耳の骨が1~2個多かったジュラ紀の滑空性哺乳類

 ジュラ紀の滑空性哺乳類の耳に関する研究(Han et al., 2017)が公表されました。滑空は独特な移動運動の種類で、中生代の哺乳類で確認されているのは3種のみです。ハラミヤ類は中生代に生息していた哺乳類の1群で、現代のモモンガやムササビによく似た滑空の習性があったと考えられています。こうした滑空するハラミヤ類については、近年2つの新種が報告されています。この研究は、中国で発見された、1億6400万~1億5900万年前頃のジュラ紀に生息していたハラミヤ類の新種について報告しています。この新種の飛膜における毛の詳細は、現生滑空性哺乳類のものにきわめて似ていました。

 また、現代の哺乳類中耳は、鐙骨・槌骨・砧骨という3個の耳小骨によって形成されていますが、この新種の場合、鐙骨・砧骨・槌骨・外鼓骨・上角骨という5個の骨で構成されていました。これは現時点では最古の完成した哺乳類中耳となります。上角骨はこれまで、いかなる哺乳類の中耳にも見いだされたことはなく、各聴骨の形態はいずれも、既知の哺乳類およびそれらの近縁動物のものとは異なっています。この研究は、滑空という移動運動がおそらく真ハラミヤ類に一般的で、中期ジュラ紀に哺乳類の大規模な適応放散があった、との見解を提示しています。また、真ハラミヤ類の聴骨の獲得は、後方の咀嚼運動を可能にする、歯骨と鱗状骨からなる顎関節の形成と関連しており、単孔類および真獣類哺乳類の中耳構造とは別個に進化したに違いない、とも指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古生物学:耳の骨が1~2個多かった古代の滑空性哺乳類

古生物学:耳に5つの聴骨を持つ、真ハラミヤ目に属するジュラ紀の滑空性哺乳類

 ハラミヤ類は恐竜の時代に生息していた哺乳類の1群で、現代のモモンガやムササビによく似た滑空の習性があったと考えられている。こうした滑空するハラミヤ類については、近年2つの新種が記載されており、今回のJ Mengたちによる新種の報告はそれに続くものである。今回記載された種は、1億6400万~1億5900万年前のジュラ紀に中国に生息していたもので、滑空への適応の他にも多くの興味深い特徴が認められた。例えば、その中耳は、哺乳類中耳の進化の興味深い中間点を示している。現代の哺乳類中耳は、鐙骨、槌骨および砧骨の3つの耳小骨によって形成されているが、この滑空性ハラミヤ類の中耳では、さらに下顎の上角骨と頭蓋の外鼓骨が加わり、これまで知られていなかった5小骨系を形成していたと見られる。



参考文献:
Han G. et al.(2017): A Jurassic gliding euharamiyidan mammal with an ear of five auditory bones. Nature, 551, 7681, 451–456.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24483

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