森恒二『創世のタイガ』第1巻(講談社)
これは8月27日分の記事として掲載しておきます。本書は2017年8月に刊行されました。ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)について検索していたら、本作にネアンデルタール人も登場すると知ったので、購入してみました。本作は『イブニング』にて連載中ですが、とりあえず単行本で今後追いかけていこう、と考えています。『天智と天武~新説・日本書紀~』昨年(2016年)7月に完結(関連記事)してからは、新作漫画では『ヒストリエ』を単行本で読んだくらいだったのですが(関連記事)、本作も楽しく読み進められそうな漫画作品となりそうです。
本作は、主人公のタイガと大学のゼミ仲間とのオーストラリア旅行から話が始まります。主人公たちはオーストラリアでワイナリーを目指す途中、洞窟に立ち寄ります。この洞窟には壁画があり、人間の狩猟の様子が描かれていました。壁画にはマンモスらしき動物も描かれており、オーストラリアにはマンモスがいなかったはずですが、これは考証の間違いではなく、どうも重要な意図が込められているようです。主人公たちが洞窟にいると、落盤により入口が塞がれます。何とか出口を見つけた主人公たちですが、外には森林が広がっています。
不審に思う主人公たちの前に、巨大動物と狼が現れます。オーストラリアには狼が存在しないはずですし、古生物に詳しいリクによると、巨大動物は絶滅したカリコテリウムではないか、とのことでした。主人公たちがさらに歩いていくと、水辺にはマンモスがいました。主人公たちは、太古の世界にいるのだ、と絶望します。リクは、カリコテリウムとマンモスとでは時代が重ならない、と疑問を呈します。しかし、カリコテリウムはもっと後まで生きていたかもしれない、との意見も出ます。ともかく、主人公たちが太古の世界に迷い込んでしまったことは確定します。この後、主人公たちは太古の世界で生き抜こうと必死に足掻き、肉食動物・大型動物との遭遇など危機を迎えつつも、創意工夫により生き抜いていきます。
タイムスリップものはありふれているので、それだけで魅力のある作品にするのはなかなか難しい、と思います。第1巻は、登場人物たちの性格が少しずつ描かれている段階で、まだ各登場人物の個性が全面的に明らかになったとは言えないのですが、主人公を中心に各登場人物の言動が印象的に描かれ、普遍的な青春群像劇という性格も出ています。また、無気力で感動することもなく、とくに秀でたところのない主人公の苦悩も描かれており、この点でも青春ものとしての普遍性を有していると思います。このような人間物語も、本作の見どころとなるのでしょう。
こうした創作ものとして普遍的な要素も強く打ち出されていますが、やはり気になるのは本作の謎解き要素で、カバーでも、「数万年前人類はまだ地上の支配者ではなかった。何かが起こり人は地上の王となったのだ」とありますから、主人公たちがネアンデルタール人から現生人類(Homo sapiens)への「交替劇」に深く関わっているのではないか、と予感させます。そうだとすると、かなり壮大な人類史の物語になりそうで、その点でも今後の展開が楽しみです。
すでに第1巻で、ネアンデルタール人は登場しています。主人公たちは、迷い込んだ世界で遭遇した動物から、この世界は100万年前頃より新しく、数万年前頃かもしれず、場所は北アフリカから中東ではないかと推測し、人類と遭遇する可能性もある、と警戒します。その後、主人公たちはじっさいに人類を見かけます。主人公たちが遠くから見かけた人類は肌の色の濃い男性2人でした。この男性2人は何かを警戒しているようで、そこへ声を出しながら肌の色の薄い男性6人が現れ、肌の色の濃い男性2人を襲撃します。肌の色の濃い男性2人は死亡し、主人公たちは彼らが使っていた石器を持ち帰ります。肌の色の薄い男性6人の動作は素早く、かなり高い身体能力を有しているようです。
主人公たちは、肌の色の濃い男性2人がアフリカ起源の現生人類、肌の色が薄く茶色の髪の男性6人がネアンデルタール人ではないか、と推測します。そうすると、主人公たちも推測しているように、本作の舞台は中東でしょうか。あるいは、ヨーロッパかもしれませんが、いずれにしても、本作でのネアンデルタール人と現生人類との関係は敵対的に描かれています。本作の描写からは、人類進化史についてかなり調べられていることが窺えるので、ネアンデルタール人と現生人類との交雑がどのように解釈されるのか、楽しみです。
第1巻は、青春群像劇・青春の苦悩という普遍的要素と、SF・人類進化史的な謎解き要素を絡めて、面白い話になっていました。動物の描写も迫力があってよいと思います。私は謎解き要素のある作品が好きなので、やはり、オーストラリアの壁画にマンモスが描かれていたこと、タイムスリップの理由、ネアンデルタール人と現生人類との関係、後期更新世が舞台と思われるのにカリコテリウムが存在していることなど、謎がどう解明されていくのか、ということが気になります。来年1月刊行予定の第2巻が今から楽しみです。
本作は、主人公のタイガと大学のゼミ仲間とのオーストラリア旅行から話が始まります。主人公たちはオーストラリアでワイナリーを目指す途中、洞窟に立ち寄ります。この洞窟には壁画があり、人間の狩猟の様子が描かれていました。壁画にはマンモスらしき動物も描かれており、オーストラリアにはマンモスがいなかったはずですが、これは考証の間違いではなく、どうも重要な意図が込められているようです。主人公たちが洞窟にいると、落盤により入口が塞がれます。何とか出口を見つけた主人公たちですが、外には森林が広がっています。
不審に思う主人公たちの前に、巨大動物と狼が現れます。オーストラリアには狼が存在しないはずですし、古生物に詳しいリクによると、巨大動物は絶滅したカリコテリウムではないか、とのことでした。主人公たちがさらに歩いていくと、水辺にはマンモスがいました。主人公たちは、太古の世界にいるのだ、と絶望します。リクは、カリコテリウムとマンモスとでは時代が重ならない、と疑問を呈します。しかし、カリコテリウムはもっと後まで生きていたかもしれない、との意見も出ます。ともかく、主人公たちが太古の世界に迷い込んでしまったことは確定します。この後、主人公たちは太古の世界で生き抜こうと必死に足掻き、肉食動物・大型動物との遭遇など危機を迎えつつも、創意工夫により生き抜いていきます。
タイムスリップものはありふれているので、それだけで魅力のある作品にするのはなかなか難しい、と思います。第1巻は、登場人物たちの性格が少しずつ描かれている段階で、まだ各登場人物の個性が全面的に明らかになったとは言えないのですが、主人公を中心に各登場人物の言動が印象的に描かれ、普遍的な青春群像劇という性格も出ています。また、無気力で感動することもなく、とくに秀でたところのない主人公の苦悩も描かれており、この点でも青春ものとしての普遍性を有していると思います。このような人間物語も、本作の見どころとなるのでしょう。
こうした創作ものとして普遍的な要素も強く打ち出されていますが、やはり気になるのは本作の謎解き要素で、カバーでも、「数万年前人類はまだ地上の支配者ではなかった。何かが起こり人は地上の王となったのだ」とありますから、主人公たちがネアンデルタール人から現生人類(Homo sapiens)への「交替劇」に深く関わっているのではないか、と予感させます。そうだとすると、かなり壮大な人類史の物語になりそうで、その点でも今後の展開が楽しみです。
すでに第1巻で、ネアンデルタール人は登場しています。主人公たちは、迷い込んだ世界で遭遇した動物から、この世界は100万年前頃より新しく、数万年前頃かもしれず、場所は北アフリカから中東ではないかと推測し、人類と遭遇する可能性もある、と警戒します。その後、主人公たちはじっさいに人類を見かけます。主人公たちが遠くから見かけた人類は肌の色の濃い男性2人でした。この男性2人は何かを警戒しているようで、そこへ声を出しながら肌の色の薄い男性6人が現れ、肌の色の濃い男性2人を襲撃します。肌の色の濃い男性2人は死亡し、主人公たちは彼らが使っていた石器を持ち帰ります。肌の色の薄い男性6人の動作は素早く、かなり高い身体能力を有しているようです。
主人公たちは、肌の色の濃い男性2人がアフリカ起源の現生人類、肌の色が薄く茶色の髪の男性6人がネアンデルタール人ではないか、と推測します。そうすると、主人公たちも推測しているように、本作の舞台は中東でしょうか。あるいは、ヨーロッパかもしれませんが、いずれにしても、本作でのネアンデルタール人と現生人類との関係は敵対的に描かれています。本作の描写からは、人類進化史についてかなり調べられていることが窺えるので、ネアンデルタール人と現生人類との交雑がどのように解釈されるのか、楽しみです。
第1巻は、青春群像劇・青春の苦悩という普遍的要素と、SF・人類進化史的な謎解き要素を絡めて、面白い話になっていました。動物の描写も迫力があってよいと思います。私は謎解き要素のある作品が好きなので、やはり、オーストラリアの壁画にマンモスが描かれていたこと、タイムスリップの理由、ネアンデルタール人と現生人類との関係、後期更新世が舞台と思われるのにカリコテリウムが存在していることなど、謎がどう解明されていくのか、ということが気になります。来年1月刊行予定の第2巻が今から楽しみです。
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