めて実証したものであり、鳥類の色知覚、より一般的にはシグナルの進化に関する我々の理解を深めている。
カテゴリカル知覚とは、連続的に変化する刺激の受け手の知覚系において、それぞれの刺激を一定数のカテゴリーに分類処理する機構で、同じカテゴリー内における違うもの同士を判別するのではなく、知覚境界を挟んで反対に位置する違うもの同士を判別する。雄のキンカチョウのくちばしの色は、薄いオレンジ色から暗赤色まで幅がある。雌のキンカチョウは、オレンジ色よりも赤色のくちばしを持つ雄を交配相手として好み、赤いくちばしは細胞性免疫の多様性と正の相関を示している。しかし、雌が、このような色の多様性を連続的に知覚しているのか、カテゴリカル知覚を示しているのかは明確になっていない。
今回、Stephen Nowickiたちの研究グループは、雌のキンカチョウを対象として、食物報酬プロトコルを用いて、オレンジ色から赤色の色スペクトルにわたる8つの刺激をカテゴリー化し、判別する試験を実施した。Nowickiたちは、紙製の円板を作り、単色で塗りつぶしたものと半分ずつ別の色で塗りつぶしたものを作製した。雌のキンカチョウは、1色塗りの円板と2色塗りの円板を混在させておいたところで、最初に2色塗りの円板だけをひっくり返すように訓練し、色の組み合わせとは関係なく、1色塗りと2色塗りを認知できるようにした。実験結果から、雌のキンカチョウは1つの色カテゴリー内の異なるものを同一のものとは知覚しないが、判別能力はカテゴリーの境界を越えたもので最も急激に上昇することが示唆された。また、Nowickiたちは、このカテゴリー化は、色刺激の輝度だけでは説明できないこと、これらのカテゴリーが鳥類の光受容器の感度の結果として生じた可能性は非常に低いことを明らかにしている。
視覚:鳴禽類の一種における色シグナルの範疇知覚
視覚:色は見る者次第
範疇知覚(カテゴリー知覚)とは、刺激の受信者の知覚系が連続的に変化する刺激を異なる範疇に分類する機構のことで、範疇境界の異なる側に位置する色同士は弁別するが、同じ範疇内のものは弁別しない。今回S Nowickiたちは、キンカチョウ(Taeniopygia guttata)の雌が、雄のくちばしの色(雄の質の評価シグナルのよく研究された例)を、連続的知覚ではなく範疇知覚の様式で知覚していることを示唆する証拠を示している。自然界で見られるくちばしの色の差異に対応した色刺激を用いた実験から、雌が雄のくちばしの色をわずか2つの範疇に知覚的に分類することが示された。さらに、この分類が刺激の明るさだけによるものではないこと、そしてこれらの範疇が鳥類の光受容器の波長識別機能の結果としては生じていないことも明らかになった。著者たちが述べているように、これが評価シグナルの範疇知覚に関する最初の実証例であるとすれば、重要である可能性がある。
参考文献:
Caves EM. et al.(2018): Categorical perception of colour signals in a songbird. Nature, 560, 7718, 365–367.
https://doi.org/10.1038/s41586-018-0377-7
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