メソアメリカ最古級の人骨
これは9月12日分の記事として掲載しておきます。メソアメリカ最古級の人骨に関する研究(Stinnesbeck et al., 2017)が報道されました。この人骨については、7年前にこのブログで取り上げました(関連記事)。この研究が年代を測定したのは、メキシコ合衆国キンタナロー(Quintana Roo)州のトゥルム(Tulum)遺跡近くのチャンホル(Chan Hol)海中洞窟で発見された人骨です。人骨の年代は、骨盤の上の石筍を試料とするウラン-トリウム法では11311±370年前までさかのぼります。しかし、二次生成物の同位体分析では13000年前頃までさかのぼる可能性があります。いずれにしても、この人骨は人類遺骸としてはメソアメリカ最古級となり、人類は後期更新世にはすでにメソアメリカ東部にまで到達していたことになります。ただ、この人物が死亡して以降の気候変化が年代測定結果に影響を及ぼした可能性も指摘されています。
アメリカ大陸への人類最初の移住について、20世紀後半には、クローヴィス(Clovis)文化の担い手が最初の移住者だとするクローヴィス最古説が主流でした。しかし20世紀末以降、アメリカ大陸におけるクローヴィス文化以前の人類の痕跡が相次いで報告されていることから、クローヴィス最古説を否定する研究者が増えつつあり、クローヴィス最古説はもはや否定された過去の仮説と言ってよいでしょう。 しかし、だからといってこの問題に関して新たな共通認識が形成されたとも言い難い状況であり、その年代や拡散の速度・経路などをめぐって、議論が続いています。
チャンホル洞窟遺跡の人骨は、人類のメソアメリカ東部への到達が13000年前頃までさかのぼる直接的証拠になるかもしれない、という意味で注目されます。アメリカ大陸への人類最初の移住時期・経路については、大きな関心が寄せられてきました。近年では、アメリカ大陸最初の人類は更新世末期にベーリンジア(ベーリング陸橋)からアメリカ大陸西岸を南下したのではないか、との見解(沿岸仮説)が有力になっています(関連記事)。その年代がいつかはまだ確定していませんが、チャンホル洞窟の人骨の年代測定結果は、人類のアメリカ大陸東岸への進出が最初の移住から大きく遅れたわけではないことを示唆している、とも解釈できるように思います。
参考文献:
Stinnesbeck W, Becker J, Hering F, Frey E, González AG, Fohlmeister J, et al. (2017) The earliest settlers of Mesoamerica date back to the late Pleistocene. PLoS ONE 12(8): e0183345.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0183345
アメリカ大陸への人類最初の移住について、20世紀後半には、クローヴィス(Clovis)文化の担い手が最初の移住者だとするクローヴィス最古説が主流でした。しかし20世紀末以降、アメリカ大陸におけるクローヴィス文化以前の人類の痕跡が相次いで報告されていることから、クローヴィス最古説を否定する研究者が増えつつあり、クローヴィス最古説はもはや否定された過去の仮説と言ってよいでしょう。 しかし、だからといってこの問題に関して新たな共通認識が形成されたとも言い難い状況であり、その年代や拡散の速度・経路などをめぐって、議論が続いています。
チャンホル洞窟遺跡の人骨は、人類のメソアメリカ東部への到達が13000年前頃までさかのぼる直接的証拠になるかもしれない、という意味で注目されます。アメリカ大陸への人類最初の移住時期・経路については、大きな関心が寄せられてきました。近年では、アメリカ大陸最初の人類は更新世末期にベーリンジア(ベーリング陸橋)からアメリカ大陸西岸を南下したのではないか、との見解(沿岸仮説)が有力になっています(関連記事)。その年代がいつかはまだ確定していませんが、チャンホル洞窟の人骨の年代測定結果は、人類のアメリカ大陸東岸への進出が最初の移住から大きく遅れたわけではないことを示唆している、とも解釈できるように思います。
参考文献:
Stinnesbeck W, Becker J, Hering F, Frey E, González AG, Fohlmeister J, et al. (2017) The earliest settlers of Mesoamerica date back to the late Pleistocene. PLoS ONE 12(8): e0183345.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0183345
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