先コロンブス期のアマゾン川流域の人類の居住(追記有)

 これは3月30日分の記事として掲載しておきます。先コロンブス期のアマゾン川流域の人類の居住に関する研究(Souza et al., 2018)が報道されました。この研究は、人工衛星画像を用いて、アマゾン川の支流となる、ブラジルのタパジョース(Tapajós)川上流域を調査し、81ヶ所の考古遺跡と合計104ヶ所の土工事の遺構を新たに発見しました。この研究は、そのうちの24ヶ所の遺跡で地盤調査を行ない、陶磁器・研磨された石斧・人為起源の黒色土(先コロンブス期のタイプの施肥土壌)・貝塚(家庭ごみの捨て場)を発見し、こうした遺跡に人間が居住していたことを確認しました。これらの考古遺跡には、溝に囲まれた小規模な土地(直径約30メートル)から大規模な要塞化された六角形の居留地(直径約400メートル)まで多様なものがあり、要塞化された居留地には、広場を囲む複数の土塁や切通しがあったと考えられています。

 この研究は、既知の土工事の分布と規模に基づいて、コロンブス以前の時代の後期にアマゾン川流域の南縁部の40万平方キロメートル以上の地域に類似の居留地が広がっており、総人口は50~100万人だったと推定しています。またこの研究は、これらの知見に基づき、この地域がコロンブス以前の文化の発展において果たした役割を再評価するよう、提唱しています。そうした再評価では、アマゾン川流域において交流は大きな水路にのみ依拠していたのではなく、道路も用いた複雑な社会ネットワークが構築されており、土木工事が乾季に行なわれるなど、肥沃な土壌の乾燥地域も文化的発展に重要な役割を果たしたのではないか、と推測されています。

 先コロンブス期のアマゾン川流域は手つかずの自然ではなく、大規模な人為的改変がなされていた、との見解は以前より指摘されていました(関連記事)。中には、先コロンブス期のアマゾン川流域における「文明」の存在を主張する見解もありますが(関連記事)、「文明」との評価・定義はさておくとしても、先コロンブス期のアマゾン川流域に人類が多数居住し、大規模に自然を改変していた可能性はきわめて高い、と言えそうです。おそらく、一般的には「未開」と考えられている他の地域でも、同様の事例は少なくないのではないか、と思います。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【考古学】コロンブス以前のアマゾン川流域には人間が広範囲に居住していた

 コロンブス以前の時代、すなわちアメリカ大陸にヨーロッパ人が到来した1490年代よりも前の時代に、人間集団の居住域がアマゾン川流域の南部全体に広がっていたことを示唆する研究論文が、今週掲載される。この論文には、紀元1250~1500年のものとされるタパジョース川上流域の要塞化された村など、新たに発見された土工事の跡について報告されている。この研究結果は、コロンブス以前の時代に1800キロメートルにわたるアマゾン川流域南部が土工事の文化圏であったことを示唆している。

 今回、Jonas Gregorio de Souzaたちの研究グループは、人工衛星画像を用いてブラジルのタパジョース川上流域を調査し、81か所の考古遺跡と合計104か所の土工事の遺構を新たに発見した。同研究グループは、そのうちの24か所の遺跡で地盤調査を行い、陶磁器、研磨された石斧、人為起源の黒色土(コロンブス以前のタイプの施肥土壌)、および貝塚(家庭ごみの捨て場)を発見し、こうした遺跡に人間が居住していたことを確認した。これらの考古遺跡には、溝に囲まれた小規模な土地(直径約30メートル)から大規模な要塞化された六角形の居留地(直径約400メートル)までさまざまなものがあり、要塞化された居留地には、広場を囲む複数の土塁や、切通しがあったと考えられている。

 研究グループは、既知の土工事の分布と規模に基づいて、コロンブス以前の時代の後期にアマゾン川流域の南縁部の40万平方キロメートル以上の地域に類似の居留地が広がっており、総人口は50~100万人だったと推定している。また彼らは、これらの知見に基づいて、この地域がコロンブス以前の文化の発展において果たした役割を再評価することを提唱している。



参考文献:
Souza JG. et al.(2018): Pre-Columbian earth-builders settled along the entire southern rim of the Amazon. Nature Communications, 9, 1125.
http://dx.doi.org/10.1038/s41467-018-03510-7


追記(2018年3月31日)
 ナショナルジオグラフィックでも報道されました。

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