ヤギの家畜化
ヤギの家畜化に関する研究(Daly et al., 2018)が報道されました。ヤギは現在約10憶頭存在し、代表的な家畜の一種です。ヤギが最初に家畜化された地域はいわゆる肥沃な三日月地帯で、10500年前頃と推測されています。しかし、ヤギがどのように家畜化されたのか、不明でした。本論文は、旧石器時代から中世までの、野生種と家畜種を含む83頭の古代ヤギのミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析しました。また、そのうち51頭に関しては全ゲノム配列も得られました。
その結果明らかになったのは、ヤギは単一の野生集団から家畜化されていったのではなく、複数の多様な野生ヤギ集団に起源があり、肥沃な三日月地帯から複数の経路で拡散していった、ということです。さらに、家畜化されていったヤギと野生種との交雑が継続し、また家畜種のヤギ同士の交雑も進んだ、と明らかになりました。現代の家畜ヤギは多様な遺伝的起源を有しており、アジア・アフリカ・ヨーロッパそれぞれで異なる遺伝的構成を示すことになりました。現代のヤギは、mtDNAにおいては特定のハプログループが支配的ですが、全ゲノム配列では多様な起源が判明した、というわけです。他の家畜種でも、似たような事例が見られるかもしれません。
また、色素沈着遺伝子の証拠から、家畜種のヤギは早くも8000年前頃には体色においてヒト社会から選択を受けていた、と推測されています。こうしたヒトによるヤギの特徴の選択に関しては、身体サイズ・成長・繁殖・搾乳・食性変化への対応などでも可能性が指摘されています。たとえば、ヤギの飼料として真菌類が利用されるようになると、毒素への耐性向上をもたらすような肝臓酵素への選択圧が人為的にかけられていったのではないか、と推測されています。ヤギが人為的選択を受けてきたことはすでに指摘されていましたが(関連記事)、古代DNA解析により、改めて確認された、と言えるでしょう。
参考文献:
Daly KG. et al.(2018): Ancient goat genomes reveal mosaic domestication in the Fertile Crescent. Science, 361, 6397, 85–88.
https://dx.doi.org/10.1126/science.aas9411
その結果明らかになったのは、ヤギは単一の野生集団から家畜化されていったのではなく、複数の多様な野生ヤギ集団に起源があり、肥沃な三日月地帯から複数の経路で拡散していった、ということです。さらに、家畜化されていったヤギと野生種との交雑が継続し、また家畜種のヤギ同士の交雑も進んだ、と明らかになりました。現代の家畜ヤギは多様な遺伝的起源を有しており、アジア・アフリカ・ヨーロッパそれぞれで異なる遺伝的構成を示すことになりました。現代のヤギは、mtDNAにおいては特定のハプログループが支配的ですが、全ゲノム配列では多様な起源が判明した、というわけです。他の家畜種でも、似たような事例が見られるかもしれません。
また、色素沈着遺伝子の証拠から、家畜種のヤギは早くも8000年前頃には体色においてヒト社会から選択を受けていた、と推測されています。こうしたヒトによるヤギの特徴の選択に関しては、身体サイズ・成長・繁殖・搾乳・食性変化への対応などでも可能性が指摘されています。たとえば、ヤギの飼料として真菌類が利用されるようになると、毒素への耐性向上をもたらすような肝臓酵素への選択圧が人為的にかけられていったのではないか、と推測されています。ヤギが人為的選択を受けてきたことはすでに指摘されていましたが(関連記事)、古代DNA解析により、改めて確認された、と言えるでしょう。
参考文献:
Daly KG. et al.(2018): Ancient goat genomes reveal mosaic domestication in the Fertile Crescent. Science, 361, 6397, 85–88.
https://dx.doi.org/10.1126/science.aas9411
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