ショウジョウバエの求愛行動に関わる神経回路
ショウジョウバエの求愛行動に関わる神経回路についての研究(Seeholzer et al., 2018)が公表されました。求愛儀式は、近縁種間での生殖障壁の強化に役立ちますが、これに関わる神経回路基盤はほとんど解析されていません。たとえばショウジョウバエでは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)とオナジショウジョウバエ(Drosophila simulans)は生殖隔離を示しますが、それは雌のキイロショウジョウバエが、雄のキイロショウジョウバエの求愛行動を促進するものの、雄のオナジショウジョウバエの求愛行動は抑制するフェロモンである、7,11-ヘプタコサジエンを産生することが一因になっています。
本論文は、雄のキイロショウジョウバエとオナジショウジョウバエのフェロモン処理経路を比較し、これらの姉妹種が7,11-ヘプタコサジエンに種間識別の基礎となる正反対の行動誘意性を付与する仕組みを調べました。その結果、両種の雄はどちらも相同な末梢感覚ニューロンを用いて7,11-ヘプタコサジエンを検知するものの、その信号は求愛行動を制御するP1ニューロンに異なって伝達される、と明らかになりました。求愛促進ニューロンへの興奮と抑制のバランスの変化が、キイロショウジョウバエの興奮性フェロモン手掛かりをオナジショウジョウバエの抑制性手掛かりへと変換させます。雄のキイロショウジョウバエでは求愛行動が促進されるものの、雄のオナジショウジョウバエでは求愛行動が抑制される、というわけです。この知見は、種特異的フェロモン応答が、末梢の検知機構を保存したまま中枢回路を多様化させることから生じ得る仕組みを明らかにし、神経回路の柔軟なノードがどのように行動の進化に寄与し得るか実証しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
神経生物学:ショウジョウバエの配偶者選択性の基盤となる中枢神経回路の進化
神経生物学:求愛行動に関わる神経回路
求愛儀式は、近縁種間での生殖障壁の強化に役立つが、これに関わる神経回路基盤はほとんど解析されていない。今回V Rutaたちは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)とオナジショウジョウバエ(D. simulans)という2種のショウジョウバエの雄がどちらも、雌のキイロショウジョウバエが作るフェロモン(7,11-ヘプタコサジエン)を、保存された末梢感覚ニューロンを介して検知することを示している。しかし、この信号は求愛行動を制御するP1ニューロンへ異なって伝達され、雄のキイロショウジョウバエでは求愛行動が促進されるが、雄のオナジショウジョウバエでは求愛行動が抑制される。これらの結果から、進化が末梢センサーを保存したまま中枢神経回路に働いて、固定された感覚刺激の行動誘意性に豊かな多様性を生み出す仕組みが明らかになった。
参考文献:
Seeholzer LF. et al.(2018): Evolution of a central neural circuit underlies Drosophila mate preferences. Nature, 559, 7715, 473–476.
https://dx.doi.org/10.1038/s41586-018-0322-9
本論文は、雄のキイロショウジョウバエとオナジショウジョウバエのフェロモン処理経路を比較し、これらの姉妹種が7,11-ヘプタコサジエンに種間識別の基礎となる正反対の行動誘意性を付与する仕組みを調べました。その結果、両種の雄はどちらも相同な末梢感覚ニューロンを用いて7,11-ヘプタコサジエンを検知するものの、その信号は求愛行動を制御するP1ニューロンに異なって伝達される、と明らかになりました。求愛促進ニューロンへの興奮と抑制のバランスの変化が、キイロショウジョウバエの興奮性フェロモン手掛かりをオナジショウジョウバエの抑制性手掛かりへと変換させます。雄のキイロショウジョウバエでは求愛行動が促進されるものの、雄のオナジショウジョウバエでは求愛行動が抑制される、というわけです。この知見は、種特異的フェロモン応答が、末梢の検知機構を保存したまま中枢回路を多様化させることから生じ得る仕組みを明らかにし、神経回路の柔軟なノードがどのように行動の進化に寄与し得るか実証しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
神経生物学:ショウジョウバエの配偶者選択性の基盤となる中枢神経回路の進化
神経生物学:求愛行動に関わる神経回路
求愛儀式は、近縁種間での生殖障壁の強化に役立つが、これに関わる神経回路基盤はほとんど解析されていない。今回V Rutaたちは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)とオナジショウジョウバエ(D. simulans)という2種のショウジョウバエの雄がどちらも、雌のキイロショウジョウバエが作るフェロモン(7,11-ヘプタコサジエン)を、保存された末梢感覚ニューロンを介して検知することを示している。しかし、この信号は求愛行動を制御するP1ニューロンへ異なって伝達され、雄のキイロショウジョウバエでは求愛行動が促進されるが、雄のオナジショウジョウバエでは求愛行動が抑制される。これらの結果から、進化が末梢センサーを保存したまま中枢神経回路に働いて、固定された感覚刺激の行動誘意性に豊かな多様性を生み出す仕組みが明らかになった。
参考文献:
Seeholzer LF. et al.(2018): Evolution of a central neural circuit underlies Drosophila mate preferences. Nature, 559, 7715, 473–476.
https://dx.doi.org/10.1038/s41586-018-0322-9
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