39億5000万年前頃の生命体の痕跡
これは10月4日分の記事として掲載しておきます。39億5000万年前頃の生命体の痕跡に関する研究(Tashiro et al., 2017)が報道されました。朝日新聞でも報道されています。地球史の初期に生命体が存在していたことを示す証拠はたいへん少ないのですが、最近では、日光が届く浅瀬に生息するストロマトライトや、深海の熱水噴出孔に生息する細菌など、約37億年前にはすでに多種多様な生物が存在していたことを裏づける証拠が示されており、カナダのケベック州北部の37億7000万年前頃の事例などが知られています(関連記事)。最初期の生命体の証拠が少ないその理由として、原始生代(約40億~36億年前)の岩石の発見例がわずかで、保存状態も悪いことが指摘されています。38~37億年前と年代決定されたグリーンランド南西部のイスア地球表層地帯で出土した堆積岩の同位体分析からは、この堆積岩に含まれるグラファイト(炭素から構成される元素鉱物)粒が生物起源である(生物の活動によって生じた)可能性が示唆されています。しかし、ほぼ同年代のアキリア(グリーンランド)とヌブアギトゥク(カナダ)の岩石地層に関する最近の研究では、生物起源グラファイトは発見されていません。
この研究は、カナダの北ラブラドル地域のサグレックブロックで出土した、最古の変成堆積岩として知られる約39億5000万年前の岩石に含まれるグラファイトを調べ、変成堆積岩の詳細な地質学的分析を実施し、グラファイトと炭酸塩の濃度と炭素同位体組成を測定しました。その結果、このグラファイトが生物起源であることが明らかになり、グラファイトの結晶化温度と母岩の変成温度がほぼ一致していることから、グラファイトが後の時代のコンタミネーションによって生じたものではない、と指摘されています。これは海に生息していた微生物だったと考えられています。変成堆積岩から生物起源グラファイトが発見されたことで、グラファイトを産生していた生物の地球化学的研究が行なわれ、その結果として地球上の初期生物に関する手がかりがさらに得られるようになる可能性がある、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトから引用(引用1および引用2)です。
【化石】39億5000万年前の岩石に生命体の痕跡
カナダの北ラブラドル地域で出土した堆積岩中の炭素質物質と炭酸塩の炭素同位体組成の分析が行われ、地球上には39億5000万年前から有機生命体が存在していたことを示唆され、これまでに判明したものの中で最も古い生命体の一部となる可能性が浮上している。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
地球史の初期に生命体が存在していたことを示す証拠は非常に少なく、その理由として、原始生代(約36~40億年前)の岩石の発見例がわずかで、保存状態も悪いことが挙げられる。37~38億年前と年代決定されたグリーンランド南西部のイスア地球表層地帯で出土した堆積岩の同位体分析からは、この堆積岩に含まれるグラファイト粒が生物起源である(生物の活動によって生じた)可能性が示唆されている。しかし、ほぼ同年代のアキリア(グリーンランド)とヌブアギトゥク(カナダ)の岩石地層に関する最近の研究では、生物起源グラファイトは発見されていない。
今回、東京大学の小宮剛(こみや・つよし)たちの研究グループは、北ラブラドル地域のサグレックブロックで出土した最古の変成堆積岩として知られる約39億5000万年前の岩石に含まれるグラファイトを調べた。今回の研究では、この変成堆積岩の詳細な地質学的分析が行われ、グラファイトと炭酸塩の濃度と炭素同位体組成が測定された。その結果、このグラファイトが生物起源であることが明らかになり、小宮たちは、グラファイトの結晶化温度と母岩の変成温度がほぼ一致しており、このことはグラファイトが後の時代のコンタミネーションによって生じたものではないことを示していると指摘している。
小宮たちは、この変成堆積岩から生物起源グラファイトが発見されたことで、グラファイトを産生していた生物の地球化学的研究が行われ、その結果として地球上の初期生物に関する手掛かりがさらに得られるようになる可能性があるという考えを示している。
進化学:カナダ・ラブラドルの39億5000万年前の堆積岩から発見された初期の生命の痕跡
進化学:地球誕生の時期に迫る最古の生命の証拠
地球上の有機生命体の起源は、既知で最古の堆積岩に見いだされた証拠によって、年代がさかのぼりつつある。小宮剛(東京大学)たちは今回、カナダ・ラブラドルの堆積岩に有機炭素が存在し、グラファイトと炭酸塩の安定同位体比の間に大きな分別が見られることから、有機生命体の存在した年代が39億5000万年以上前までさかのぼると主張している。最近の研究では、日光が届く浅瀬に生息するストロマトライトや、深海の熱水噴出孔に生息する細菌など、約37億年前にはすでに多種多様な生物が存在していたことを裏付ける証拠が示されており、今回の研究はこれらの結果と合わせて、生命にはそのすみかである地球に匹敵するほど長い歴史があることを示している。
参考文献:
Tashiro T. et al.(2017): Early trace of life from 3.95 Ga sedimentary rocks in Labrador, Canada. Nature, 549, 7673, 516–518.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24019
この研究は、カナダの北ラブラドル地域のサグレックブロックで出土した、最古の変成堆積岩として知られる約39億5000万年前の岩石に含まれるグラファイトを調べ、変成堆積岩の詳細な地質学的分析を実施し、グラファイトと炭酸塩の濃度と炭素同位体組成を測定しました。その結果、このグラファイトが生物起源であることが明らかになり、グラファイトの結晶化温度と母岩の変成温度がほぼ一致していることから、グラファイトが後の時代のコンタミネーションによって生じたものではない、と指摘されています。これは海に生息していた微生物だったと考えられています。変成堆積岩から生物起源グラファイトが発見されたことで、グラファイトを産生していた生物の地球化学的研究が行なわれ、その結果として地球上の初期生物に関する手がかりがさらに得られるようになる可能性がある、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトから引用(引用1および引用2)です。
【化石】39億5000万年前の岩石に生命体の痕跡
カナダの北ラブラドル地域で出土した堆積岩中の炭素質物質と炭酸塩の炭素同位体組成の分析が行われ、地球上には39億5000万年前から有機生命体が存在していたことを示唆され、これまでに判明したものの中で最も古い生命体の一部となる可能性が浮上している。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
地球史の初期に生命体が存在していたことを示す証拠は非常に少なく、その理由として、原始生代(約36~40億年前)の岩石の発見例がわずかで、保存状態も悪いことが挙げられる。37~38億年前と年代決定されたグリーンランド南西部のイスア地球表層地帯で出土した堆積岩の同位体分析からは、この堆積岩に含まれるグラファイト粒が生物起源である(生物の活動によって生じた)可能性が示唆されている。しかし、ほぼ同年代のアキリア(グリーンランド)とヌブアギトゥク(カナダ)の岩石地層に関する最近の研究では、生物起源グラファイトは発見されていない。
今回、東京大学の小宮剛(こみや・つよし)たちの研究グループは、北ラブラドル地域のサグレックブロックで出土した最古の変成堆積岩として知られる約39億5000万年前の岩石に含まれるグラファイトを調べた。今回の研究では、この変成堆積岩の詳細な地質学的分析が行われ、グラファイトと炭酸塩の濃度と炭素同位体組成が測定された。その結果、このグラファイトが生物起源であることが明らかになり、小宮たちは、グラファイトの結晶化温度と母岩の変成温度がほぼ一致しており、このことはグラファイトが後の時代のコンタミネーションによって生じたものではないことを示していると指摘している。
小宮たちは、この変成堆積岩から生物起源グラファイトが発見されたことで、グラファイトを産生していた生物の地球化学的研究が行われ、その結果として地球上の初期生物に関する手掛かりがさらに得られるようになる可能性があるという考えを示している。
進化学:カナダ・ラブラドルの39億5000万年前の堆積岩から発見された初期の生命の痕跡
進化学:地球誕生の時期に迫る最古の生命の証拠
地球上の有機生命体の起源は、既知で最古の堆積岩に見いだされた証拠によって、年代がさかのぼりつつある。小宮剛(東京大学)たちは今回、カナダ・ラブラドルの堆積岩に有機炭素が存在し、グラファイトと炭酸塩の安定同位体比の間に大きな分別が見られることから、有機生命体の存在した年代が39億5000万年以上前までさかのぼると主張している。最近の研究では、日光が届く浅瀬に生息するストロマトライトや、深海の熱水噴出孔に生息する細菌など、約37億年前にはすでに多種多様な生物が存在していたことを裏付ける証拠が示されており、今回の研究はこれらの結果と合わせて、生命にはそのすみかである地球に匹敵するほど長い歴史があることを示している。
参考文献:
Tashiro T. et al.(2017): Early trace of life from 3.95 Ga sedimentary rocks in Labrador, Canada. Nature, 549, 7673, 516–518.
http://dx.doi.org/10.1038/nature24019
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