現生人類の自己家畜化
これは2月17日分の記事として掲載しておきます。現生人類(Homo sapiens)の自己家畜化に関する研究(Theofanopoulou et al., 2017)が報道されました。現生人類は自己家畜化した種だ、との見解はそれなりに浸透しているように思います。この研究は、ゲノム比較により、現生人類自己家畜化仮説を検証しています。対象となったのは、イヌ(Canis familiaris)やネコ(Felis catus)やウマ(Equus caballus)やウシ(Bos taurus)といった家畜化された動物と、現代人およびその近縁のホモ属分類群である、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)および種区分未定のデニソワ人(Denisovan)です。
現生人類の自己家畜化は、イヌ・ネコ・ウマ・ウシなどの家畜との類似性から指摘されています。それは、家畜がその近縁野生種との比較でより華奢な骨格を有しているように、現生人類はネアンデルタール人などの近縁ホモ属種と比較して、骨格がより華奢である、という事実から主張されています。さらに、家畜は近縁野生種との比較でより従順(我慢強い、寛容、低い攻撃性)であるという特徴を有しており、現生人類も近縁種と比較してそうなのではないか、と予想されています。
この研究は、家畜と現生人類との間で、従順さや華奢な骨格と関連している遺伝子多様体の集団への定着(選択的一掃)が、家畜と現生人類との間で顕著に重なっていることを明らかにしました。一方で、それぞれの家畜と近縁な野生種では、そうした顕著な重なりは見られませんでした。これは、現生人類自己家畜化仮説の証拠になるだろう、と指摘されています。また、この研究は、家畜化には複数の経路があり得ただろうことから、種間で異なる家畜化過程があった可能性を指摘しつつ、家畜と現生人類において結果として類似した家畜化が進行した可能性を提示しています。
このような、家畜化された動物と現生人類との家畜化関連遺伝子の選択の重なりが、偶然生じたことを否定するために、現代人と近縁な現生種である大型類人猿であるチンパンジー(Pan troglodytes)やゴリラ(Gorilla)やオランウータン(Pongo)のゲノムも比較されました。これら大型類人猿では、正の選択下での家畜化を伴うような遺伝子の顕著な重なりは見られず、現生人類の自己家畜化仮説が改めて支持されました。現生人類の自己家畜化に関しては、協力的行動や向社会的行動の強化も想定されており、現生人類がアフリカから世界中に拡散して(個体数の増加という観点では)大繁栄したのにたいして、ネアンデルタール人やデニソワ人など現生人類とは近縁のホモ属が(その遺伝子はわずかに現生人類の一部集団に継承されたとはいえ)絶滅したのは、協力的行動や向社会的行動が要因かもしれません。
参考文献:
Theofanopoulou C, Gastaldon S, O’Rourke T, Samuels BD, Messner A, Martins PT, et al. (2017) Self-domestication in Homo sapiens: Insights from comparative genomics. PLoS ONE 12(10): e0185306.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0185306
現生人類の自己家畜化は、イヌ・ネコ・ウマ・ウシなどの家畜との類似性から指摘されています。それは、家畜がその近縁野生種との比較でより華奢な骨格を有しているように、現生人類はネアンデルタール人などの近縁ホモ属種と比較して、骨格がより華奢である、という事実から主張されています。さらに、家畜は近縁野生種との比較でより従順(我慢強い、寛容、低い攻撃性)であるという特徴を有しており、現生人類も近縁種と比較してそうなのではないか、と予想されています。
この研究は、家畜と現生人類との間で、従順さや華奢な骨格と関連している遺伝子多様体の集団への定着(選択的一掃)が、家畜と現生人類との間で顕著に重なっていることを明らかにしました。一方で、それぞれの家畜と近縁な野生種では、そうした顕著な重なりは見られませんでした。これは、現生人類自己家畜化仮説の証拠になるだろう、と指摘されています。また、この研究は、家畜化には複数の経路があり得ただろうことから、種間で異なる家畜化過程があった可能性を指摘しつつ、家畜と現生人類において結果として類似した家畜化が進行した可能性を提示しています。
このような、家畜化された動物と現生人類との家畜化関連遺伝子の選択の重なりが、偶然生じたことを否定するために、現代人と近縁な現生種である大型類人猿であるチンパンジー(Pan troglodytes)やゴリラ(Gorilla)やオランウータン(Pongo)のゲノムも比較されました。これら大型類人猿では、正の選択下での家畜化を伴うような遺伝子の顕著な重なりは見られず、現生人類の自己家畜化仮説が改めて支持されました。現生人類の自己家畜化に関しては、協力的行動や向社会的行動の強化も想定されており、現生人類がアフリカから世界中に拡散して(個体数の増加という観点では)大繁栄したのにたいして、ネアンデルタール人やデニソワ人など現生人類とは近縁のホモ属が(その遺伝子はわずかに現生人類の一部集団に継承されたとはいえ)絶滅したのは、協力的行動や向社会的行動が要因かもしれません。
参考文献:
Theofanopoulou C, Gastaldon S, O’Rourke T, Samuels BD, Messner A, Martins PT, et al. (2017) Self-domestication in Homo sapiens: Insights from comparative genomics. PLoS ONE 12(10): e0185306.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0185306
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