子の新しい遺伝学的変異に影響を及ぼす親の年齢

 これは12月15日分の記事として掲載しておきます。子の新しい遺伝学的変異に影響を及ぼす親の年齢に関する研究(Jónsson et al., 2017)が公表されました。この研究は、親の年齢や性別がヒトのde novo変異(DNM、ある家系に最初に現れる遺伝子変化で、両親のいずれかの卵あるいは精子に生じた1変異が原因)の変化を引き起こす仕組みを理解するために、1万4688人のアイスランド人(両親と子の3人組から構成される1548組で、そのうちの225組については少なくとも1人の孫を含みます)の全ゲノム塩基配列を解析しました。

 その結果、10万8778個の高品質DNMが突き止められ、家系当たり平均70.3個のDNMが存在することが明らかになりました。母系のDNM数は年齢が1歳上昇すると0.37個増加し、父系のDNM数は年齢が1歳上昇すると1.51個増加し、母系の約4倍となります。また、クラスターを形成した変異の数は父親の年齢よりも母親の年齢の上昇に伴って急速に増加することと、母系のDNMクラスターが存在するゲノム範囲は父系のものよりも大規模であることも明らかになりました。さらに、母系のDNMの種類は加齢に伴い大きく変化しました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトから引用(引用1および引用2)です。


【遺伝学】親の年齢が子の新しい遺伝学的変異に影響を及ぼす

 親(特に父親)の年齢が高くなるほど、その子の新しい遺伝学的変異の発生率が高くなるとする論文が今週掲載される。また、ヒトのde novo変異(DNM、ある家系に最初に現れる遺伝子変化で、両親のいずれかの卵あるいは精子に生じた1変異が原因)についてのこれまでで最も大規模な供給源も報告された。ヒトゲノムに塩基配列多様性を生み出す変異過程を理解することは、遺伝医学や進化研究に最も重要である。

 Daniel Gudbjartssonたちは、親の年齢や性別がDNMの変化を引き起こす仕組みを理解するために、1万4688人のアイスランド人(両親と子の3人組から構成される1548組。そのうちの225組については少なくとも1人の孫を含む)の全ゲノム塩基配列の解析を行った。10万8778個の高品質DNMが突き止められ、家系当たり平均70.3個のDNMが存在することが分かった。母系のDNM数は年齢が1歳上昇すると0.37個増加したが、これは父系のDNM数は年齢が1歳上昇すると1.51個増加したことと比較すると、4分の1にすぎない。また、クラスターを形成した変異の数は父親の年齢よりも母親の年齢の上昇に伴って急速に増加すること、母系のDNMクラスターが存在するゲノム範囲は父系のものよりも大規模であることも分かった。さらに、母系のDNMの種類は加齢に伴い大きく変化した。


遺伝学:アイスランド人の両親と子の1548トリオで見られた、ヒト生殖系列de novo変異に及ぼす親の影響

遺伝学:親の年齢が新しい変異に影響を及ぼす

 D Gudbjartssonたちは今回、両親の年齢や性別がde novo変異(DNM)の発生率や範囲にどのような影響を及ぼすかを調べた。アイスランド人1万4688人(両親と子で構成される1548トリオを含み、そのうちの225トリオについては少なくとも1人の孫の世代を含む)のゲノムの塩基配列解読が行われた。その結果、これまでで利用可能なものの中で最も大規模なヒトDNMのデータセットが得られ、10万8778個の高品質DNMが明らかになり、1トリオ当たり平均70.3個のDNMが存在することが分かった。また、どちらの親の年齢が上昇しても、DNMの種類の変化と、DNM数の増加が見られるが、母親の年齢に比べて父親の年齢による増加率の方が高いことが見いだされた。



参考文献:
Jónsson H. et al.(2017): Parental influence on human germline de novo mutations in 1,548 trios from Iceland. Nature, 549, 7673, 519–522.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24018

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