進化的放散と衰退の速度
進化的放散と衰退の速度に関する研究(Lim, and Marshall., 2017)が公表されました。種の豊かさ(種数)の変化速度と、生物的環境および非生物的環境の変化との関係を明らかにすることは、進化生物学における重大な目標の一つとされています。しかし、優れた化石記録や地質記録から手掛かりが得られる場合もあるものの、ほとんどの分類群では質の高い化石記録が欠如しています。そのため、クレードの多様性動態の研究では、多様化の速度変化を環境変化や形質変化と相関させるというような、分子系統学的手法に頼ることになります。しかし、分子系統学から導き出される推論は絶滅種に関する説明が困難なために限界があり、そうした種を生み出した多様性動態を正確に決定することは難しくなっています。
この研究は、ハワイ諸島において、島の面積変化と種の豊かさとの関係に関する地質学的情報に基づくモデルを用いて、14の固有分類群の進化史全体にわたる種の豊かさの変化速度を、化石データや分子系統学を必要とせずに推測しました。その結果、これらの固有クレードは、種数の累積の初期の加速とそれに続く減速を特徴とする進化的放散を経験していることが明らかになりました。じっさい、ほとんどの島の大半の分類群で、進化的拡大の時期はすでに過ぎており、これらは現在まで認識されていなかった長期に及ぶ進化的衰退のさなかにあります。
こうした知見は、景観の動的変化がどのようにして進化的動態を幅広い時間規模にわたって駆動し得るかを示しており、分子系統学では容易に検出されないか、豊かな化石記録なしでは得られないような、種の喪失の駆動なども含まれます。この研究では、環境の変化と種の豊かさの変化との間の関係を定量化することのできる他のクレードについても検証が進み、他の多くの現生分類群もまた、長期に及ぶ進行中の進化的衰退などの同様に複雑な進化的軌跡をたどってきたことが明らかになると期待される、と指摘されています。
参考文献:
Lim JY, and Marshall CR.(2017): The true tempo of evolutionary radiation and decline revealed on the Hawaiian archipelago. Nature, 543, 7647, 710–713.
http://dx.doi.org/10.1038/nature21675
この研究は、ハワイ諸島において、島の面積変化と種の豊かさとの関係に関する地質学的情報に基づくモデルを用いて、14の固有分類群の進化史全体にわたる種の豊かさの変化速度を、化石データや分子系統学を必要とせずに推測しました。その結果、これらの固有クレードは、種数の累積の初期の加速とそれに続く減速を特徴とする進化的放散を経験していることが明らかになりました。じっさい、ほとんどの島の大半の分類群で、進化的拡大の時期はすでに過ぎており、これらは現在まで認識されていなかった長期に及ぶ進化的衰退のさなかにあります。
こうした知見は、景観の動的変化がどのようにして進化的動態を幅広い時間規模にわたって駆動し得るかを示しており、分子系統学では容易に検出されないか、豊かな化石記録なしでは得られないような、種の喪失の駆動なども含まれます。この研究では、環境の変化と種の豊かさの変化との間の関係を定量化することのできる他のクレードについても検証が進み、他の多くの現生分類群もまた、長期に及ぶ進行中の進化的衰退などの同様に複雑な進化的軌跡をたどってきたことが明らかになると期待される、と指摘されています。
参考文献:
Lim JY, and Marshall CR.(2017): The true tempo of evolutionary radiation and decline revealed on the Hawaiian archipelago. Nature, 543, 7647, 710–713.
http://dx.doi.org/10.1038/nature21675
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