篠田謙一『ホモ・サピエンスの誕生と拡散』
これは7月2日分の記事として掲載しておきます。歴史新書の一冊として洋泉社より2017年6月に刊行されました。本書からは、一般向けであることを強く意識し、分かりやすい解説・構成にしようという意図が窺えます。じっさい、本書は目新しい情報を多く掲載しているわけではないものの、最新の研究成果に基づいて人類史を分かりやすく解説しており、なかなか読みやすく理解しやすいと思います。基礎的な解説もあるので、人類進化史に関心を持ち始めた人が読むのに適していると言えるでしょう。著者の専攻が反映され、DNA解析についての基礎的な解説に1章割かれていますが、過剰にDNA解析をありがたがる風潮に注意を喚起している点もよいと思います。
本書は、序章がDNA解析と進化の基礎的な解説、第1章が現生人類(Homo sapiens)の出アフリカまでの人類史、第2章が現生人類の拡散、第3章が日本列島の人類史となっています。本書のような日本列島も主要な対象とした人類史の入門書では、おおむね弥生時代か古墳時代あたりまでが対象となっているように思われますが、江戸時代までを対象としているのが本書の注目すべき特徴となっています。江戸時代には、日本列島では現代人と変わらないような遺伝的構成が形成されていたと考えられる、と本書は述べています。
上述したDNA解析への過度な信頼にたいする注意喚起など、本書は全体的に慎重な姿勢を示しており、良心的だと思います。たとえば、南アフリカ共和国で発見された新種ホモ属化石とされるナレディ(Homo naledi)に関しては、アウストラロピテクス属からホモ属への進化の過渡期に位置する種だ、との発掘チームの当初の見解を紹介しつつ、年代が不明なので、ホモ属の起源と言えるのか、現生人類にいたる系統から外れた種なのか、断定が避けられています。おそらくは本書執筆後に公表された研究(関連記事)により、後者である可能性が高くなりましたが、良心的な一般向け書籍は、このように安易に断定しないものだ、と改めて思ったものです。
参考文献:
篠田謙一(2017)『ホモ・サピエンスの誕生と拡散』(洋泉社)
本書は、序章がDNA解析と進化の基礎的な解説、第1章が現生人類(Homo sapiens)の出アフリカまでの人類史、第2章が現生人類の拡散、第3章が日本列島の人類史となっています。本書のような日本列島も主要な対象とした人類史の入門書では、おおむね弥生時代か古墳時代あたりまでが対象となっているように思われますが、江戸時代までを対象としているのが本書の注目すべき特徴となっています。江戸時代には、日本列島では現代人と変わらないような遺伝的構成が形成されていたと考えられる、と本書は述べています。
上述したDNA解析への過度な信頼にたいする注意喚起など、本書は全体的に慎重な姿勢を示しており、良心的だと思います。たとえば、南アフリカ共和国で発見された新種ホモ属化石とされるナレディ(Homo naledi)に関しては、アウストラロピテクス属からホモ属への進化の過渡期に位置する種だ、との発掘チームの当初の見解を紹介しつつ、年代が不明なので、ホモ属の起源と言えるのか、現生人類にいたる系統から外れた種なのか、断定が避けられています。おそらくは本書執筆後に公表された研究(関連記事)により、後者である可能性が高くなりましたが、良心的な一般向け書籍は、このように安易に断定しないものだ、と改めて思ったものです。
参考文献:
篠田謙一(2017)『ホモ・サピエンスの誕生と拡散』(洋泉社)
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