アリの拡散と人間の行動

 これは6月28日分の記事として掲載しておきます。アリの拡散と人間の行動に関する研究(Bertelsmeier et al., 2017)が公表されました。人間の交易と移動は生物地理学的な垣根を下げ、生物の地理的分布に変化を引き起こします。その結果、外来種の拡散は世界の生物多様性および生態系サービスへの大きな脅威となり、新参種が定着するペースは上昇し続ける、と予測されています。生物の侵略に関する研究の多くは個々の種の侵略の全過程を通じた経過に注目していますが、外来種全般が類似の定着パターンに従うのかどうか、さらにそうしたパターンがどのように進行するのか、ほとんど知られていません。この研究は、本来の生息範囲の外へ導入されたことが知られている外来アリ241種を調べ、局地的・地域的・大陸横断的・全球的という4群に分類されることを明らかにしました。これら4群はそれぞれ、拡散を支配する動態が異なっています。

 さらにこの研究は、241種のうち36種に関して1750年以降の移動を調べた結果、その4群のアリ種が大陸および地域を横断した時期が、人類の移動とグローバル化および好景気に関する二つの大きな波と重なることを明らかにしました。第一の波は19世紀半ばに始まり、第一次世界大戦および1929年の世界大恐慌で終息したもので、第二の波は第二次世界大戦以降21世紀まで続きました。また、大きく全球化が進んだ侵略種は比較的小型であって、さまざまな場所に生息する能力を持つとみられることも明らかになりました。これは大陸横断の成功を説明すると考えられています。この研究は、アリの分布パターンに関する詳細を組み合わせて、さまざまな環境でのアリの生息を可能とする特性を理解することにより、生物の侵略を促進する過程に関する価値ある洞察をもたらし、将来的に侵略種となる可能性が極めて高い種の特定に寄与している、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


外来アリは人間が行く先々へついてくる

 最近の人類史上の大きな出来事がアリ侵略種の拡散の要因となっていることを示す論文が、このたび新たに掲載される。外来アリによる侵略の成立に関してその形質、動態、および促進要因を理解することは、他の侵略種の将来的な拡散を抑止するのに役立つ可能性がある。

 人間の交易と移動は生物地理学的な垣根を下げ、生物の地理的分布に変化を引き起こす。その結果、外来種の拡散は世界の生物多様性および生態系サービスへの大きな脅威となり、新参種が定着するペースは上昇し続けることが予測されている。生物の侵略に関する研究の多くは個々の種の侵略の全過程を通じた経過に注目しているが、外来種全般が類似の定着パターンに従うのかどうか、そしてそうしたパターンがどのように進行するのかはほとんど知られていない。

 本来の生息範囲の外へ導入されたことが知られている外来アリ241種を調べたCleo Bertelsmeierたちは、そのアリが4つのカテゴリーに分類されることを発見した。それは、分布が局地的、地域的、大陸横断的、および全球的なものの4つであり、それぞれの拡散を支配する動態は異なっている。続いて研究チームは、そのうち36種に関して1750年以降の移動を調べた結果、その4群のアリ種が大陸および地域を横断した時期が、人類の移動、グローバル化、および好景気に関する2つの大きな波と重なることを発見した。第一の波は、19世紀半ばに始まって第一次世界大戦および1929年の世界大恐慌で終息したものであり、第二の波は、第二次世界大戦以降、21世紀まで続いた。また、大きく全球化が進んだ侵略種は比較的小型であって、さまざまな場所に生息する能力を持つとみられることが分かった。このことは、大陸横断の成功を説明すると考えられる。

 アリの分布パターンに関する詳細を組み合わせて、さまざまな環境でのアリの生息を可能とする特性を理解することにより、研究チームは、生物の侵略を促進する過程に関する価値ある洞察をもたらし、将来的に侵略種となる可能性が極めて高い種の特定に寄与している。



参考文献:
Bertelsmeier C. et al.(2017): Recent human history governs global ant invasion dynamics. Nature Ecology & Evolution, 1, 0184.
http://dx.doi.org/10.1038/s41559-017-0184

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