山岳地帯の鳥類の多様性

 山岳地帯の鳥類の多様性に関する研究(Quintero, and Jetz., 2018)が公表されました。山脈は、進化が生じるさいに重要な役割を担っています。生物種の豊富さの標高に応じた低下は、生物多様性の緯度方向の勾配に次いで、生態系で最も普遍的に見られるパターンの一つです。山脈は複雑で多様な地形になっており、高度に分離していることが多く、生息地としては新種の発生につながる個体群の遺伝的隔離が生じやすくなっているわけです。ただ、そうした特性のために山岳地帯の研究は困難なので、標高に伴う多様性の勾配の根底にある過程については、共通した見解は得られていません。

 この研究は、世界の主要な山脈46ヶ所に生息する8470の鳥類種(既知の鳥類種全体の約85%)の分布と多様性、進化を調べました。これまでの数多くの研究では、種の多様性が中程度の標高で最大化するとされてきましたが、この研究は、中程度の標高に生息するさまざまな鳥類種の過剰提示を補う新しいサンプリング法を用いて、全ての山脈において種の豊かさが標高の増加に伴って減少することを明らかにしました。標高の高い地域では、1日の気温変動や風力と日射量が大きくなるなど極端な環境条件になる。

 この研究は、さまざまな鳥類種の進化的類縁関係を調べ、標高が高くなると種の集合体の分布がまばらになることと、種の多様化速度の上昇が関連することを明らかにしました。この新知見は、最近になって新種の出現率が低下したために生物相の多様性が減少した、とする学説と真っ向から対立しています。この研究は、標高の高い地域に存在する高地に適応した独特な生物相を維持するためには、種の多様化という現在も継続する強力なプロセスが必要だと考えています。

 さらに、この研究は、過去に気温の変化率が高かった山岳地帯に生息する種の集合体は、より急速に多様化することも明らかにしました。この新知見は、山岳地帯で進化が発生する上で気候の変動が重要であることを明確に示しています。また、この新知見は、現在進行中の、そしてごく最近起こったものであることの多い多様化の過程が、高い標高域に見られる独特で高度に適応した生物多様性の維持において担っている役割を浮き彫りにしている。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【生態学】山岳地帯の鳥類種の多様性

 山岳地帯の鳥類個体群は、標高が増すにつれて多様性が減少するが、多様化は速くなることを明らかにした論文が、今週掲載される。この新知見は、種の豊かさが中程度の標高で最大化し、種の豊かな個体群を維持するためには局所的な多様化速度が高いことが必要だ、という長年の考え方に反した内容になっている。

 山脈は、進化が生じる際に重要な役割を担っている。山脈は、複雑で多様な地形になっており、高度に分離していることが多く、生息地としては新種の発生につながる個体群の遺伝的隔離が生じやすい。それと同時に、こうした特性のために山岳地帯の研究は困難を極めることがよく知られている。

 これに対して、今回のIgnacio QuinteroとWalter Jetzの研究では、世界の主要な山脈(46か所)に生息する8470の鳥類種(既知の鳥類種全体の約85%)の分布と多様性、進化を調べた。これまでの数多くの研究では、種の多様性が中程度の標高で最大化するとされてきたが、QuinteroとJetzは、中程度の標高に生息するさまざまな鳥類種の過剰提示を補う新しいサンプリング法を用いて、全ての山脈において種の豊かさが標高の増加に伴って減少することを明らかにした。標高の高い地域では、1日の気温変動や風力と日射量が大きくなるなど極端な環境条件になる。

 QuinteroとJetzは、さまざまな鳥類種の進化的類縁関係を調べて、標高が高くなると種の集合体の分布がまばらになることと種の多様化速度の上昇が関連することを明らかにした。この新知見は、最近になって新種の出現率が低下したために生物相の多様性が減少した、とする学説と真っ向から対立している。これに対してQuinteroとJetzは、標高の高い地域に存在する高地に適応した独特な生物相を維持するためには、種の多様化という現在も継続する強力なプロセスが必要だと考えている。

 さらに、QuinteroとJetzは、過去に気温の変化率が高かった山岳地帯に生息する種の集合体はより急速に多様化することも明らかにした。この新知見は、山岳地帯で進化が発生する上で気候の変動が重要であることを明確に示している。


進化学:全球の標高多様性と鳥類の多様化

進化学:鳥類の種の豊富さで見る、山岳地帯の生物多様性

 生物種の豊富さの標高に応じた低下は、生物多様性の緯度方向の勾配に次いで、生態系で最も普遍的に見られるパターンの1つである。しかし、こうした標高に伴う多様性の勾配の根底にある過程については、共通した見解は得られていない。今回I QuinteroとW Jetzは、世界の46の主要な山系について、鳥類の種の豊富さに見られる標高に伴う勾配の進化的基盤を調べた。その結果、全ての山岳地帯において、種の豊富さは標高とともに直線的に低下するが、多様化の速度は上昇することが分かった。これらの知見は、高い多様化速度が高標高域に種の豊富さをもたらしてそれを維持する、という見方を否定するとともに、現在進行中の、そしてごく最近起こった多様化が高標高域での高度に適応したな生物多様性の維持に役割を果たしていることを示している。



参考文献:
Quintero I, and Jetz W.(2018): Global elevational diversity and diversification of birds. Nature, 555, 7695, 246–250.
http://dx.doi.org/10.1038/nature25794

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