農業用殺虫剤への曝露によって生じる胎児への危険性

 これは8月31日分の記事として掲載しておきます。農業用殺虫剤への曝露によって生じる胎児への危険性に関する研究(Larsen et al., 2017)が公表されました。これまでの研究で、殺虫剤による健康への悪影響が農業従事者に出ていると明らかになっていますが、農業地域の周辺住民がどのような影響を受けているのか、まだ明らかになっていません。この研究は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンホアキン・バレー地域における1997~2011年の約50万人の出生記録と殺虫剤の使用量を分析し、殺虫剤への曝露と出産結果の関係を調べました。サンホアキン・バレー地域の中心的産業は農業です。この研究は、出産結果として出生時体重・妊娠期間・出生異常に着目しました。

 その結果、妊娠中に殺虫剤が大量に使用された状態(サンプル全体の上位5%、または殺虫剤の使用量が4200 kg以上)に曝露された場合、出産結果(出生時体重・妊娠期間・出生異常に関連するもの)に悪影響が生じる確率が、5~9%上昇すると明らかになりました。農業用殺虫剤に曝露された母親から生まれた子供には悪い影響が出る可能性があるものの、それはひじょうに高いレベルの曝露があった場合に限られる、というわけです。この研究は、危険性の最も高い人々に的を絞った政策介入を実施することで、殺虫剤に関連する出生異常を効果的に減らせる可能性がある、との見解を提示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【健康科学】農業用殺虫剤への曝露によって生じるリスクの推

 妊娠中に農業用殺虫剤に曝露された母親から生まれた子どもには悪い影響が出る可能性があるが、それは非常に高いレベルの曝露があった場合に限られるという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、サンホアキン・バレー地域(米国カリフォルニア州)で収集されたデータセットを評価して得られたもので、農業用殺虫剤に関連する出生異常を減らす政策の対象として恩恵を受ける可能性のある小規模な集団を明らかにしている。

 これまでの研究では、殺虫剤による健康への悪影響が農業従事者に出ていることが明らかになっているが、農業地域の周辺住民がどのような影響を受けているのかは明らかになっていない。今回、Ashley Larsenたちの研究グループは、農業中心のサンホアキン・バレー地域における1997~2011年の約50万人の出生記録と殺虫剤の使用量を分析して、殺虫剤への曝露と出産結果の関係を調べた。この研究では、出産結果として出生時体重、妊娠期間、出生異常に着目した。

 今回の研究で、妊娠中に殺虫剤が非常に大量に使用された状態(サンプル全体の上位5%、または殺虫剤の使用量が4200 kg以上)に曝露された場合、出産結果(出生時体重、妊娠期間、出生異常に関連するもの)に悪影響が生じる確率が5~9%上昇することが明らかになった。Larsenたちは、リスクの最も高い人々に的を絞った政策介入を実施することで、殺虫剤に関連する出生異常を効果的に減らせる可能性がある、という考えを示している。



参考文献:
Larsen AE, Gaines SD, and Deschênes O.(2017): Agricultural pesticide use and adverse birth outcomes in the San Joaquin Valley of California. Nature Communications, 8, 302.
http://dx.doi.org/10.1038/s41467-017-00349-2

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