水上生活をしていた新種の恐竜

 水上生活をしていた新種の恐竜に関する研究(Cau et al., 2017)が報道されました。マニラプトル類は鳥類とその最近縁種である獣脚類恐竜が含まれる恐竜分類群で、白亜紀には祖先であるコエルロサウルス類のボディープランから複数系統が分岐し、マニラプトル類のいくつかの系統において生息生態系に関連するいろいろな特徴(たとえば、能動飛翔・巨大化・走行するための特別な適応・草食性)が生じました。この研究は、モンゴルで発見された、白亜紀のカンパニアン期(約7100万~7500万年前)の部分的に岩石に埋没したままのマニラプトル類恐竜の化石を、高分解能シンクロトロン放射光走査装置を用いて調べました。当時、この地域は現在のナイル川流域に似た環境で、砂漠の中を川が流れ、湖もあったようです

 分析の結果、この化石には、上記のような奇妙な特徴が少なからず見られました。こうした特徴の多くは、非鳥類型マニラプトル類恐竜にはほとんど見られないのに、水生や半陸半水生の爬虫類分類群と鳥類分類群に見つかっています。このような特徴については、陸上を二足歩行し、姿勢適応が(カモのような)短い尾の鳥類に似ているものの、(ペンギンとその他の水鳥のように)ひれ足のような前肢を使って水中を移動し、長い首を使って採餌や待ち伏せ狩猟を行なう水陸両生獣脚類恐竜の新種の特徴だ、とこの研究は解釈しています。この化石は、新たな恐竜の亜科(Halszkaraptorinae)に分類され、ドロマエオサウルス類の基部に位置する新規クレードとされています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトから引用(引用1および引用2)です。


【古生物学】水上生活をしていたカモ似の恐竜

 白鳥のような曲がった首とひれ足のような前肢を持ち、少なくとも一定の期間は水中で生息していた新種の恐竜種Halszkaraptor escuillieiについて記述された論文が、今週掲載される。この恐竜は、白亜紀のカンパニアン期(約7100万~7500万年前)に現在のモンゴルにあたる地域で生息していた。

 マニラプトル類は、鳥類とその最近縁種が含まれる恐竜分類群で、白亜紀にはマニラプトル類のいくつかの系統において生息生態系に関連するいろいろな特徴(例えば、能動飛翔、巨大化、走行するための特別な適応、草食性)が生じた。

 今回、Andrea Cauたちの研究グループは、高分解能シンクロトロン放射光走査装置を用いて、部分的に岩石に埋没したままのマニラプトル類恐竜の化石を調べたところ、奇妙な特徴が少なからず見つかった。こうした特徴は、非鳥類型マニラプトル類恐竜にはほとんど見られないのに、水生や半陸半水生の爬虫類分類群と鳥類分類群に見つかっているのだ。

 この奇妙な特徴については、陸上を二足歩行し、姿勢適応が(カモのような)短い尾の鳥類に似ているが、(ペンギンとその他の水鳥のように)ひれ足のような前肢を使って水中を移動し、長い首を使って採餌や待ち伏せ狩猟を行う水陸両生獣脚類恐竜の新種の特徴だとCauたちは解釈している。Cauたちは、これまで謎であった断片的な化石標本2点とH. escuillieiを新たな恐竜の亜科(Halszkaraptorinae)に分類した。


古生物学:シンクロトロンによるスキャンで明らかになった、新たな鳥類様恐竜クレードの水陸両生性の生態形態

古生物学:水鳥型恐竜の出現

 モンゴルの白亜紀層で新たに発見された恐竜は、鳥類様恐竜の新規な亜科に属し、水中生活に適応していたと考えられる。A Cauたちは今回、水陸両生性を示す可能性のあるいくつかの独特な特徴を持つ小型獣脚類Halszkaraptorを記載している。シンクロトロンによるスキャンからは、ドーム状の頭部、ハクチョウに似た長い頸部、くちばしに似た吻部の他、少なくともある程度の時間を水中で過ごしていたことを示唆する複数の適応が明らかになった。著者たちは、今回発見された恐竜を、これまで謎に包まれていた断片的な別の化石標本2点と共に、新たな恐竜亜科Halszkaraptorinaeに分類した。これにより、鳥類をはじめ極めて多様な幅広い形態の恐竜からなる獣脚類マニラプトル類の系統が、よりいっそう多彩なものとなった。



参考文献:
Cau A. et al.(2017): Synchrotron scanning reveals amphibious ecomorphology in a new clade of bird-like dinosaurs. Nature, 552, 7685, 395–399.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24679

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