植物の進化は花粉媒介生物の種類に応じて異なる

 これは5月6日分の記事として掲載しておきます。植物の進化と花粉媒介生物の種類に関する研究(Gervasi, and Schiestl., 2017)が公表されました。花粉媒介生物に応じた植物の進化に関する過去の研究は野外で行なわれており、花粉媒介生物以外の要因で植物の特徴に変化が生じる可能性がありました。この研究では、花粉媒介生物それ自体が植物の進化に及ぼす影響を分離できる実験系が用いられました。

 この研究は、温室内でアブラナやハクサイの原種(Brassica rapa)を栽培し、マルハナバチやハナアブによる送粉を行ないました。その結果、人工授粉した場合と比較すると、マルハナバチにより送粉された場合は、草丈が高く、香りの豊かな花が多く、紫外線反射率が高くなりました。一方、ハナアブにより送粉された場合は、草丈が低く、香りが弱くなりました。

 この実験が終わる頃には、マルハナバチにより送粉された植物は、送粉者のマルハナバチを多く引き寄せるようになりました。一方、さほど有効な送粉者ではないハナアブにより送粉された植物は、自家受粉(花粉媒介生物の助けを借りずに結実する)を上手くできるようになりました。こうした知見は、自然の生息環境における花粉媒介生物環境の変化が進化に及ぼす影響について研究を重ねる必要性を明確に示している、とこの研究は指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【進化】植物は花粉媒介生物の種類に応じて異なった進化をする

 植物の形質が花粉媒介生物種の違いによって急速に多様化することを明らかにした研究論文が、今週掲載される。マルハナバチやハナアブによる送粉をわずか11世代続けただけで、草丈、花の香り、花の色、繁殖における花粉媒介生物への依存度に違いが生じていたのだ。今回の研究は、花粉媒介生物群集に変化があると、植物の形質の進化に対して急激な影響が及ぶことを示唆している。

 花粉媒介生物に応じた植物の進化に関する過去の研究は、野外で行われており、花粉媒介生物以外の要因で植物の特徴に変化が生じる可能性があった。今回の研究では、花粉媒介生物それ自体が植物の進化に及ぼす影響を分離できる実験系が用いられた。

 今回、Daniel GervasiとFlorian Schiestlは、温室内でBrassica rapa(アブラナやハクサイの原種)を栽培し、マルハナバチやハナアブによる送粉を行った。人工授粉した場合と比べると、マルハナバチにより送粉された場合は草丈が高くなり、香りの豊かな花が多くなり、紫外線反射率が高くなった。一方、ハナアブにより送粉された場合は草丈が低くなり、香りが弱くなった。

 また、この実験が終わる頃には、マルハナバチにより送粉された植物は、送粉者のマルハナバチを多く引き寄せるようになった。一方、さほど有効な送粉者ではないハナアブにより送粉された植物は、自家受粉(花粉媒介生物の助けを借りずに結実する)をうまくできるようになった。以上の知見は、自然の生息環境における花粉媒介生物環境の変化が進化に及ぼす影響について研究を重ねる必要性を明確に示している、とGervasiとSchiestlは結論づけている。



参考文献:
Gervasi DDL, and Schiestl FP.(2017): Real-time divergent evolution in plants driven by pollinators. Nature Communications, 8, 14691.
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms14691

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