ジュラ紀の新種の滑空哺乳類化石

 これは8月18日分の記事として掲載しておきます。中国で発見された1億6000万年前頃のジュラ紀の新種となる滑空哺乳類化石に関する二つの研究が公表されました。中生代に恐竜類とほぼ同時期を生きた哺乳類の祖先は、哺乳類の歴史の最初期における解剖学的進化と生態的多様化に関するひじょうに重要な証拠と言えます。一方、初期哺乳類は、現生哺乳類の数多くのありふれた特徴も発達させました。滑空行動の発達は、陸上の生息地から大きく異なる空中の生息地への重要な移行と言えます。

 一方の研究(Mengs et al., 2017)は、中国でジュラ紀の髫髻山(Tiaojishan)累層から発掘された新種の滑空哺乳類2種(Maiopatagium furculiferum、およびVilevolodon diplomylos)に由来する骨格と飛膜の化石について報告しています。いずれも、中生代に存在した、最古の草食哺乳類で哺乳類の進化上最も原始的な滑空動物として知られるハラミヤ類と分類され、既知の最古の滑空哺乳類より約1億年早く進化したとされています。Maiopatagium furculiferumの飛膜の化石と融合した叉骨の化石は鳥類のものに似ていますが、肩帯は哺乳類や有袋類よりも卵を産むカモノハシの現生種のものに近い、と指摘されています。Maiopatagium furculiferumはムササビの現生種に外観がひじょうによく似ており、樹上生活し、生仔を出産する特定の有袋類と哺乳類に似た進化的適応が見られます。

 もう一方の研究(Luo et al., 2017)は、Vilevolodon diplomylosについて詳細に説明しています。Vilevolodon diplomylosの歯の生え変わりのパターンは、他の初期哺乳類の大部分に特有なものです。上下の2本の臼歯は臼と杵の形に似ており、柔らかい植物の組織と種子を砕いてすりつぶすためのものだった可能性がひじょうに高い、と指摘されています。これらの化石は、被子植物以前の植物(花をつけない植物)と関連性を有する最初期の滑空するステム群草食哺乳形類とされています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【古生物学】ジュラ紀の新種の滑空哺乳類の化石

このほど中国で発見された化石が、これまでに同定されたことのない2種類の哺乳類のものであり、1億6000万年前のものと推定され、高度に特殊化した性質(例えば滑空への適応)が混在する独特な状態だったことが明らかになった。この新知見は、今週掲載される2編の論文によって報告され、これまで古代の哺乳類に見られなかった独特な性質の組み合わせが示されている。

中生代に恐竜類とほぼ同時期を生きた哺乳類の祖先は、哺乳類の歴史の最初期における解剖学的進化と生態的多様化に関する非常に重要な証拠と言える。一方、初期哺乳類は、現生哺乳類の数多くのありふれた特徴も発達させた。滑空行動の発達は、進化における陸上の生息地から大きく異なる空中の生息地への重要な移行と言える。

今回、Zhe-Xi Luo、Qing-Jin Mengたちの研究グループは、中国でジュラ紀の髫髻山(Tiaojishan)累層から発掘された新種の滑空哺乳類2種(Maiopatagium furculiferumとVilevolodon diplomylosと命名)に由来する骨格と飛膜の化石について記述した論文を発表した。MaiopatagiumとVilevolodon は、いずれもハラミヤ類(最古の草食哺乳類で、哺乳類の進化上最も原始的な滑空動物として知られる)に分類され、知られるうちで最古の滑空哺乳類より約1億年早く進化したとされる。Maiopatagiumの飛膜の化石と融合した叉骨の化石は、鳥類のものに似ているが、肩帯は、哺乳類や有袋類よりも卵を産むカモノハシの現生種のものに近い。Maiopatagium furculiferumは、ムササビの現生種に外観が非常によく似ており、樹上生活し、生仔を出産する特定の有袋類と哺乳類に似た進化的適応が見られる。

Luoたちのもう1つの論文では、Vilevolodon diplomylosについての詳細な説明がある。その歯の生え変わりのパターンは、他の初期哺乳類の大部分に特有なもので、上下の2本の臼歯は臼と杵の形に似ており、柔らかい植物の組織と種子を砕いてすりつぶすためのものだった可能性が非常に高い。従って、これらの化石は、被子植物以前の植物(花をつけない植物)と関連性を有する最も初期の滑空するステム群草食哺乳形類とされる。


進化学:ジュラ紀の新たな滑空性哺乳形類

進化学:ジュラ紀生態系における哺乳形類の耳の進化および摂餌適応に関する新証拠

進化学:滑空するジュラ紀の哺乳形類

 恐竜の影に隠れるように生きていた哺乳形類の化石記録はわずかだが、ここ数年で発見が相次いでおり、哺乳形類が実に多様な動物群であったことが明らかになってきている。ハラミヤ類は中生代に存在した哺乳形類の一群で、まだ謎が多い。Z Luoたちは今回、中国の髫髻山(Tiaojishan)累層(約1億6000年前のジュラ紀)に由来するハラミヤ類の新属新種Maiopatagium furculiferumについて報告している。Maiopatagiumは滑空に特化しており、飛膜や、鳥類の融合した叉骨に似た鎖骨構造などの適応が見られる。またその肩帯は、有胎盤哺乳類や有袋類よりも、現生の卵生哺乳類であるカモノハシの肩帯によく似ている。こうした解剖学的特徴は、滑空性哺乳類やコウモリ類が出現する1億年も前に、すでに哺乳形類が飛行生活を可能にしていたことを示している。また、Luoたちは別の論文で、同じ地域に由来するまた別のハラミヤ類の新種Vilevolodon diplomylosについても報告している。この標本からは、下顎中耳や歯の交換パターン、歯の咬合などの特徴が明らかになり、食性に関する手掛かりが得られた。



参考文献:
Luo ZX. et al.(2017): New evidence for mammaliaform ear evolution and feeding adaptation in a Jurassic ecosystem. Nature, 548, 7667, 326–329.
http://dx.doi.org/10.1038/nature23483

Meng QJ. et al.(2017): New gliding mammaliaforms from the Jurassic. Nature, 548, 7667, 291–296.
http://dx.doi.org/10.1038/nature23476

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