雷による放射性同位体の生成
これは11月30日分の記事として掲載しておきます。雷による放射性同位体の生成に関する研究(Enoto et al., 2017)が公表されました。雷雲では、相対論的電子によってエネルギーが非常に高いγ線が放出され、理論的にはこうしたγ線の大気中の原子や分子との相互作用により、放射性同位体・中性子・陽電子などが生成される可能性があり、最近、中性子や陽電子が観測されたとする弱い証拠がいくつか報告されました。この研究は、4台の放射線検出器を使い、2017年2月6日に日本国内で雷雨が発生したさいに、中性子と陽電子の信号を検出しました。この観測結果から、雷が引き金となって生成されたガンマ線光子のバーストが大気中の原子核と衝突して光核反応が起こり、その結果、中性子と不安定な放射性同位体が生成され、この放射性同位体が崩壊するさいに陽電子が放出された、との見解が提示されています。炭素14などの同位体の自然の生成経路については、大気中での宇宙線の相互作用のみが判明していましたが、雷もその生成経路だった、というわけです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
【物理学】雷による放射性同位体の生成
雷が引き金となって大気中で核反応が起こり、放射性同位体が生成されることを明らかにした論文が、今週掲載される。
雷雲の中で生じるガンマ線のエネルギーにより大気中で光核反応が起こり、その結果、中性子が放出され、究極的には陽電子(電子の反物質)が放出されるという仮説が提示されている。しかし、この光核反応の観測は十分になされていなかった。
京都大学の榎戸輝揚(えのと・てるあき)たちの研究グループは、4台の放射線検出器を使って、2017年2月6日に日本国内で雷雨が発生した際に中性子と陽電子の信号を検出した。榎戸たちは、この観測データを基に以下の考えを示している。雷が引き金となって生成されたガンマ線光子のバーストが大気中の原子核と衝突して、光核反応が起こり、その結果、中性子と不安定な放射性同位体が生成され、この放射性同位体が崩壊する際に陽電子が放出されたというのだ。13C、14C、15Nなどの同位体の自然の生成経路については、大気中での宇宙線の相互作用のみが判明しているが、榎戸たちは、雷もその生成経路であることが今回の発見によって分かったと考えている。
大気化学:雷放電によって引き起こされる光核反応
大気化学:雷雨の中で放射性同位体が生成される
雷雲では、相対論的電子によってエネルギーが非常に高いγ線が放出され、理論的にはこうしたγ線の大気中の原子や分子との相互作用によって、放射性同位体、中性子、陽電子などが生成される可能性がある。最近、中性子や陽電子が観測されたとする弱い証拠がいくつか報告された。今回、榎戸輝揚(京都大学)たちは、2017年2月6日に日本の沿岸域で雷雨を観測し、γ線フラッシュに伴って、電子–陽電子対消滅の明確な特徴と、中性子捕獲により励起した核の脱励起によって生じたγ線が見られたことを報告している。著者たちは、雷の後、放射性同位体のβ+崩壊によって陽電子が生成されたと結論している。
参考文献:
Enoto T. et al.(2017): Photonuclear reactions triggered by lightning discharge. Nature, 551, 7681, 481–484.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24630
【物理学】雷による放射性同位体の生成
雷が引き金となって大気中で核反応が起こり、放射性同位体が生成されることを明らかにした論文が、今週掲載される。
雷雲の中で生じるガンマ線のエネルギーにより大気中で光核反応が起こり、その結果、中性子が放出され、究極的には陽電子(電子の反物質)が放出されるという仮説が提示されている。しかし、この光核反応の観測は十分になされていなかった。
京都大学の榎戸輝揚(えのと・てるあき)たちの研究グループは、4台の放射線検出器を使って、2017年2月6日に日本国内で雷雨が発生した際に中性子と陽電子の信号を検出した。榎戸たちは、この観測データを基に以下の考えを示している。雷が引き金となって生成されたガンマ線光子のバーストが大気中の原子核と衝突して、光核反応が起こり、その結果、中性子と不安定な放射性同位体が生成され、この放射性同位体が崩壊する際に陽電子が放出されたというのだ。13C、14C、15Nなどの同位体の自然の生成経路については、大気中での宇宙線の相互作用のみが判明しているが、榎戸たちは、雷もその生成経路であることが今回の発見によって分かったと考えている。
大気化学:雷放電によって引き起こされる光核反応
大気化学:雷雨の中で放射性同位体が生成される
雷雲では、相対論的電子によってエネルギーが非常に高いγ線が放出され、理論的にはこうしたγ線の大気中の原子や分子との相互作用によって、放射性同位体、中性子、陽電子などが生成される可能性がある。最近、中性子や陽電子が観測されたとする弱い証拠がいくつか報告された。今回、榎戸輝揚(京都大学)たちは、2017年2月6日に日本の沿岸域で雷雨を観測し、γ線フラッシュに伴って、電子–陽電子対消滅の明確な特徴と、中性子捕獲により励起した核の脱励起によって生じたγ線が見られたことを報告している。著者たちは、雷の後、放射性同位体のβ+崩壊によって陽電子が生成されたと結論している。
参考文献:
Enoto T. et al.(2017): Photonuclear reactions triggered by lightning discharge. Nature, 551, 7681, 481–484.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24630
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