アウストラロピテクス属の出現より前の人類進化についてのまとめ
これは1月10日分の記事として掲載しておきます。今年(2018年)は、このブログで取り上げてきた古人類学関連の記事を整理していこう、と考えています。人類進化について私見をまとめてからもう10年近く経過しましたから(関連記事)、そろそろ情報を整理し、理解しやすくしよう、というわけです。これまでにも、対象を限定して、そうした目的でいくつかまとめ記事を掲載してきました。いきなり人類進化史全体を見通した情報整理は難しいので、これまでのように対象を限定したまとめ記事を掲載していくつもりです。何とか今年中には人類進化史に関する私見をまとめたいものですが、現在の気力・能力・時間的余裕からすると、難しそうではあります。今回は、以前(2014年9月)にまとめたので(関連記事)やりやすい、アウストラロピテクス属の出現より前の人類進化について、このブログの記事を整理していきます。人類進化史のまとめには気力を要するので、まずは負担の軽いところからやって気力を高めていこう、というわけです。
前回のまとめ以降、アウストラロピテクス属の出現より前の人類進化について、「派手な」発見はないと言えるかもしれませんが、このブログで取り上げた分だけを見ても、研究は着実に進んでいると思います。最も注目されるのは、バルカン半島で発見された700万年以上前の霊長類化石が、チンパンジー(Pan troglodytes)およびボノボ(Pan paniscus)の系統よりも人類系統の方に近縁かもしれない、と指摘した研究です(関連記事)。この研究では、現生類人猿の系統と現代人系統を含むヒト科系統の主要な分岐は、アフリカ北部での砂漠の拡大やヨーロッパの地中海沿岸地域の草原の拡大といった環境変化を背景として、アフリカ以外の地で起きたのではないか、と示唆されています。これまで、ホモ属ではない人類系統が出アフリカを果たした確実な証拠はない、とされていたのですが、もしこの見解が妥当だとすると、人類進化史は大きく書き換えられることになります。570万年前頃のクレタ島西部の足跡は初期人類系統のものだ、との研究もあり(関連記事)、上述の見解と整合的と言えるかもしれません。最初期の人類系統はユーラシアで進化したかもしれない、というわけですが、このような見解が今後有力説と認められる可能性は低いだろう、と思います。
ケニアでは人類およびアフリカの現生類人猿の共通祖先の近縁種と推測される1300万年前頃の類人猿化石が発見されており(関連記事)、エチオピアで発見されたゴリラ属(Gorilla)の祖先候補となる類人猿化石の年代は800万年以上前と推定されています(関連記事)。やはり、人類とアフリカの現生類人猿(ゴリラ属とチンパンジーとボノボ)は、中期更新世以降にアフリカで進化したと考えるのが妥当ではないか、と思います。
人類と他の類人猿とを分かつ決定的な特徴は常習的な直立二足歩行とされていますが、以前は、地上への進出との関連で常習的な直立二足歩行が説明されていました。しかし近年では、それはすでに樹上で始まっていた、との見解が有力になっているように思われます。チンパンジーの研究からは、類人猿の地上生活は季節的なものでエネルギー節約のためであり、地上生活と常習的な直立二足歩行の始まりを関連づける必要はないだろう、と指摘されています(関連記事)。エタノールを効率的に代謝できる変異の推定出現時期に関する研究からも、人類・チンパンジー・ゴリラの共通祖先は、地上での活動を増やし適応していくことで生き延びた可能性が指摘されています(関連記事)。地上では樹上よりも発酵の進んでいる果物を見つける可能性が高いので、エタノール代謝能力を高めるような変異が生存に有利に働き、集団に定着していったのではないか、というわけです。
直立二足歩行に関しては、現代人とチンパンジーとの間で類似性が指摘されており(関連記事)、アウストラロピテクス属よりも前のアルディピテクス属のラミダス(Ardipithecus ramidus)に関する詳細な研究(関連記事)からは、人類・チンパンジー・ゴリラの最終共通祖先の歩行形態は現生のチンパンジーとゴリラに見られるナックルウォークだっただろう、とする有力説には疑問が投げかけられていることと関連してくるのではないか、と思います。これと関連しますが、現代人・化石人類・現生類人猿も含む霊長類・化石類人猿の手の比較からも、現代人とチンパンジー・ゴリラとの(もしくは現代人とチンパンジーとの)最終共通祖先のモデルとして、現生類人猿を想定することの問題点が指摘されています(関連記事)。こうした問題は、人類・チンパンジー・ゴリラの進化関係についても言えることで、チンパンジー(およびボノボ)はゴリラよりも人類の方と系統的には近縁ですが、特定の行動・形質に関しては、人類の祖先のモデルとしてチンパンジーよりもゴリラの方が適しているかもしれない、と指摘されています(関連記事)。
人類の社会構造については、化石・遺物からもある程度は推測可能ですが、限界もあるので、現代人と近縁の霊長類の事例も大いに参考になると言えるでしょう。大型類人猿(チンパンジー・ボノボ・ゴリラ・オランウータン)のY染色体とミトコンドリアのDNA解析・比較からは、人類の社会構造は配偶形態においてチンパンジーよりもゴリラの方に近かったのではないか、と推測されています。人類はその進化史において配偶形態では、「乱婚」社会は経験せず、「ハーレム」社会は経験したことがあるかもしれない、というわけです(関連記事)。
前回のまとめ以降、アウストラロピテクス属の出現より前の人類進化について、「派手な」発見はないと言えるかもしれませんが、このブログで取り上げた分だけを見ても、研究は着実に進んでいると思います。最も注目されるのは、バルカン半島で発見された700万年以上前の霊長類化石が、チンパンジー(Pan troglodytes)およびボノボ(Pan paniscus)の系統よりも人類系統の方に近縁かもしれない、と指摘した研究です(関連記事)。この研究では、現生類人猿の系統と現代人系統を含むヒト科系統の主要な分岐は、アフリカ北部での砂漠の拡大やヨーロッパの地中海沿岸地域の草原の拡大といった環境変化を背景として、アフリカ以外の地で起きたのではないか、と示唆されています。これまで、ホモ属ではない人類系統が出アフリカを果たした確実な証拠はない、とされていたのですが、もしこの見解が妥当だとすると、人類進化史は大きく書き換えられることになります。570万年前頃のクレタ島西部の足跡は初期人類系統のものだ、との研究もあり(関連記事)、上述の見解と整合的と言えるかもしれません。最初期の人類系統はユーラシアで進化したかもしれない、というわけですが、このような見解が今後有力説と認められる可能性は低いだろう、と思います。
ケニアでは人類およびアフリカの現生類人猿の共通祖先の近縁種と推測される1300万年前頃の類人猿化石が発見されており(関連記事)、エチオピアで発見されたゴリラ属(Gorilla)の祖先候補となる類人猿化石の年代は800万年以上前と推定されています(関連記事)。やはり、人類とアフリカの現生類人猿(ゴリラ属とチンパンジーとボノボ)は、中期更新世以降にアフリカで進化したと考えるのが妥当ではないか、と思います。
人類と他の類人猿とを分かつ決定的な特徴は常習的な直立二足歩行とされていますが、以前は、地上への進出との関連で常習的な直立二足歩行が説明されていました。しかし近年では、それはすでに樹上で始まっていた、との見解が有力になっているように思われます。チンパンジーの研究からは、類人猿の地上生活は季節的なものでエネルギー節約のためであり、地上生活と常習的な直立二足歩行の始まりを関連づける必要はないだろう、と指摘されています(関連記事)。エタノールを効率的に代謝できる変異の推定出現時期に関する研究からも、人類・チンパンジー・ゴリラの共通祖先は、地上での活動を増やし適応していくことで生き延びた可能性が指摘されています(関連記事)。地上では樹上よりも発酵の進んでいる果物を見つける可能性が高いので、エタノール代謝能力を高めるような変異が生存に有利に働き、集団に定着していったのではないか、というわけです。
直立二足歩行に関しては、現代人とチンパンジーとの間で類似性が指摘されており(関連記事)、アウストラロピテクス属よりも前のアルディピテクス属のラミダス(Ardipithecus ramidus)に関する詳細な研究(関連記事)からは、人類・チンパンジー・ゴリラの最終共通祖先の歩行形態は現生のチンパンジーとゴリラに見られるナックルウォークだっただろう、とする有力説には疑問が投げかけられていることと関連してくるのではないか、と思います。これと関連しますが、現代人・化石人類・現生類人猿も含む霊長類・化石類人猿の手の比較からも、現代人とチンパンジー・ゴリラとの(もしくは現代人とチンパンジーとの)最終共通祖先のモデルとして、現生類人猿を想定することの問題点が指摘されています(関連記事)。こうした問題は、人類・チンパンジー・ゴリラの進化関係についても言えることで、チンパンジー(およびボノボ)はゴリラよりも人類の方と系統的には近縁ですが、特定の行動・形質に関しては、人類の祖先のモデルとしてチンパンジーよりもゴリラの方が適しているかもしれない、と指摘されています(関連記事)。
人類の社会構造については、化石・遺物からもある程度は推測可能ですが、限界もあるので、現代人と近縁の霊長類の事例も大いに参考になると言えるでしょう。大型類人猿(チンパンジー・ボノボ・ゴリラ・オランウータン)のY染色体とミトコンドリアのDNA解析・比較からは、人類の社会構造は配偶形態においてチンパンジーよりもゴリラの方に近かったのではないか、と推測されています。人類はその進化史において配偶形態では、「乱婚」社会は経験せず、「ハーレム」社会は経験したことがあるかもしれない、というわけです(関連記事)。
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