恐竜の絶滅後に夜行性から昼行性へと移行した哺乳類

 恐竜絶滅後の哺乳類の夜行性から昼行性への移行に関する研究(Maor et al., 2017)が公表されました。現在、哺乳類の多くは日中に活動しますが、たとえば色覚など、きわめて優れた昼間捕食者としての魚類・爬虫類・鳥類を支えている特性をほとんど有しておらず、多くの哺乳類の視覚は夜行性の爬虫類や鳥類に近いことが分かっています。こうした所見から「夜行性ボトルネック」説が展開されてきました。これは、古代の哺乳類が、日中に活動していた恐竜との衝突を避けるために、活動を夜間に限定しなければならなかった、とするものです。これによると、哺乳類は、恐竜が絶滅したときに、新しく利用可能になった昼間のニッチに移行できるようになった、とされます。

 この仮説には以前から多少の支持がありましたが、直接的な証拠は得られていませんでした。この研究は、現生のほぼ全ての哺乳類に関して昼夜の行動パターンのデータを収集し、それぞれの種の進化的分岐時期に基づいてその行動の起源を確かめました。その結果、最初の哺乳類は夜行性であり、数千万年後までに、時として日中にも活動するようになったことが明らかになりました。日中に活動する哺乳類の数は、恐竜絶滅の直後に急増しました。オランウータンやマーモセットなどの霊長類は、全哺乳類の中で最も鋭敏な部類の視覚を有していますが、それは、祖先が昼間のライフスタイルに転換した最初の哺乳類の一部であったことによるものと考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古代の哺乳類は恐竜の絶滅後に夜間の活動をやめた

 恐竜の絶滅が、古代の哺乳類に夜行性のライフスタイルから昼間活動量増加への転換を促したことを示した論文が、今週掲載される。

 現在、哺乳類の多くは日中に活動するが、例えば色覚など、極めて優れた昼間捕食者としての魚類、爬虫類、および鳥類を支えている特性をほとんど有していない。実は、多くの哺乳類の視覚は、夜行性の爬虫類や鳥類に近いのである。こうした所見から「夜行性ボトルネック」説が展開されてきた。この説は、古代の哺乳類が、日中に活動していた恐竜との衝突を避けるために、活動を夜間に限定しなければならなかったとするものである。この説によれば、哺乳類は、恐竜が絶滅したときに、新しく利用可能になった昼間のニッチに移行できるようになったとされる。

 この仮説には以前から多少の支持があったが、直接的な証拠は得られていなかった。今回、Roi Maorたちは、現生するほぼ全ての哺乳類科に関して昼夜の行動パターンのデータを収集し、それぞれの種の進化的分岐時期に基づいてその行動の起源を確かめた。その結果、最初の哺乳類は夜行性であり、数千万年後までに、時として日中にも活動するようになったことが明らかになった。日中に活動する哺乳類の数は、恐竜絶滅の直後に急増した。オランウータンやマーモセットなどの霊長類は、全哺乳類の中で最も鋭敏な部類の視覚を有しているが、それは、祖先が昼間のライフスタイルに転換した最初の哺乳類の一部であったことによるものと考えられる。



参考文献:
Maor R. et al.(2017): Temporal niche expansion in mammals from a nocturnal ancestor after dinosaur extinction. Nature Ecology & Evolution, 1, 1889–1895.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-017-0366-5

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