カイコの進化史

 カイコの進化史に関する研究(Xiang et al., 2018)が公表されました。絹糸の材料であるカイコの繭は、古来珍重されてきました。しかし、カイコの飼養化の詳細な歴史はよく分かっていません。本論文は、中国・ヨーロッパ・日本・インドのカイコ137系統の遺伝物質を解析しました。解析の結果、カイコが5000年前の中国で野生原種であるクワコ(Bombyx mandarina)から飼養化された、と確認されました。また、中国・南アジア・ヨーロッパを結ぶ古代の有名な交易路「シルクロード」に沿って、カイコが複数回にわたって分散したことを示す証拠も発見されました。その後、特徴的な改良系統が中国と日本で育種されました。

 本論文はさらに、生糸の生成に関連する遺伝子の選択が行なわれたことを見いだしました。これらの遺伝子には、絹タンパク質の産生に重要な窒素とアミノ酸の代謝に関与するものが含まれていました。また、概日リズムの変化・繭の大型化・熱帯環境での繁殖サイクル数の増加など、カイコの飼養地域によって、それぞれ異なる適応を遂げてきた証拠も発見されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


カイコの歴史を紡ぐ

 カイコの繭は、世界有数の価値ある材料となっている。しかし、カイコの飼養化の詳細な歴史はよく分かっていない。

 今回Shuai Zhanたちは、中国、ヨーロッパ、日本、およびインドのカイコ137系統の遺伝物質を解析した。解析の結果、カイコが5000年前の中国で野生原種であるクワコ(Bombyx mandarina)から飼養化されたことが確認された。また、中国、南アジア、ヨーロッパを結ぶ古代の有名な交易路「シルクロード」に沿って、複数回にわたって分散したことを示す証拠も発見された。その後、特徴的な改良系統が中国と日本で育種された。

 Zhanたちはさらに、生糸の生成に関連する遺伝子の選択が行われたことを見いだした。これらの遺伝子には、絹タンパク質の産生に重要な窒素とアミノ酸の代謝に関与するものが含まれていた。また、概日リズムの変化、繭の大型化、および熱帯環境での繁殖サイクル数の増加など、カイコの飼養地域によって、それぞれ異なる適応を遂げてきた証拠も発見された。



参考文献:
Xiang H. et al.(2018): The evolutionary road from wild moth to domestic silkworm. Nature Ecology & Evolution, 2, 1268–1279.
https://dx.doi.org/10.1038/s41559-018-0593-4

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック