ヒツジとヤギの家畜化過程の違い

 これは3月8日分の記事として掲載しておきます。ヒツジとヤギの家畜化過程の違いに関する研究(Alberto et al., 2018)が公表されました。これまでにさまざまな家畜が、従順さ・成長の速さ・スタミナといった特定の形質を定着させるために選択的に交配されてきました。ヒツジの野生原種であるアジアムフロン(Ovis orientalis)とヤギの野生原種であるパサン(Capra aegagrus)は、それぞれ10500年前頃に中東(具体的にはアナトリア南東部とイランのザグロス山脈)で家畜化されたことが判明し、これは家畜化の特徴を示す証拠を探索する好機となります。

 この研究は、アジアムフロンとパサンのゲノムの塩基配列を解析し、家畜ヒツジと家畜ヤギのゲノムとそれぞれ比較しました。野生集団から家畜集団が選択された痕跡を示すゲノム領域として同定された90領域のうちの20領域は、アジアムフロンとパサンに共通していましたが、選択のパターンが異なっていました。この結果は、ヒツジとヤギには家畜化にさいして共通の遺伝的標的があったにも関わらず、異なる解決策が用いられ、最終的によく似た特定の性質を示すに至った可能性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【遺伝学】家畜化過程における類似した遺伝子標的、異なる解決策がヒツジとヤギの違いを生み出した

 ヒツジとヤギは、家畜化に関係する多くの遺伝的標的が類似しているが、お互いに類似した性質を得るための選択のパターンが異なっていたことが、それぞれの野生近縁種のゲノム解析によって明らかになった。この結果を報告する論文が、今週掲載される。

 これまでにさまざまな家畜が、従順さ、成長の速さ、スタミナといった特定の形質を獲得するために選択的に交配されてきた。ヒツジの野生原種であるアジアムフロン(Ovis orientalis)とヤギの野生原種であるパサン(Capra aegagrus)は、それぞれ約1万500年前に中東(具体的にはアナトリア南東部とイランのザグロス山脈)で家畜化されたことが判明し、家畜化の特徴を示す証拠を探索するまたとない機会が得られた。

 今回、Francois Pompanonたちの研究グループは、アジアムフロンとパサンのゲノムの塩基配列の解読と解析を行い、家畜ヒツジと家畜ヤギのゲノムとそれぞれ比較した。野生集団から家畜集団が選択された痕跡を示すゲノム領域として同定された90領域のうちの20領域はアジアムフロンとパサンに共通していたが、選択のパターンが異なっていた。この結果は、ヒツジとヤギには家畜化に際して共通の遺伝的標的があったにもかかわらず、異なる解決策が用いられ、最終的によく似た特定の性質を示すに至った可能性を示唆している。



参考文献:
Alberto FJ. et al.(2018): Convergent genomic signatures of domestication in sheep and goats. Nature Communications, 9, 813.
http://dx.doi.org/10.1038/s41467-018-03206-y

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