光田剛編『現代中国入門』

 これは9月24日分の記事として掲載しておきます。ちくま新書の一冊として、筑摩書房から2017年5月に刊行されました。本書は、歴史・現代文化・国際関係・軍事など、さまざまな観点から現代中国を論じています。歴史に関しては、やはり近現代史が中心となるのですが、現代中国の前提として、前近代史についても随所で言及されています。台湾・中華民国についての言及が多いのが本書の特徴で、台湾の近現代史から、近現代における複雑な東アジア世界の動向・東アジア世界の人々の世界観の形成・現代の諸問題などを浮き彫りにしよう、という意図があるのかもしれません。

 日本語の一般向け書籍で、主要な読者として日本人を想定しているからか、中国と「外部」という問題設定が大きく取り上げられており、日本人が中国について調べたり考えたりするうえで必要と思われる知見・論点が取り上げられているのではないか、と思います。中国について、日本人は「正しく恐れる」ことが大切だ、との指摘もありましたが、本当にその通りだと思います。中国について、過大評価も過小評価も、過度に脅威を煽ることも楽観視も禁物なのでしょう。とはいっても、一般論としてそのように言えても、実践はなかなか難しいわけですが。

 文学・映画・絵画などの現代文化や、ジェンダー観の変容や、近現代において中国では否定的に考えられてきた儒教の復興など、多様な項目が取り上げられており、本書はなかなか興味深い中国入門になっていると思います。ただ、随所で言及されているとはいえ、政治・経済・社会問題に特化した論考がなかったのは残念でした。また、冒頭でも断りがありますが、中国の少数民族について特化した論考がなかったのも残念でした。まあ、新書一冊で現代中国について網羅的に取り上げるのは難しいので、あまり論じられない観点からの解説を意図していたのかもしれませんが。

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