音楽にたいする2種類の強烈な情動反応
これは8月2日分の記事として掲載しておきます。音楽にたいする2種類の強烈な情動反応に関する研究(Mori, and Iwanaga., 2017)が公表されました。人間は時として、芸術作品に対して強烈な情動反応を経験します。これまでの研究から、音楽を聴いたときに喚起される「鳥肌感(chill;鳥肌が立ったり背筋がぞくぞくしたりする感覚)」という強烈な情動反応には、精神生理学的な覚醒や、ある種の報酬効果が関わっていることが明らかになっています。しかし、強烈な情動の多くの側面はまだ解明されていません。
この研究は新しい観点として、「涙感(tear;涙ぐむ、胸がいっぱいになる感覚)」という強烈な情動反応を検証しています。精神生理学実験から、自己報告された鳥肌感と涙感は快感と深い呼吸を引き起こすという点では共通しているものの、鳥肌感は皮膚伝導活動と主観的覚醒を増大させ、涙感は心拍数が増大している最中に呼吸数を低下させるという異なる応答を示すことが明らかになりました。鳥肌感を喚起した歌にたいしては喜びも悲しみも感じられましたが、涙感を喚起した歌にたいしては悲しみのみが強く感じられました。さらに、涙感を喚起した歌は、鳥肌感を喚起した歌と比較してより沈静だと感じられました。
これらの知見は、涙感には悲しみに起因する快感が含まれることや、涙感が精神生理学的に沈静をもたらすことを示しています。したがって、精神生理学的な反応から鳥肌感と涙感の区別が可能となります。涙感はカタルシス効果を持つ可能性があるので、報酬効果を示す鳥肌感と機能的意義は異なっていると考えられます。2種類の強烈な情動のこのような区別は理論的に妥当で、涙感のさらなる研究は人間の強烈な情動反応の解明を進めるために役立つ、とこの研では指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
音楽に対する2種類の強烈な情動反応:鳥肌感と涙感の精神生理学
人は時として芸術作品に対して強烈な情動反応を経験する。これまでの研究から、音楽を聴いたときに喚起される「鳥肌感(chill;鳥肌が立ったり背筋がぞくぞくしたりする感覚)」という強烈な情動反応には、精神生理学的な覚醒や、ある種の報酬効果が関わっていることが明らかになっている。しかし、強烈な情動の多くの側面はまだ解明されていない。本研究では新しい観点として、「涙感(tear;涙ぐむ、胸がいっぱいになる感覚)」という強烈な情動反応を考える。精神生理学実験から、自己報告された鳥肌感と涙感は快感と深い呼吸を引き起こすという点では共通しているものの、鳥肌感は皮膚伝導活動と主観的覚醒を増大させ、涙感は心拍数が増大している最中に呼吸数を低下させるという異なる応答を示すことが明らかになった。鳥肌感を喚起した歌に対しては喜びも悲しみも感じられたが、涙感を喚起した歌に対しては悲しみのみが強く感じられた。さらに、涙感を喚起した歌は、鳥肌感を喚起した歌に比べてより沈静だと感じられた。これらの結果は、涙感には悲しみに起因する快感が含まれることや、涙感が精神生理学的に沈静をもたらすことを示している。したがって、精神生理学的な反応から鳥肌感と涙感の区別が可能である。涙感はカタルシス効果を持つ可能性があるので、報酬効果を示す鳥肌感と機能的意義は異なっていると考えられる。2種類の強烈な情動のこのような区別は理論的に妥当であり、涙感のさらなる研究は人の強烈な情動反応の解明を進めるために役立つと我々は考える。
参考文献:
Mori K, and Iwanaga M.(2017): Two types of peak emotional responses to music: The psychophysiology of chills and tears. Scientific Reports, 7, 46063.
http://dx.doi.org/10.1038/srep46063
この研究は新しい観点として、「涙感(tear;涙ぐむ、胸がいっぱいになる感覚)」という強烈な情動反応を検証しています。精神生理学実験から、自己報告された鳥肌感と涙感は快感と深い呼吸を引き起こすという点では共通しているものの、鳥肌感は皮膚伝導活動と主観的覚醒を増大させ、涙感は心拍数が増大している最中に呼吸数を低下させるという異なる応答を示すことが明らかになりました。鳥肌感を喚起した歌にたいしては喜びも悲しみも感じられましたが、涙感を喚起した歌にたいしては悲しみのみが強く感じられました。さらに、涙感を喚起した歌は、鳥肌感を喚起した歌と比較してより沈静だと感じられました。
これらの知見は、涙感には悲しみに起因する快感が含まれることや、涙感が精神生理学的に沈静をもたらすことを示しています。したがって、精神生理学的な反応から鳥肌感と涙感の区別が可能となります。涙感はカタルシス効果を持つ可能性があるので、報酬効果を示す鳥肌感と機能的意義は異なっていると考えられます。2種類の強烈な情動のこのような区別は理論的に妥当で、涙感のさらなる研究は人間の強烈な情動反応の解明を進めるために役立つ、とこの研では指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
音楽に対する2種類の強烈な情動反応:鳥肌感と涙感の精神生理学
人は時として芸術作品に対して強烈な情動反応を経験する。これまでの研究から、音楽を聴いたときに喚起される「鳥肌感(chill;鳥肌が立ったり背筋がぞくぞくしたりする感覚)」という強烈な情動反応には、精神生理学的な覚醒や、ある種の報酬効果が関わっていることが明らかになっている。しかし、強烈な情動の多くの側面はまだ解明されていない。本研究では新しい観点として、「涙感(tear;涙ぐむ、胸がいっぱいになる感覚)」という強烈な情動反応を考える。精神生理学実験から、自己報告された鳥肌感と涙感は快感と深い呼吸を引き起こすという点では共通しているものの、鳥肌感は皮膚伝導活動と主観的覚醒を増大させ、涙感は心拍数が増大している最中に呼吸数を低下させるという異なる応答を示すことが明らかになった。鳥肌感を喚起した歌に対しては喜びも悲しみも感じられたが、涙感を喚起した歌に対しては悲しみのみが強く感じられた。さらに、涙感を喚起した歌は、鳥肌感を喚起した歌に比べてより沈静だと感じられた。これらの結果は、涙感には悲しみに起因する快感が含まれることや、涙感が精神生理学的に沈静をもたらすことを示している。したがって、精神生理学的な反応から鳥肌感と涙感の区別が可能である。涙感はカタルシス効果を持つ可能性があるので、報酬効果を示す鳥肌感と機能的意義は異なっていると考えられる。2種類の強烈な情動のこのような区別は理論的に妥当であり、涙感のさらなる研究は人の強烈な情動反応の解明を進めるために役立つと我々は考える。
参考文献:
Mori K, and Iwanaga M.(2017): Two types of peak emotional responses to music: The psychophysiology of chills and tears. Scientific Reports, 7, 46063.
http://dx.doi.org/10.1038/srep46063
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