ファミリー劇場HDリマスター版『太陽にほえろ!』712話~715話

712話「小鳥のさえずり」7
 女性の転落死体が発見されたとこから話が始まります。通報してきたのは女性の父親でしたが、淡々としており、笑みさえ浮かべていました。マイコンは父親の態度に疑いを抱きます。自殺なのか他殺なのか事故なのか、父親と娘との間には何かあるのか、謎の多い事件で、推理ものとして工夫されており、この点ではなかなか楽しめました。けっきょく、女性は同僚の男性と結婚の約束をしていたものの、裏切られて中絶し、男性を恨みながら自殺したことが明らかになります。これで話が終わりかと思ったら、父親が男性を殺そうとしていることにマイコンが気づき、父親が男性を殺そうとするところを寸前で阻止します。マイコンの父親への疑いは的外れでしたが、マイコンの観察力が父親の殺人を阻止したことで、マイコン主役回に相応しいオチになっていたと思います。多少ひねってきた展開になっており、末期の視聴率は全盛期と比較して低迷していましたが、話自体はさほど悪くないものが少なくないと思います。


713話「エスパー少女・愛」3
 今回は2時間スペシャルとなります。本作では異色となる超能力を扱った話ですが、正直なところ、上滑りしてしまった感は否めません。ある意味で、視聴率の低迷した末期を象徴している話と言えるかもしれません。まあ、本作の延長放送回は、殉職編を除くと微妙な出来の話が多いように思えます。1話完結が基本だった本作は、延長放送とは相性が悪いのかもしれません。当初は、少女の超能力を確信するブルースと、懐疑的なドックとが対比されましたが、途中からドックはブルースと共に少女の超能力を捜査に利用します。物語として陳腐な感もありますが、王道的というか、安定感はありました。SF的要素は基本的にない本作において、超能力を主題とするのは難しかったと思うのですが、少女は自殺したい時のみ超能力が発動し、悩みを克服してからはもう超能力を発揮しない、というオチは、まずまず無難なところに落とし込んだ感があります。「エスパー少女」が飼犬の死を語った時、ボギーのテーマが流れたのは懐かしく、そう言えば、ボギーは登場回で犬の話をラジオで聞いて泣いていました。まあ、それを意識した選曲だったのか、分かりませんが。ラガーのテーマも流れ、こちらも懐かしかったのですが、今回の時点で、ラガーの殉職から1年以上、登場からは5年以上となり、本作の歴史の長さを改めて感じます。


714話「赤ちゃん」5
 女性がひったくりの被害にあい、犯人の男性は逃亡します。女性は暴力団員2人に襲撃され、1人は逃亡中に転落して死亡します。死亡したのは暴力団員でした。一係は、女性が奪われたバッグに暴力団にとって知られたくないものが入っていたのではないか、と推理してひったくり犯の男性の行方を追います。男性には身重の妻がいました。暴力団が何を追っているのか、という謎解き要素もありましたが、ひったくり犯の男性がクズで、この男性をマミーが更生させようとするヒューマンストーリー的性格も強くなっています。子供が生まれたばかりのブルース夫妻も絡めて、全体的に話は悪くなく、ひったくり犯の男性の子供が生まれてすぐに死ぬという苦い結末もひねってきたと思いますが、やや盛り上がりに欠けた感は否めません。今回は青春のテーマが流れ、これは久々だと思います。初期に多用されていたテーマが流れると、何とも懐かしいものです。ボギーのテーマが多用されたのも、懐かしくも嬉しくもありました。


715話「山さんからの伝言」10
 末期の話は、最終回のボスの取り調べ場面以外では、今回くらいしか覚えていませんでした。デューク退場回ということもあり、それだけ今回は印象に強く残った話でした。山さん殉職後、山さんへの言及はとくになかったのですが、本作の大功労者だけに、このように殉職後に山さんメインの話があったのは、本当によかったと思います。デュークの山さんへの敬意と、山さんの判断への理解が見られ、この点も話を深めていましたし、それらを抜きにしても、ヒューマンストーリーとして面白くなっていたように思います。今回デュークが再捜査した事件は、今回から9年前という設定になっており、ちょうど鮫島勘五郎シリーズ第6回の頃です(関連記事)。その時点でのレギュラーメンバーは今回誰も登場していませんから、この間の本作の大きな変化を改めて痛感します。

 今回でデュークは退場となりますが、殉職・転勤・退職ではなく、海外研修という設定でした。3話後が最終回となったわけですから、せめてそこまではデュークにも出演してもらいたかったものですが、演者の都合もあったのでしょうか。デュークの出演期間は1年2ヶ月ほどで、後期の若手刑事としては登場期間が短く(末期になっての登場だったDJはさておくとして)、正直なところ、あまり目立たなかったというか、印象に残らなかった感は否めません。デュークは、スコッチ・原昌之を継ぐクールで一匹狼的な刑事で、人物造形が難しかった感は否めず、その意味では不運なキャラだったと言えるかもしれません。ただ、スコッチ・原昌之とは異なり、最後まで他の刑事とは一線を引いていたのは悪くなかったと思います。

この記事へのコメント

いち
2018年04月07日 20:03
こんばんは。「山さんからの伝言」で出てくる日付、昭和52年5月15日。「太陽にほえろ!」ファンなら放映リストを見てしまいますよね。私はあれこれ妄想してしまいます。→スコッチ転勤後で忙しいかったでしょう。鮫島シリーズや子供に大金を残そうと奮闘する父親と遭遇しながらの、飯田寮事件の捜査だったのではないでしょうか。
あと、デュークの最終捜査報告は充分な配慮を重ねての物だったのでとても感動しました。703話「加奈子」と同様に。
2018年04月09日 19:08
デュークの最終捜査報告はよかったと思います。クール系刑事のこうした配慮は、定番ではありますが、やはり物語上効果的です。

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