森恒二『創世のタイガ』第3巻(講談社)
本書は2018年6月に刊行されました。第1巻と第2巻がたいへん面白かったので、第3巻も楽しみにしていました。第3巻は、タイガと現生人類(Homo sapiens)の少女ティアリとの出会いから始まります。タイガは、仲間の女性がネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)に襲われていると勘違いして助けに行ったのですが、襲われていたのはティアリだった、というわけです。タイガは、言葉が通じないながらも、自分の根拠地に案内してくれいないか、とティアリに頼み、タイガに恩を受けたティアリは、恩を返さねばならない、と考えてタイガを案内することにします。ティアリは、自集団の賢者ムジャンジャに、受けた恩は必ず返さねばならない、という教えを受けていました。
ティアリはタイガに生きていくための知恵がほとんどないことに呆れ、タイガの方もそれを自覚し、早く旧石器時代で生きていく術を学ぼうとします。そんな二人を、ネアンデルタール人が集団で執拗に追いかけます。タイガは、ネアンデルタール人には自分たちと変わらない知性があるのか、と感心しますが、ティアリと同じく、どう対処すべきか、名案が浮かびません。しかし、狼が近づいていることを知ったタイガは、狼を利用して見事にネアンデルタール人たちを殲滅することに成功します。ティアリはタイガの勇気と知恵に感嘆しますが、タイガは人間を殺したことに落ち込み、悩んでいました。
ネアンデルタール人を殲滅した現場からやや離れたところで、タイガとティアリは狼の子供2匹を発見します。タイガはそのうち1匹を手なずけ、ティアリとともに自分たちの根拠地にたどり着きます。しかし、そこには仲間はおらず、洞窟には大量の乾いた血が残されていました。タイガは絶望し、号泣しますが、仲間の死体がないことから、殺されたのではなく連行された可能性も考えます。タイガは、無気力状態の自分を支えてくれたティアリに感謝します。
タイガと狼の子供はティアリに導かれて、ティアリの集団の根拠地らしき場所まで到達します。そこには、タイガの仲間のうち男性3人が囚われており、女性3人は他の場所で働かされていることが明らかになります。ティアリは何とかタイガを自集団に受け入れさせようとしますが、ティアリの仲間はタイガを受け入れようとはしません。そこへ賢者ムジャンジャが現れ、ティアリの主張するようにタイガが戦士だというのなら証明するのだ、とティアリを諭します。タイガはその証明のために、ティアリの仲間のナクムという屈強な男性と戦うことになり、両者が対峙するところで第3巻は終わりです。
第3巻は、タイガとティアリの出会いから、ネアンデルタール人との戦いを経て、狼の子供を手なずけ、ティアリの集団と出会い、タイガが仲間たちのうち男性陣と再会したところまで描かれました。特殊な舞台ではありますが、普遍的なサバイバルドラマとしての性格が強くなっています。やはり、広く受け入れられるには、普遍的な物語として面白い必要があるのでしょうが、その点では本作は成功しているように思います。格闘場面は、漫画として迫力のある描写になっていたと思います。また本作は、狼の子供もそうですが、動物の描写がとくに優れていると思います。
本作は普遍的な物語としても面白いのですが、人類進化史に関心のある私は、第1巻の帯に「人類創世の謎を解き明かす、命懸けの冒険が始まる!」とあったことから、謎解き要素の方も大いに気になります。第3巻では、タイガが狼の子供を手なずけましたが、これは、現生人類が狼を家畜化(犬)したことでネアンデルタール人にたいして優位に立ち、ネアンデルタール人は絶滅に追いやられた、との見解(関連記事)を意識したものかもしれません。今後、タイガが手なずけた狼の子供がどのような役割を担うのか、注目されます。
謎解き要素という点で気になるのは、相変わらず、旧石器時代の女性はティアリしか登場していないことです。第3巻ではティアリの集団の根拠地らしき場所が描かれましたが、そこにも男性しかいないようでした。ティアリの集団に囚われたタイガの仲間たちのうち、女性陣は離れたところで働かされている、とのことでしたから、女性はもっと奥にというか、もっと安全と考えられている場所にいるのかもしれません。タイガがたどり着いた場所は、集落もしくは本城の前線にある要塞・出城といったところでしょうか。
ネアンデルタール人の方も女性がまだ登場していませんが、こちらも現生人類の殺害は成人男性の役割と決まっており、女性や子供は後方の集落にいるのかもしれません。ネアンデルタール人が自分たちの活動範囲に侵出してきた現生人類を敵視するのは分かりますが、本作におけるネアンデルタール人の現生人類にたいする敵意は、尋常ではないようにも思えます。その敵意の理由は本作の謎解き要素の鍵になるのではないか、と思います。また、今のところは現生人類とネアンデルタール人の敵対的関係しか描かれていませんが、両者の友好的な関係も描かれるのか、という点も注目しています。第4巻の刊行も今から楽しみです。
ティアリはタイガに生きていくための知恵がほとんどないことに呆れ、タイガの方もそれを自覚し、早く旧石器時代で生きていく術を学ぼうとします。そんな二人を、ネアンデルタール人が集団で執拗に追いかけます。タイガは、ネアンデルタール人には自分たちと変わらない知性があるのか、と感心しますが、ティアリと同じく、どう対処すべきか、名案が浮かびません。しかし、狼が近づいていることを知ったタイガは、狼を利用して見事にネアンデルタール人たちを殲滅することに成功します。ティアリはタイガの勇気と知恵に感嘆しますが、タイガは人間を殺したことに落ち込み、悩んでいました。
ネアンデルタール人を殲滅した現場からやや離れたところで、タイガとティアリは狼の子供2匹を発見します。タイガはそのうち1匹を手なずけ、ティアリとともに自分たちの根拠地にたどり着きます。しかし、そこには仲間はおらず、洞窟には大量の乾いた血が残されていました。タイガは絶望し、号泣しますが、仲間の死体がないことから、殺されたのではなく連行された可能性も考えます。タイガは、無気力状態の自分を支えてくれたティアリに感謝します。
タイガと狼の子供はティアリに導かれて、ティアリの集団の根拠地らしき場所まで到達します。そこには、タイガの仲間のうち男性3人が囚われており、女性3人は他の場所で働かされていることが明らかになります。ティアリは何とかタイガを自集団に受け入れさせようとしますが、ティアリの仲間はタイガを受け入れようとはしません。そこへ賢者ムジャンジャが現れ、ティアリの主張するようにタイガが戦士だというのなら証明するのだ、とティアリを諭します。タイガはその証明のために、ティアリの仲間のナクムという屈強な男性と戦うことになり、両者が対峙するところで第3巻は終わりです。
第3巻は、タイガとティアリの出会いから、ネアンデルタール人との戦いを経て、狼の子供を手なずけ、ティアリの集団と出会い、タイガが仲間たちのうち男性陣と再会したところまで描かれました。特殊な舞台ではありますが、普遍的なサバイバルドラマとしての性格が強くなっています。やはり、広く受け入れられるには、普遍的な物語として面白い必要があるのでしょうが、その点では本作は成功しているように思います。格闘場面は、漫画として迫力のある描写になっていたと思います。また本作は、狼の子供もそうですが、動物の描写がとくに優れていると思います。
本作は普遍的な物語としても面白いのですが、人類進化史に関心のある私は、第1巻の帯に「人類創世の謎を解き明かす、命懸けの冒険が始まる!」とあったことから、謎解き要素の方も大いに気になります。第3巻では、タイガが狼の子供を手なずけましたが、これは、現生人類が狼を家畜化(犬)したことでネアンデルタール人にたいして優位に立ち、ネアンデルタール人は絶滅に追いやられた、との見解(関連記事)を意識したものかもしれません。今後、タイガが手なずけた狼の子供がどのような役割を担うのか、注目されます。
謎解き要素という点で気になるのは、相変わらず、旧石器時代の女性はティアリしか登場していないことです。第3巻ではティアリの集団の根拠地らしき場所が描かれましたが、そこにも男性しかいないようでした。ティアリの集団に囚われたタイガの仲間たちのうち、女性陣は離れたところで働かされている、とのことでしたから、女性はもっと奥にというか、もっと安全と考えられている場所にいるのかもしれません。タイガがたどり着いた場所は、集落もしくは本城の前線にある要塞・出城といったところでしょうか。
ネアンデルタール人の方も女性がまだ登場していませんが、こちらも現生人類の殺害は成人男性の役割と決まっており、女性や子供は後方の集落にいるのかもしれません。ネアンデルタール人が自分たちの活動範囲に侵出してきた現生人類を敵視するのは分かりますが、本作におけるネアンデルタール人の現生人類にたいする敵意は、尋常ではないようにも思えます。その敵意の理由は本作の謎解き要素の鍵になるのではないか、と思います。また、今のところは現生人類とネアンデルタール人の敵対的関係しか描かれていませんが、両者の友好的な関係も描かれるのか、という点も注目しています。第4巻の刊行も今から楽しみです。
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